1140、五味の眼
ワシレスは言う。
「ネランよ、魔王の兄弟が組んだぞ。俺たちはどうする?願いが人間との和解ならば、ここにいる人間と組むか?」
ネランは言う。
「人間どもが承知するかな?」
ワシレスは五味たちに向かって言う。
「おい、人間ども、俺たちと組む気はあるか?手を組んで魔王と戦おう」
ラレンは答える。
「あまり信じられないが、魔王がふたりも敵になるならば、ドラゴンがふたり味方になることは悪いことじゃない」
ザザックは言う。
「ああ、魔王がふたりじゃ、猫の手も借りたい。五味、九頭、おまえたちも聖剣を持っている以上、戦え」
五味は言う。
「嫌だ。俺たちは戦わない。いや、殺さずに戦う」
ザザックは言う。
「殺さずに戦う?ユリトスのようにか?」
五味は言う。
「魔王ふたりを説得する」
ザザックは言う。
「説得?アホか?あいつらが説得できる相手だと思うか?」
「思う」
五味は言う。
「母親を思う気持ちは、俺たち人間と同じだ」
五味はゼランたちのほうへ進み出た。
そして、白熱の剣をかざした。
その瞬間だった。ガランの左手が空中に消えた。
その左手は五味の白熱の剣を握る右腕を掴んだ。しかし。
ガランの手はまるで五味の手に電流が走っているかのようにバチンと弾かれた。
ガランは驚いて手を引っ込めた。
「な、なんだ?今のは?奴の腕には何か聖なる力が宿っているのか?」
ゼランは言う。
「いや、見ろ、あいつの眼を。あれが無相の瞳だ。いや、真空の瞳か?わからんが、あいつは今、魔力を退ける力を持っている」
「じゃあ、もうひとりのほうを狙うか?」
ガランは九頭の方を見て言った。
九頭はブルッと震えた。
五味は真っ直ぐにガランを見て言う。
「九頭に手を出すな」
なんと、ガランは五味の眼を見て、たじろいだ。
五味の眼は、強い言葉にもかかわらず、優しい眼をしていた。ガランを包み込むような眼だった。




