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1138/1174

1138、願いを言う権利

ネランは言う。

「ワシレス。俺はこれからおまえと組んでいいか?」

ワシレスは言う。

「組む?どういう意味だ?」

「ガラン様の・・・いや、ガランから、寂滅の剣を奪う。そして、あの卵に一太刀入れるのだ」

「ガラン様と戦うのか?」

「おまえもまだ、奴に『様』をつけるのか?律儀な奴よ。もう自由になってもいいんじゃないか?奴ももう死にそうじゃないか。俺もだが」

ネランは血を吐いた。

ワシレスは言う。

「ネラン、大丈夫か?」

「大丈夫ではない。ワシレス、死ぬ前に、おまえに願いを託したい。俺たちの願いだ」

「なんだ?」

「ドラゴンと人間の和解だ」

「和解?」

「人間とドラゴンは共に生きていかなければならない」

ガランは言う。

「貴様ら、そのような願いを叶えたいと言うのか?愚かな。俺の願いはドラゴンの支配する世界だ」

ゼランは言う。

「俺の願いは、俺が再び人間の王となり世界を・・・」

ゼランは崩れ落ちた城の瓦礫を見た。その手前に夥しい知性のないドラゴンたちが犇めいている。

「母さん・・・!」

ゼランは左脇にドラゴンの秘宝、レセン三勇士の卵を抱えていた。

ガランは言う。

「兄者よ、その卵を俺によこせ」

ゼランは言う。

「おまえこそ、その寂滅の剣を俺によこせ」

ガランはニヤリと笑った。

「これでどうだ?」

ガランの寂滅の剣を持った手が空中で消えた。

そして、現れた場所はゼランの左脇だった。

その一太刀で卵にはヒビが入った。

ゼランは右手の矛でガランの腕を払ったが、もうすでに遅かった。

ガランは笑った。

「ははははは、これで三つの願いのうちひとつは俺のものだ!」

ワシレスとネランは悔しがった。

「あと聖剣は二本ある」

ワシレスは五味と九頭の聖剣を見た。

ザザックと、ラレン、ジイ、ラーニャ、アラミスが五味と九頭、それからポルトスに回復魔法をかけるオーリの周りに集まって防御の姿勢を取った。

ガランはもう満足していた。

「これで俺が願いを言う権利を得た」

するとゼランが言った。

「レセンよ。その鳥居の中にいるのだろう?聞きたいことがある」

鳥居の前には加須が立っていた。その後ろの鳥居はしばらく黙っていたが、中から声が聞こえた。

「なんだ?ゼランよ」

ゼランは言う。

「卵に一太刀浴びせた者が願いを言う前に死んだらどうなる?」

この言葉に一同は固まった。

ゼランはつまり、弟のガランを殺したら、その願いを言う権利はどうなるのかと言っているのだ。

「あ、兄者・・・」

レセンは答えた。

「そうなれば、その者は当然願いを言えなくなる」

ゼランは言う。

「それはわかる。だが、願いを言う権利はどうなるのだ?ガランを殺した者に権利が移るということはないか?」

レセンは言う。

「それはない。ただ、願いを言うべき者が死んだら、その権利も消滅する」


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