1108、兄弟ゲンカ
ゼランは魔王の城のバルコニーに降り立った。
そして、ドラゴンナイトの姿から人間の姿に戻ると、あの部屋、祭壇のあるあの岩戸の部屋に向かった。
部屋に辿り着くと、ゼランは祭壇に声をかけた。
「母さん、どうしたんだ?なぜ、暴れるんだ?」
「おまえたちがケンカをしていたからよ」
「ああ、よかった。はっきりとした答えが返ってきた。やっぱり母さんは野獣などにはなっていなかった」
「でも、楽しいわね。こうやって、町を焼くのは」
ゼランは眼を大きく開いて言った。
「母さん、まだ、光線を出しているのか?」
「ルナシルの町は丸焼けよ。ほほほ」
「やめろ、母さん。あれは人間の町だ。俺が王になり支配する町だ。母さん、人間の世界を破壊するのはやめてくれ」
「いいじゃないの。面白いんだから」
ルナシルの町の上空ではガランとネランが翼を広げ、魔王の城に向かっていた。ときどき城の吐く破壊光線に驚きながら、紫の炎で燃える町を尻目に飛んでいった。
ガランはネランに言う。
「ゼランが王の間にいて、王座に座っていたら、俺は王の間で奴と戦わねばならん。ネラン、おまえはその際に隠れていて、奴に不意打ちをかけるのだ。その隙に俺は奴に致命傷を与える攻撃をする。いいな」
「不意打ちですか?卑怯ですね」
ネランは笑った。
ガランも笑う。
「ふふ、戦いとは卑怯とか正々堂々とか関係ない。勝てばいいのだ。勝ってこそそのあとのことが自分のものになる。死者には、もう死しかない」
「ゼランを殺せばいよいよ、ガラン様が本当の魔王になられるのですね?」
「いや、奴を殺すだけではダメだ。おまえの持つドラゴンの秘宝を発動させなければならん。そのためにも俺たちはもう一度月の神殿に戻らねばならない。そして空中神殿に行くのだ。そこにすべての鍵はある」
ガランとネランは城のバルコニーに降り立った。
ガランは真っ直ぐ王の間に向かった。ネランは豊穣の剣とドラゴンの秘宝を持ってガランとは違う通路を通って王の間を目指した。
しかし、ネランは途中、どこからかゼランの声が聞こえてくるのを耳にした。
「母さん、やめてくれ。俺の言うことを聞いてくれ」
ネランがその声のほうに向かうと、行き止まりに祭壇の隠し部屋が岩戸を開いていた。
そこにはゼランが祭壇に泣きつく姿があった。
ネランは言った。
「ゼラン様、ガランが王の間に向かいました。そこであなた様と勝負するとのことです」
ゼランはハッとして振り返った。そこには豊穣の剣とドラゴンの秘宝を持つネランが立っていた。
ネランは言う。
「王の間でガランと勝負なさいませ。俺はあなた様をサポートします」
「サポート?おまえはガランのスパイダーズではないのか?」
「もう違います。俺は聖剣士です」
「魔王を倒そうとする者ではないか?」
「それが魔王の味方をすれば、こんなに面白いことはないでしょう?」
「む?」
「あなた様とガランの勝負、隙を見て俺がガランを攻撃します。そうすればあなた様はガランを殺すことができる」
ゼランは言う。
「わかった。王の間に行こう」
ゼランは上を見て言った。
「母さん、ちょっと待っててくれ。俺は王の間に行って、ガランを殺してくる」
すると城はうなりを上げた。
「いけません。兄弟ゲンカは!」
「でも、母さん、魔王はふたりもいらないんだよ」
「兄弟で仲良く、世界を支配しなさい。ふふふ」
城はまた破壊光線を吐いた。町にまた新たな紫の炎が上がった。
ゼランは舌打ちして、岩戸の部屋を出た。
「よし、ネラン、行くぞ」
「いえ、俺はあとから行きます。一緒に行けばガランに情報がバレるでしょう」
「うむ、そうか。わかった」
ゼランは走り出した。人間の消化器官のような岩の廊下を走った。
ネランは自分の左手にあるドラゴンの秘宝を見て笑った。
「ふふ、全てが手に入るドラゴンの秘宝か・・・」




