1151、鳥居のからくり
アラミスとザザックが鳥居の裏側に回り込むと、そこには剣で戦う九頭とゼランの姿があった。
アラミスはゼランの背中側に出て、ザザックは、九頭の背後、ネズトスの後ろに立っていた。
それを見たゼランは言う。
「この小僧は剣で戦いながらも、守るばかりで攻撃をしてこない。バカなのか?」
すると、アラミスの背後に現れた五味が言う。
「九頭、おまえ、ゼランに攻撃をしていないのか?」
九頭はゼランから間合いを取って言う。
「ああ、俺たちは日本人だ。戦争はしない。そうだろう?五味?」
九頭は体中に浅い切り傷があるも笑顔だった。
五味は表情が緩んだ。
「九頭・・・」
ゼランは囲まれて不利を悟ったのか、再び鳥居の中へ裏側から入った。
ゼランが入ったのは、元のガランのいる月だ。そこからは鳥居の中にアリシアを抱いて泣く加須とそれを囲むオーリ、ラーニャ、ジイ、ラレンがいて、蹲るガランが見え、九頭たちは見えなかった。
そのガランの見える鳥居の中から、アラミスとザザックが現れゼランを襲った。
ゼランはアラミスの剣を防いだが、ザザックの剣が腹をかすめた。
ゼランは後ろに飛び下がった。
「なるほど、この鳥居のからくりがわかったぞ」
ゼランは鳥居の向こうの離れた場所にいるガランに言った。
「おい、ガラン、おまえも戦え。母さんに会いたいのだろう?」
ガランは言う。
「会いたい。しかし、俺にはもう願いを言う権利があり、その内容は決まっている」
ゼランは言う。
「なんだ?」
「全てを手に入れることさ」
「母さんではないのか?」
「それは兄者の願いだ」
「なに?それは俺たちふたりの願いのはずだ。母さんに相談し、もうひとつの願いを決めてもらう」
「兄者、俺は全てが手に入るということだけを目標にやってきた。もうその願いは変えられない。兄者には兄者の願いを叶えてもらってくれ」
ゼランは言う。
「俺はおまえに全てを手に入れられると困るのだが・・・半分ならばいい。人間の世界を俺が支配し、ドラゴンの世界をおまえが支配する」
「そんなら母さんに相談しなくてもいいだろう?しかし、俺は全てを望む」
ゼランは考え込んだ。
そのときザザックが言った。
「おい、ゼラン。こっちは剣を構えてるんだ。さっさとカタをつけようじゃないか」
ゼランはザザックを睨んだ。
「この低級な人間が!」




