116、名声王レイドーはどちらにつく?
「いや、まてよ」
五味は思った。
「ナナシスは変身師だ。その気になれば他の誰かに変身して、逃げることは簡単にできそうだ。今、逃げないのは俺たちがいるからだ。俺たちさえ逃げ出すことができれば、あとはナナシスは自力で逃げ出すことができる。ナナシスは俺たちのために・・・」
五味は涙が出そうになった。
五味は部屋に戻るとみんなに言った。
「明日、俺たちは逃げ出す。ユリトスさんたちと合流しよう」
ポルトスは訊いた。
「ナナシスはどうやって助け出すのです?」
五味はニヤリと笑って言った。
「ナナシスは変身師だぜ。逃げ出すなんて、わけないさ」
「なるほど」
みんな頷いた。
五味は言った。
「俺たちはナナシスが逃げ帰るのを迎える準備をすればいいだけだ。きっとナナシスもそう考えてるだろうぜ」
一同は翌日、ユリトスたちと合流することを確かめ、二部屋に別れて床に就いた。また、五味たち三人とポルトス、アラミスは別の部屋だ。
五味はベッドの中で天井を見て言った。
「カリア姫、かわいいよな」
九頭もベッドの中で言う。
「バーカ、あれはナナシスだろう?」
加須は隣のベッドで言う。
「バカはおまえだ、九頭。本物がかわいいからナナシスが化けた女もかわいいんじゃないか」
九頭は五味に言う。
「まさか、あの子の恋を手助けしようなんて考えているんじゃないだろうな、五味?」
五味は九頭を見る。
「俺だってそれは余分なことだと思う。でもさ、あのボールガンドを殺したレイド―が絡んでるんだぜ?やばくないか?」
加須は言う。
「やばいよな」
九頭も頷く。
「うん、やばい」
五味は言う。
「そのライドロとかいうカリア姫の恋人がもし、レイド―に見つかったらどうなる?」
加須は言う。
「名声王がやりそうなことを考えればいいんだろ?」
九頭は天井を見て言う。
「やっぱり、美談になりそうなことだろう?」
五味は言う。
「ふたりの恋は成就しました、それが出来たのはレイド―のおかげなのです、めでたしめでたし」
加須は言う。
「いや、本当にそうなるか?」
「え?」
「それはカリア姫とライドロ主人公の視点だろ?」
九頭は言う。
「加須、おまえ、国語の成績いくつだよ?読みが深いな」
「いや、だって、権力者の国王があのふたりの恋に反対してるんだろ?」
加須は熱弁をふるう。
「もしかしたら、ふたりの恋は破れ、カリア姫は目が覚めました、あんなつまらない男に恋をしていた自分が嫌になりました、そして、隣国の素晴らしい王子様と結婚し、幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし、ってなるかもしれないだろ?」
九頭は言う。
「加須、国語の成績アップ!」
「俺は真面目に言ってんだ、九頭。レイド―はそこを読むと思うぞ。デランの国王の側に立つか、カリア姫とライドロの側に立つか、どちらに立って行動したほうが名声になるか、それしか奴は考えてないはずだ」
五味は言う。
「俺たちはどちらの側に立つ?」
「五味、バカか?決まってるだろ?」
加須は言い五味は笑う。
「かわいい女の子の側だよな?」
九頭は笑う。
「くっくっく、だよな」
五味は言う。
「なんだ、三人とも同じ考えじゃないか」
加須は言う。
「で、どうすりゃいいんだろう?ライドロを探す?」
「俺たちゃそいつの顔を知らないぞ」
「レイド―は知ってると言っていた」
「やばいな」
「レイド―がライドロを捕まえて、王の前にしょっ引いて、ライドロは鞭で打たれて、ベインに帰る」
「もしくは追放」
加須は言う。
「待て、それはレイド―が国王の側に立った話だ」
九頭は言う。
「え?あいつがカリア姫の側に立って王とケンカするか?ありえねえぞ」
五味も言う。
「うん、ありえない」
加須も頷く。
「たしかに」
「俺たちには何ができる?」
五味は言う。
「ユリトスさんたちの剣、ナナシスの変身術、デボイ伯爵の迷宮魔法、チョロの盗み、あとは俺たち無能な三人の王とブス三人じゃないか」
九頭は言う。
「使えるカードが少ないな」
加須は言う。
「いや、俺たちの王としての名声がある」
「それはロガバにいた頃だけだろ?ここはドラゴニアだ、俺たちは魔法の使えないただの南方人だ」
九頭がそう言うと、加須は返す。
「いや、俺が言おうとしてるのは、ドラゴンの血の噂だ。俺たちの血があればドラゴンが願いを叶えてくれるんだろ?」
五味は頷く。
「うん、それは大きなカードだよ」
九頭は言う。
「あとは三人の女の力か、ただのブスだからな」
「オーリは頭がいいぞ」
五味は言うと九頭も頷く。
「うん、ラーニャは馬に乗れる。元山賊だ」
「アリシアは?」
加須が言うと九頭が言う。
「あいつは体が魅力じゃないか」
五味は頷く。
「うん、ナイスバディ」
加須は笑う。
「ラーニャは腰の括れ」
「オーリは柔らかい感触」
こうして、夜の話は本筋から逸脱していく。夜更けまでエロトークが続いた末、三人は眠ってしまった。
そして、朝になった。




