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133、モロスとの別れ

五味たち一行はナナシスを宿に迎えた。

「でかしたぞ、ナナシス。なんて美人に化けたんだ」

五味はそう言ってナナシスをハグしておっぱいを胸で感じた。ラーニャはその頭を小突いて、「なにが『でかした』よ、あんたは美人さえ近くにいればいいんでしょ」と言った。

九頭も加須も、「うん、良く帰って来てくれた、美人になって」などと頷いていた。

ユリトスは言った。

「よし、これで全員揃ったな。出発しよう。いや、今すぐではない、明日の早朝だ。カリア姫とライドロが一行に加わったことがバレたら大変だからな」

すると、モロスが言った。

「ユリトスさん。すまねえがあっしはもう冒険を続ける理由がないべ。ご主人様を亡くしたら、もうあっしはキャドラに帰るべきだと思うべさ」

五味は言った。

「でも、モロスは俺たちの仲間だ」

モロスは悲しい眼をして言った。

「ありがとう、でも、もうあっしは旅を続ける気力がないべ。もう歳だし、できればこの城で亡くなった旦那様と奥様の墓を拝んでから、キャドラに帰るべ」

五味は言った。

「でも、モロスは俺たちの仲間だ」

モロスは五味の顔を見た。

「ゴーミ王さん・・・」

九頭も言った。

「そうだよ、別れてもモロスは俺たちの仲間だ」

オーリは言った。

「そうだわ、今夜はこの宿でささやかながらモロスと亡くなった伯爵のお別れパーティをしましょう」

夜は、宿の二階の一室に外から飲食物を持ち込んで宴会を開いた。

モロスは酒を飲んでいい気分だった。

五味と九頭と加須とチョロがアホ踊りをしていると、モロスも「いっちょやったるべ」と言って立ち上がり上半身裸になって裸踊りを始めた。

「じいさが~、イモ食ってよ~、屁が出てよ~、お月さんが出たべ~、あら、よいよい」

みんな笑った。アホで笑った。ユリトスも笑った。ユリトスはこんなアホな夜があってもいいと思った。

翌朝、早く、食事を済ませた一行は三頭の馬を引き、ドラゴン街道に出た。そこまでモロスは見送りに出た。

ユリトスはモロスに言った。

「今まで、ありがとうな。おまえがいてくれて楽しかったよ」

モロスはもう笑顔だ。

「あっしもいい思い出ができただ。伯爵の最後に立ち会えなかったのは残念だが、あっしのけっして先の長くない人生も、満足できると思うだ。ほんに、おおきに」

モロスはユリトスの手を握って、頭を下げた。

五味は言う。

「また、帰るとき、キャドラを通ったら会おうぜ」

九頭も言う。

「俺、モロスの話し方好きだったぜ」

加須も言う。

「ああ、いいキャラだった。その性格が俺も好きだった」

モロスは涙ぐんでいた。

「みんな、ありがとう、ありがとう。じゃあ、行っておくんなまし、行っておくんなまし。あんまりいつまでもいられるとあっしも行きたくなるから、早いとこ切り上げてくりょ」

ユリトスは言う。

「よし、じゃあ、みんな行こうか」

一行は歩き始めた。

振り返れば町の角で、いつまでもモロスが手を振っていた。何度振り返ってもモロスは手を振っていた。遠く見えなくなるまで手を振っていた。

こうして、モロスは一行と別れたのであった。

 そして、もう、歩きながら、五味と九頭と加須はナナシスの化けた美人と、カリア姫、アリシア、ラーニャ、オーリの姿を比べて品評会を始めていた。

 しかし、デランの王ヒュンダスは死に、五味たちは王都をあとにしたものの、まだ広大な広さを誇るデラン王国の領地を西に歩かねばならなかった。さらに西には大国ハイン王国があるとのことだった。じつはカリアと結婚するはずだったハイン王国の皇太子カルガンは昨日、五味たちがナナシスに再会した日に、ハイン王国へ向けて帰って行ったのである。


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