1135、動くドラゴンの城
ザザックは加須を突き飛ばし、ガランの一太刀を肥沃の剣で受け止めた。
「加須、おまえの歌はたしかに聖なる力だ。でもな。剣を舐めるな。剣は人を殺す道具だ。聖剣でもそれは同じ。思い出せ。ユリトスは五味の聖剣に斬られて死んだ」
加須は眼を見開いた。
ユリトスの死を思い出した。ユリトスは、加須を守るために死んだ。
ザザックは言う。
「思い出せ、聖剣と言えど、人を殺す道具だ。ユリトスの奴はそれを見抜いていたんだ。いかにおまえの血が聖剣と反応すると言っても、聖剣でおまえを斬れないという保証はない」
ガランは寂滅の剣でザザックを押し切ることはできなかった。まだ、寂滅の剣は聖なる緑の光を放っていたからだ。この光は確実にガランの体を蝕んでいた。
ガランは突然、鳥居の外に飛び出した。まだ、アラミスの一撃やその前に受けた傷の痛みがあり苦悶の表情を浮かべていた。
そして、五味と九頭に言った。
「小僧ども!その聖剣を俺によこせ」
五味は低脳なドラゴンたちの大群と睨み合っていたが、ガランの方を見て言った。
「誰があげるかよ。俺も聞いていたぜ。ドラゴンの秘宝は三勇士の卵。その殻を三聖剣で斬る。すると斬った者の願いをひとつずつ叶えてくれる。現状だと、俺と九頭とおまえの願いを聞いてくれるわけだな」
すると、ドラゴンの城から大きな声が聞こえた。それはゼランの声だった。
「なるほど、それならば、その一本は俺が頂こう。母さん、こいつらを踏み潰してよ」
低脳なドラゴン以外の言葉のわかる者は城を見上げた。
その右前足が高く上げられていた。




