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128、ライドロの回復魔法

ユリトスたちは森の中を北上していた。

モロスはずっとデボイ伯爵を心配していた。

「いくら、迷宮魔法が使えるからって、ひとりで行かせて良かったべか?いくらなんでも城にひとりで乗り込むなんて無謀でなかったか?」

オーリは言った。

「でも、もし、モロスさんが行って、迷宮で迷ったら、誰があなたを救いに行くの?あの迷宮で迷わないのはデボイ伯爵ひとり、他の誰かが行っても足手纏いになるだけよ」

「しかし旦那様に奥さんがいたなんて知らなかったべ。また娘さんもいる。今はアトリフの一味だけど、すべて終わったら彼女をキャドラに呼んでお屋敷を継いでもらうべ。今は焼けて廃墟になっちまっているだろうけども」

五味は言った。

「大丈夫さ、モロスさん。デボイ伯爵なら奥さんを救出し、ナナシスも救い出してくれるさ」

「そんならいいだべが。いや、それは希望的観測だっぺ。絶望的観測をすれば三人殺されてるべ」

ポルトスは笑った。

「ははは、絶望的観測か?意味ないぞ、それ」

「そうだっぺか?絶望的観測をするのは危険予測だっぺ。リスクマネジメントだっぺ」

アラミスは言った。

「そんなに言うなら、デランの王都に戻るか?ひとりで」

「う~ん、でも、たしかに、あっしが戻ってもすることはないべ」

ユリトスは言った。

「ところで、ライドロ君、君は魔法を使えるかね?」

ライドロは突然の質問に驚いた。

「はい、傷や病気の回復魔法を少し」

その言葉に五味と九頭と加須は喰いついた。

「え?回復魔法ができるの?」

「すげえ、RPGだ。ロールプレイングゲームだ」

「マジで、それはゲームのイメージだ」

ライドロは訊いた。

「ゲームってなんです?RPG?」

五味は慌てた。

「あ、いや、こっちの世界の話」

五味は自分の言葉に驚いた。

「こっちの世界ってどっちだ?俺はまだ前世の日本人としてここにるのか?」

アリシアは言う。

「ときどき、陛下たち三人はわからないことを言うよね。まるでもうひとつの世界を生きてるみたい」

ラーニャは言った。

「ドラゴンの血かしら?異世界が見えるとか」

それがドラゴンの血の力だとしたら、俺たちはたしかに不思議な力を持っているかもしれないぞ、役に立つかはわからないけど、と三人は考えた。

チョロが話題を変えた。

「ところでみなさん。今日はデランの王都でパレードを見ましたね。あの群衆、稼ぎまくりましたよ」

ユリトスは厳しい顔でチョロを見た。チョロは胸を張った。

「掏摸の収穫、二百五十万ゴールド、すごいでしょ」

五味は喜んだ。

「これでしばらくは旅が続けられるね」

ユリトスは厳しい眼でチョロを見た。

「二度とするな」

チョロはへそを曲げた。

「ちぇっ、誰のおかげで飯を食えてると思うんだ。ベッドで寝られると思うんだ。全部俺の稼ぎじゃないか。俺がいなきゃみんな野垂れ死んでいるんだぞ」

アラミスは言った。

「わかったよ、チョロ。みんな内心感謝してるよ」

「おお、アラミス、良き理解者」

ユリトスは困ったものだと腕を組んだ。

そのうち、一行はダラントの村に到着した。


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