1126、白い月の白い鳥居
五味たちは光の階段が消えている場所から、空間を超えると、今度は下る白い石の階段が数段あって、白い月の地面に降り立った。
一面白い荒涼とした世界が広がっていた。空は黒かった。
そして、少し離れた所に、白い石でできた鳥居のようなものが見えた。他に建造物のようなものはなかった。
五味たちはその鳥居をしばらく見つめていた。
すると、後ろを振り返ったジイが大きな声をあげた。
「まさか、あれが大地ですか?あの黒い球体が?」
五味たちは振り返った。
たしかにそこに地球はあった。その向こうに眩しく光る太陽があった。
ジイは言う。
「地球は青いのではないのですか?」
五味は言う。
「あれ?おかしいな」
九頭が言う。
「見ろよ、太陽が地球の向こう側にある。地球のこっち側は今、夜なんだよ」
加須が言う。
「九頭、頭いいな」
九頭は笑う。
「オーリの手を握っていたら、頭がいいのが移ったかな?」
オーリは言う。
「なに、わけのわからないことを言ってるのよ。それよりレセンは・・・」
一同は離れた所にある白い鳥居を見た。
ラレンは言う。
「あれしかないだろう?」
ポルトスは歩き始めた。
「行くぞ」
一同はポルトスを先頭に、鳥居に向かって歩き始めた。
五味は言う。
「重力は地球と同じみたいだな」
ラーニャは言う。
「何よ?重力って?」
五味は言う。
「地球には重力があるんだ。上の物は下に落ちるだろ?それは重力があるからなんだ」
ラーニャは眉をしかめた。
「なんか、当たり前のことを難しく言ってない?もっと簡単に言ってよ」
加須は言う。
「地球は大きいから重力が大きくて、月は小さいから重力が小さいと思っていたけど・・・」
九頭は言う。
「来てみると、地球と変わらなかったな」
アリシアは言う。
「前世では月に来たことはあったの?」
加須は答える。
「まさか。まだ、そういう時代じゃなかったよ」
一同は白い荒野を歩いた。遠くには白い岩の丘がいくつも見えた。
植物は全くなかった。
水もなかった。
水もないのに岩の丘がどうやってできたかは五味たちにはわからなかったし、考えもしなかった。
風はほとんどなかった。丘は風が作ったのかもしれなかったが、五味たちはそんなことを考えたりしなかった。
とにかく目的は正面に見える白く輝く鳥居だった。
鳥居に近づくと、それは二階建ての家くらいの高さと、車が二台通れるくらいの幅があった。
鳥居の向こう側には何もなかった。
五味たちは鳥居の手前に立ち止まった。




