130、アトリフの魔法
ザザックはレイド―に言った。
「何の用だ?名声王」
「ライドロの姿が見えたので追って来たのだ。そうしたら、そこにいるのはカリア姫ではないか。これはふたり同時にヒュンダス王に届ければ私は大きな栄誉を受ける。くっくっく」
アトリフは言う。
「くだらん奴だ。おまえ魔法が使えるそうだな?」
「ほう、おまえがアトリフだな」
「そうだ」
「私がこのカリア姫とライドロを連れて行く。文句はあるまい」
「なぜ、文句がないと言う。あるに決まってるだろう」
「なんだと?」
「ふたりは恋仲だ。今、再会したばかりだ。それをヒュンダスの元へ届けたりしたら、また離れ離れになるだろう」
「ほう、人情的だな。では、私がカリア姫とライドロを連れて行くのに反対というわけだな?」
「そうだ、ここはお引き取り願いたい」
「嫌だと言ったら?」
「お引き取り願いたい」
「殺すぞ」
「物騒だな」
ザザックは言った。
「アトリフ、こいつは時を止める魔法が使える。勝ち目はない」
「ザザック、黙っていろ」
「しかし」
ザザックは黙った。レイド―は言った。
「そうだ、その男の忠告は聞くべきだぞ。その男の言ったように私は時を止めることができる。おまえなど気づいたときには心臓を串刺しにすることも簡単にできるのだぞ」
「こんなふうにか?」
そうアトリフが言った瞬間、彼はレイド―の心臓を串刺しにしていた。
「ぐ、ぐぶっ、き、貴様。まさか・・・?」
アトリフは剣を抜き鞘に収めた。レイド―は血を吐き、胸から血を吹き出して地に倒れた。
アトリフはレイド―を見下ろして言った。
「時を止められるのはおまえだけではない」
「まさか、そんなことが・・・ぐうう」
レイド―は死んだ。
アトリフはレイド―の側近バルバを見た。
「おまえはどうする?主人についてあの世に行くか?」
「い、行きません、行きません。そ、そうだ、アトリフ様、あなた様の家来にしてください。私はあなた様のお役に立てると思います」
「殺されたくなければ、この主人の遺体を埋めてどこかへ去れ、二度と俺の前に顔を見せるな」
「はいっ」
バルバは主人レイド―の遺体の足首を掴んで引きずって森の中に消えた。
そこへ、エコトスの導きにより、ウンダス王子の軍隊が到着した。




