1155、ゼラン対加須
ゼランは頭を抱えた。
「や、やめろ、その忌まわしい歌を!」
加須は歌う。
「宇宙に届け、この歌~。すべてを~、感動させるために~、俺は歌うよ~。歌は戦いのためではなく~、平和のためにあるのさ~」
ゼランは言う。
「貴様、丸腰のくせに、歌だけで俺に勝てると思うのか?」
加須は歌で返した。
「必ず、歌は~、勝つ~」
「く、情熱の勇者か・・・だが」
ゼランは加須たちのいる側に鳥居を回り込んだ。
「おまえにはもうパートナーの小娘がいない。従って、歌の力は落ちている。俺はおまえの歌に勝てる」
加須は言う。
「歌は~、殺し合いの~、武器では~、ない~」
加須の前に、ポルトスが立った。
ゼランは笑った。
「ふん、凡人が」
ポルトスは言う。
「何度も言わせるな。俺は凡人ではない。三銃士だ」
「くだらん」
すると、加須が歌った。
「ポルトス~、どいてくれ~、これは俺と~、ゼランの戦い~」
ポルトスはハッと加須を見た。
加須は神々しく聖なる緑の光に包まれていた。
五味と九頭は驚いた。
「「聖剣を持ってないのに、なぜ光るんだ?」」
加須は歌いながら、ゼランに近づいていった。
ゼランは狼狽えた。
「く、来るな!その瞳をやめろ!無相の瞳を!俺を哀れむような眼で見るな!」
加須は歌いながら、ゼランの目の前に立った。
「魔王よ~、斬れるものなら~、斬ってみろ~、おまえが~、俺を斬るのは~、おまえの~、お母さんの歌を斬ること~」
「う、うるさい!」
ゼランは加須を袈裟斬りにした。
加須は血を噴き出した。
しかし、加須は立ったまま歌を歌い続けた。
ラレンは呟いた。
「か、神か・・・?」
加須は血を吐きながら歌った。
ゼランは加須を斬って斬って斬りまくった。
しかし、加須は倒れず、歌を歌い続けた。
斬りながらゼランは泣いた。
「いい加減に死んでくれ。母さんみたいに歌わないでくれ!」
ゼランは真空の剣を加須の心臓に突き立てた。
そして引き抜くと、加須の胸から血しぶきが上がりようやく、加須は地面に倒れた。
それでも加須は歌っていた。
ゼランはさらに加須に突き立てようと剣を逆手に持ち替えた。
そのとき、脇を刺した者がふたりあった。アラミスとザザックである。
ザザックは言う。
「いい加減にしろ、魔王。おまえの負けだ。勝ったのは加須だ」




