1172、内閣総理大臣五味タカシ
「そうり、そうり」
五味はその声が遠くから聞こえてくるような気がした。
しかし、その声は意外と近くから聞こえてくるのに気づいた。
なんだ、ジイの声じゃないか、五味はそう思った。
そして、自分が眼を閉じていることに気づいた。
五味はゆっくりと眼を開けた。
すると、目の前にジイがいた。
寝ている五味の顔を覗き込んでいた。
「おお、そうりが目を覚した」
五味は白い部屋のベッドにいた。辺りには医者や看護師がいた。
病院らしい。
ジイはネクタイにスーツを着ていた。
五味は寝たまま覗き込むジイを見て笑って言った。
「ジイ、なんだよ?ネクタイなんかしちゃって」
ジイは言った。
「何を言っているのです?そうり。お気は確かですか?」
すると、医師がジイを横にやって、五味の顔を見下ろした。その医師はヨッチャンだった。
「なんだ?ヨッチャンじゃないか?」
医師は驚いた。
「え?なぜ、総理は私の下の名前のあだ名を?」
五味は不思議に思った。
「総理?総理って・・・」
ジイは言った。
「お気を確かに。あなたは内閣総理大臣五味タカシなんですよ」
五味は眼を見開きガバッと、ベッド上に起きた。
勢いで腕に刺さっていた点滴の針が抜けた。
「総理って、俺が内閣総理大臣?ここは日本だよな?」
ジイは言う。
「当たり前です。あなたは内閣総理大臣五味タカシ、先週から原因不明の深い眠りについて目を覚さなかったのですぞ」
「ジイ、なんで、俺が内閣総理大臣なんだよ?」
「何をおっしゃるのです?あなたは十五歳で少年党を起こして、子供にも選挙権を与えるよう、政治活動して、政府に選挙権を義務教育終了の十五歳に引き下げさせて、衆院解散総選挙となり少年党の党首として、選挙戦を戦い、見事勝利して、与党となり、内閣総理大臣に十六歳で就任したんじゃありませんか」
五味は目を丸くした。
「俺がそんなことを・・・それは、ゴーミか?ゴーミ王がこっちの世界にいるときにやったことか?ジイ、おまえは何者だ?」
「私は第一秘書の地井じゃありませんか」
「すまない、記憶がはっきりしない。そうだ、加須と九頭は?」
地井は笑顔になった。
「おお、もう政治のことを気にかけてくださるのですな?おふたりも、先週から深い眠りに入り、加須財務大臣は一昨日、九頭外務大臣は昨日お目覚めになり、今はこの病院の別室で安静にしておられます」
五味は言う。
「すぐに呼んでくれ。三人だけで話がしたい」




