1141、人間とは何か?
ゼランは言う。
「ガラン、何をしている?おまえはドラゴンの王だろう?低脳なドラゴンどもが奴らの後ろにいるではないか?そいつらに襲わせろ。俺たちはここで見物していればいいだろう?」
オーリがまだポルトスに回復魔法をかけている。その背後にザザックたちが立っていて後ろの何百といるドラゴンたちと対峙している。
「よし、兄者、わかった」
ガランは言う。
「者ども!人間を食っていいぞ」
すると、ザザックたち背後に低脳なドラゴンたちが襲いかかって来た。
ザザック、ラレン、アラミス、ラーニャ、ジイはドラゴンと戦い始めた。
ネランは言う。
「ワシレス、俺にはもう戦える力がない。おまえは奴らがドラゴンと戦っている間、あの二本の聖剣を持つふたりを守ってくれ」
「ああ、わかった。しかし、ガランよ。なぜ、ここに低脳なドラゴンばかりが残ったか、わかるか?」
ガランはワシレスを睨んだ。
「なんだ?空中部隊隊長」
ワシレスは言う。
「城が飛び始め、おまえが城から出たら、知能あるドラゴンはみな逃げ出したんだ。もうおまえに見切りをつけてな。俺と精鋭部隊十人はまだ忠誠を守りおまえについてきた。だが、ここにきておまえにはもうあとがないように思える。そうなると、俺はおまえなどいない方が自由ではないかとようやく目が醒めたのだ。おまえに忠誠を誓う意味はあるかと」
ガランは言う。
「俺に忠誠を誓わず誰に誓うのだ?兄者か?」
「いや、俺は自由が欲しい。俺の上に君臨する存在はいらない。だから、人間とは和解し、知能あるドラゴンたちの自由な国を作る」
「王がいない国をか?」
「そうだ」
「そんなものは不可能だ。統治する王がいなければこの世は治まらない。だから、俺が支配してあげようと思っているのだ」
「低脳なドラゴンののさばる野獣の世界をか?」
「そうだ、弱肉強食の世界だ。人間の世界のように法律などで治める世界ではない。それに貴様、低脳なドラゴンと知能あるドラゴンは異種だと思うのか?」
「ああ、思う。まるで違う生き物だ」
「ドラゴンは知能の高いドラゴンと低いドラゴンで分かれるというのだな?」
「そうだ」
「では、ドラゴンとはなんだ?知性を持った者のことか?」
「知性があり、翼がある人間とドラゴンナイト以外の存在だ」
「知能の高い低いで種族を分けて考えるおまえの考えは、知能の低いドラゴンの尊厳を否定する考えだ」
ガランは五味に向かって言った。
「人間にも、知能の低い知的障害者というのがいるだろう?あれはおまえたちとは別種の生き物なのか?それとも同じ人間か?」
五味は意外なガランの質問に困ってしまった。五味は知的障害者を知らなかった。
ガランは言う。
「知能が低ければ、人間の姿をしていても人間ではないとおまえたちは見做すのか?」
五味は初めて、ガランの言いたいことがわかった。
背後ではザザックたちが低脳なドラゴンたちと戦っている。
五味は考えた。
「知能の低い動物は人間ではない。知能の低いドラゴンも人間ではない。では知能の高いドラゴンはどうか?人間と同種のように思える。しかし、そうなると、知能の低い人間は知能の高いドラゴンよりも人間的でないような気がする。しかし、それは知的障害者を人間でないとする危険な思想だ」
何が危険なのか?
人間とは何か?




