1129、三つ巴
ガランはまだ刺された心臓が痛んでいた。
「ぐう、もうすぐ、俺の願いが叶うという所で、貴様らが裏切るとは」
精鋭部隊のひとりは言う。
「ガラン様、お許しを。俺たちはあなたが王であることで蓋をされたように自由に生きることができなかった。ドラゴンに世界の支配者はいらない」
ガランは言う。
「バカ者が。俺が世界を支配したら、ドラゴンの楽園が実現するのだぞ」
「いいえ、ドラゴンの楽園ではなく、あなたの楽園です」
「この謀反人どもが!死ね!」
こうしてガランと空中精鋭部隊の戦いが始まった。
十対一で、もともとガランのほうが格段に強かったが、心臓をふたつ潰された痛みによりガランの力は十人の精鋭部隊の力と同等となっていた。
一方、鳥居の前ではザザックとワシレスが睨み合っていた。
ザザックは言う。
「俺の名を死後の国まで持って行け。俺は大剣豪ザザック」
ワシレスは笑う。
「死後の国か?それならば、おまえが俺の名を持って行け。誉れ高きドラゴン・ワシレスという名をな」
「空中部隊長ではないのか?」
「そんな肩書きに囚われるのは不自由だ」
「なるほど」
ザザックはニヤリと笑った。
「そういえばさっき面白いことを聞いた。この世界とは別に異世界がたくさんあるそうだ。おまえも死んだらそのどこかに生まれ変わるらしい。だから、安心して死ね。いや、俺はおまえを殺さない。斬る」
ワシレスは笑う。
「なにをわけのわからないことを。そこをどけ、俺を鳥居の向こうに行かせろ。鳥居の向こうに三王子と願いを叶えるドラゴンがいるのだろう?」
ザザックは笑う。
「願いを叶えるドラゴンは、ドラゴンの秘宝の中にいる。あれはドラゴンの卵だ」
ザザックのその言葉は、ガランの耳にしっかりと入った。
「なに?それは本当か?」
ザザックはしまったと思った。
「この地獄耳が」
ガランは精鋭部隊と戦いながら言う。
「もうすぐ俺の動く城が、ここへ来るはずだ。その中にドラゴンの秘宝はある。おまえら、もしかして、それを待っているのか?」
ザザックは言う。
「そうかもしれないが、ここでおまえを殺せば、世界平和の願いは半分叶ったようなものだ」
ワシレスは言う。
「それならば、城のドラゴンが来ない限り、俺たちの願いも叶わないわけか」
ザザックは言う。
「そういうことだ。だが、その前におまえも死ぬ」
すると、鳥居の中から姿を現したのはラレンだ。
「ザザック。お喋りが過ぎるぞ。おまえらしくもない。おい、ワシレスとか言う鷲のドラゴン。おまえとザザック、そして俺たちと組んで、今この場でガランを倒さないか?」
「「なに?」」
ワシレスとザザックは同時にラレンを見た。
「ラレン、それはどういうことだ?」
ラレンは言う。
「今、ここは三つ巴になっている。それならば、俺たちとワシレスたちが組んで、一番強そうなガランを倒すことに専念したら、お互いのためだと思わないか?」
ザザックとワシレスは顔を見合わせた。
ザザックは言う。
「おまえがいいと言うなら、協力してガランを倒してもいいぜ」
ワシレスも言う。
「俺のその案、同感だ」
ふたりは精鋭部隊が戦っているガランのほうを向いた。




