1125、ガラン飛び立つ
ガランは心臓をふたつ潰されていた。しかし、まだ、他にも心臓はあった。
ゼランは訊く。
「おまえには心臓はいくつあるのだ?化け物」
ガランは苦しそうに笑う。
「ふん、弟を化け物とは。しょせん、兄者も人間。ドラゴンを見下しているのだな?」
「人間から見れば心臓がふたつ以上あれば化け物だ」
「しかし、この勝負、俺の分が悪い。邪魔者のせいもあり、心臓がふたつ潰された。他の心臓のみで生き続けるように俺の血管は変化した。そのうち出血も止まるだろう」
「ふん、化け物が」
「だが、今、ここで勝負を決めることはできない。今ここで決めるならば、俺は負けるだろう」
「ほう?わかっているじゃないか?」
「だから、俺は逃げる」
「どこへ?」
「月だ」
「なに?」
「夜空を自ら飛んで俺は月に行く。そして、三王子を使って、レセンに願い事を叶えさせる。俺が世界の王となるように」
ゼランは笑う。
「バカめ。貴様がこの城より速く飛べると思うのか?」
「まだ、この城は月への途上にある。俺は空中に伸びた光の階段の消えた部分まで戻り、そこから三王子を追って、月へ行く。そのほうがこの城で行くよりは早いはずだ」
「なぜそれがわかる?」
「月は遠いと聞いたことがあるからだ」
「だが、俺がそうさせないぞ。そろそろ、トドメを刺してやる」
「ふふん、ここをどこだと思っている。千年間俺の名を取りガラン城と呼ばれてきた城だ。俺の部下がまだたくさんいる。低脳なドラゴンだけでも夥しくいるのだ。その大群をこの王の間に呼んだ。いくらおまえでも、全部殺して、俺を捕まえることはできまい」
そう言い終わるか終わらないうちに、ふたつの入り口から、トカゲ型ドラゴンなどの低脳なドラゴンがドッと入ってきた。まるで津波だった。ゼランはそれらのドラゴンに貼り付かれて、ドラゴンの山の中に埋もれてしまった。
「くっ、なんだ、この数は?」
ガランは笑って王の間を出ていった。
バルコニーには空中部隊長ワシレスがいた。
「ガラン様、そのお怪我は?」
「ワシレスか。おまえもついてくるか?」
「どこに?」
「この城より先に月に行くのだ。見ろ、月を。まだ近いとは言えない。半分も来てないだろう。ここは戻って光の階段の最上部から三王子たちが行った道を行く方が早いと思うのだ」
「なるほど」
「おまえも来い」
「はい、空中部隊精鋭、ついて行きます」
ガランはバルコニーから飛び立った。それにワシレスと十名ほどの空中部隊精鋭が飛び立った。彼らは大地に向かって下降していった。
まだ、地球が丸いとはっきりわかるほど遠くには来ていなかった。




