1130、ポルトスと寂滅の剣
ガランはすでに精鋭部隊のメンバーを三人殺していた。
七人の鳥型ドラゴンがガランと戦っていた。
ワシレスは言う。
「おまえたち、俺たちはここにいる人間と協力してガラン様を倒す」
ザザックは笑う。
「まだ、ガラン『様』なのかよ?」
ワシレスは言う。
「ふん、武人とはそういうものだ。謀反をしても主人は殺すまで主人だ」
「ふん、犬みたいな鳥どもだ」
ザザックとワシレスは剣を抜いて、ガランに向かって行った。
五味たちはその様子を鳥居の向こうから見ていた。
しかし、鳥居のこちら側から、ラレンが見ても、五味たちの姿は見えず荒涼とした白い大地が鳥居の向こう側に広がっているだけだった。
ガランは強かった。
あっという間に、精鋭部隊の半分を殺した。
ザザックは肥沃の剣で攻撃した。ガランはそれを爪で受け止めた。
ザザックとガランは鍔迫り合いのようになり、力で勝るガランがザザックの剣を押し切ろうとしていた。
ガランは言う。
「非力な人間め。俺を斬るつもりなら、そんな準聖剣ではなく、寂滅の剣など、三聖剣で来い。昔、俺は聖剣士に寂滅の剣で倒された」
ザザックはガランの爪に押し込まれながら言った。
「聞いたか?五味!おまえの聖剣・寂滅の剣がガランを倒すべき剣だ。こいつはおまえが斬れ。それとも最後まで観客で終わるつもりか?」
五味は鳥居の中で迷っていた。
目の前でザザックが体を張って戦っているのを傍観している自分が情けなかった。聖剣はここに三本ある。剣は武器だ。戦いの道具だ。しかも、これは魔王を斬る三聖剣、見ているだけでは宝の持ち腐れだった。しかし、五味は動けなかった。
「殺しはいけない!」
では、ザザックがガランを殺すのをただ見ていていいのか?殺しはいけないと言いながら、ザザックがガランを殺すことを期待するのは卑怯ではないか?
五味は動けなかった。
五味が迷う様子を見ていたポルトスが言った。
「その聖剣を貸してくれ、五味。俺が戦ってくる」
「え?ポルトス?」
「俺は人殺しはしない。しかし、相手はドラゴンだし、しかも魔王だ。それにザザックが危ない。残されたメンバーで一番戦闘力があるのは俺だろう?」
五味は思った。
「そうだ、いくら俺が寂滅の剣を持っているからと言って、剣技のない俺が戦うよりはポルトスが戦ったほうがいい」
五味はポルトスに聖剣を渡した。
「頼む。ポルトス」
「ああ」
ポルトスは鳥居を出ていった。
鳥居の外にいたラレンはポルトスが寂滅の剣を持って現れたことに驚いた。
この鳥居、向こう側から現れるときは空中からいきなり姿を現すようになる。
ガランは両手でザザックとワシレスの剣を受けながらポルトスを見た。
「それは!寂滅の剣!」




