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117、別れのハグ

朝、五味たちは起きると昼食を食べた。ナナシスとは別の部屋だ。やはり、カリア姫は王女である。五味たち旅の者がお別れだからと同じ食卓に着くことはない。しかし、食後、宿の前で別れを惜しむ機会をデンは作ってくれた。

五味はナナシスとハグして、耳元で言う。

「カリア姫、必ず恋人のライドロを探して連れて行きます」

「うん、ありがとう」

次に九頭がハグしたいと言うのでナナシスは九頭とハグした。そのハグがやたらきつく、九頭の両手はナナシスの尻に回った。

デンは言った。

「おまえ、何をしている?」

九頭は手を離した。

「いや、別れを惜しんで、カリア姫の体の感触をいつまでも手の中に留めておきたいと思って」

「貴様!」

デンは剣の柄に手を掛けた。

ナナシスの化けたカリア姫は言った。

「いいのです。これで」

「し、しかし・・・」

次に加須がハグした。加須はハグ自体よりも少し離れてカリア姫の全身と顔をじっと見た。

「う、美しい」

こうして別れの席は終わった。

ナナシスは馬車に乗った。憲兵たちも馬に乗り、西へ向かって出発した。

五味たちはユリトスたちを探そうとした。しかし、探すまでもなく、ユリトスたちは別れの場面を一部始終、建物の陰から見ていた。ユリトスたちは出て来た。

「ゴーミ王、クーズ王、カース王、無事でしたか」

五味は言う。

「俺たちは無事だ。でも、ナナシスが連れていかれた」

「そうか、では助けに行かねばなるまいな」

「でも、ナナシスには変身術がある。俺はナナシスよりも、本物のカリア姫とカリア姫の恋人ライドロを探したい」

「だが、我々はライドロの顔を知らない」

「それも含めて、なんとかするんだ。目標は定めたら動かさず、その目標に向かって全力を挙げよう」

そう五味は言うと、ユリトスは思った。

「ゴーミ王、少し、マシになってきたかな」

九頭は言う。

「今の俺たちの目標はナナシス救出、ライドロ探し、そして、本物のカリア姫を探してライドロとの恋を成就させることだ」

オーリは言う。

「でも、それはデラン王に逆らうことになりはしない?」

加須は言う。

「王の命令よりも恋の成就だ」

ユリトスは言った。

「うむ、わかった。陛下たちがそう言うならば、我々はカリア姫の恋のために動こう。さあ、西へ向けて出発だ」

すると、デボイ伯爵は言った。

「すまないが、私はここから北へ行きたい」

「え?」

「北には森がある。そこに、昔、私とハリミアが共に暮らした家があるのだ」


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