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1111、光の階段を登る九頭とオーリ

九頭はオーリの手を引いて光の空中階段を登っていた。

オーリの手の柔らかさは九頭にとってこのドラゴニアでの冒険の中にある幸福の象徴だった。

九頭はオーリの体の柔らかさに惚れたのが始まりだった。しかし、九頭はそのうち、彼女の聡明さを愛するどころか尊敬していた。九頭にはオーリの頭の良さは、自分の足りない頭では釣り合いが取れないのではないかと思ったこともあった。それでも、九頭は男だった。九頭はオーリを守りたいと芯から思った。男が女を守るなど古くさい思想とも思ったが、九頭にとってはそれが普遍の思想だと思えた。時代により価値観は変わるが、九頭は異世界に来たことで、その価値観の無常を無意識に感じていた。オーリは頭がいい。回復魔法ができる。その点はむしろ九頭が頼る側だった。しかし、オーリは剣士ではなかった。戦闘力はゼロだった。九頭はだからこそオーリを守るのは自分だと思っていた。頭が悪くてもそれが愛する女に対する男の在り方だと信じた。もちろん九頭が敵を殺すのではない。そこが悩ましいところだったが、それでもオーリを最終的に守るのは自分だと九頭は思った。

九頭はオーリを見た。

オーリも九頭を見ていた。

九頭は微笑んで、また、目指す月を見上げた。

満月に向かってふたりは向かって行った。


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