122、北の森
ラレンとザザックは酒に酔って帰ってきた。
アトリフはそんなふたりを見て厳しい眼で言った。
「どうだ?何か情報はあったか?」
ラレンが言う。
「レイド―に会った。奴はライドロを狙っている。それでヒュンダス王に褒められたいみたいで」
「レイド―か」
「奴は危険だ。時間を五秒止めることができる。さすがのザザックも手が出なかったよ」
「そうか、時間をな・・・。で、ライドロならば居場所はわかる。しかし、そこに行くにはもう夜も遅い。それにライドロはこの都に明日来るだろう」
「なぜそれがわかるんだ?カラスの情報か?」
「カラスの情報と、俺の読みだ。ライドロはデボイ伯爵といる。伯爵の妻はカリアの母だ」
「え?」
驚いたのはその場にいたカリアだった。
「私の母上がそのなんとかという男の妻ですって?」
アトリフは言う。
「どうもそのようですぞ。そして、デボイに言わせれば、ここにいるラミナは彼とあなたの母との間の子、つまりあなたの異父姉だ」
ラミナは言う。
「私はそんなこと認めませんが」
「うん、ラミナは俺がこのドラゴニアの森の中で拾った。森の中というか籠に入れられ川に流されていた。それが川辺の葦に引っかかっていた。それがこの都のある北の森だ。ここの川は北に向かって流れている」
ラレンは訊く。
「アトリフはなぜ、その北の森に行ってたんだ?」
「その北の森にこのカリアを連れて行く。明日出発する」
ラレンは驚いた。
「え?どういうことだ?」
「エコトス、聞いたか?」
木の壁からエコトスが出て来た。
「はいよ」
ラレンは驚いた。
「うわっ、気持ち悪いな」
「そう言うなよ、これが俺の魔法なんだからさ」
アトリフは言う。
「エコトス、明日、おまえはここにひとり残って欲しい」
「え?どうして?」
「そして、我々が出発して一日経ったら、ヒュンダス王に本物のカリア姫はアトリフが預かっている。今、北の森にいるから自ら来い、と伝えて欲しい」
「北の森になにがあるんだ?」
ラレンが訊いた。アトリフは答えた。
「俺の魔法の師匠がいる」
「え?アトリフ、あんた、魔法使いだったのか?」
「昔、その修行のためにドラゴニアに来た。デラン王国北方は俺の庭みたいなものだ」
ラレンは訊く。
「でも、なんでわざわざ、ヒュンダス王にそれを知らせるんだ?自ら危険を呼ぶような真似を?」
「俺にも過去がある。そいつを清算するのだ」
エコトスは訊く。
「アトスとエレキアはどうするんだい?さっき別の安宿に入っていくのを見たけど、たぶん今頃お楽しみだ」
「ふたりはこの宿に来る。もちろんふたりも連れて行く」
「俺は?」
エコトスは訊く。
「おまえもヒュンダス王を導いて来い。おまえもアトリフ五人衆だということを忘れるな」
「王を導く?わかったよ。やってみるよ」
ラレンは言う。
「しかし、明日、西の大国ハインの王子が来るそうだぜ?」
「本物のカリア姫がいなければ空振りだ」




