1113、光の階段を登るジイ、そして、ポルトス
ジイは月へ伸びる光の階段を登りながら思った。
「ああ、ゴーミ陛下、あなたはこの五味という少年と入れ替わったそうじゃが、レセンとの転生予約が済んだら本当に戻ってきてくださるのだろうか?わしはここまで五味という少年と旅をしてきたが、彼には陛下にはない良さがある。それと、この旅を通して、急激な成長を遂げた。素晴らしい子じゃ。死んでしまうのは惜しい。ゴーミ陛下が戻って来てくれたらもちろんわしは嬉しいのじゃが、五味殿と別れるのは辛い。他の九頭と加須という少年も、良い少年だ。アホな奴らだと初めは思っていたが、ここまで立派になるとは思わなかった。三人が揃って行けば叶うという願いも、できればこの三人をこの世界に残して欲しいというのではダメじゃろうか?いや、わしの口出しすることではないか。しかし、五味殿が死に、ゴーミ王が帰ったところでこれからどうしようというのか。また、ゴーミ王とドラゴニアを通って半島のガンダリアまで旅をするのか?気が遠くなるわい。それに、まだ魔王がいる。ふたりも。ドラゴンへの願いで魔王たちを消してはくれんじゃろうか?」
ポルトスは光の階段を登りながら思った。
「ユリトス先生、いよいよです。転生予約です。本来ならば先生がこの場をリードしてくだされば、頼もしかったのですが・・・見てください、リードしているのは五味。俺ではありません。あの三人は素晴らしい少年です。先生に殺さずを教えただけはあります。自分たちの信念に従って生きてゆく勇気があります。先生、この旅はあの三人が死んで終わりになると思うのですが、それでいいのでしょうか?もちろん、魔王を倒さねば人間の世界に平和は訪れません。それはゴーミ王ら、本物の王子たちの仕事でしょうか。いずれにしろ、俺はまだまだ王子たちをサポートしていく役目が続きそうです。ああ、アラミスだけでもこの場に来てくれれば心強いのですが・・・ああ、弱音を吐いてはいけませんね」




