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1106/1174

1106、ルナシルの町は歌う

五味たちはルナシルの町の中を走った。

「歌声が聞こえる!たぶん、そこに加須とアリシアはいる!」

五味、九頭、ラーニャ、ジイ、オーリ、ポルトス、ラレン、ザザックは歌声を追いかけて走った。


ガランは上空からルナシルの町に逃げ込んだと思われるチョロを探していた。正確にはドラゴンの秘宝を探していた。

そこにラミナの一撃とザザックとの激しい戦いで傷ついたトーマが飛んできた。

「ガラン様!」

「なんだ?トーマではないか。神殿はどうした?」

「もうカラです。加須という王子が魔剣を手にして、町に入りました。その魔剣をドラゴンの秘宝に充てれば聖剣に変わるとのことで、つまり、奴はドラゴンの秘宝を探しています」

「では、俺と同じ物を探しているというわけだな?」


チョロとネズトスはまだ民家にいた。

「おい、ネズトス、なんか、歌が聞こえないか?」

「ああ、そういえばなんか聞こえてくるな」

チョロは腰の辺りに違和感を覚えた。

「む?」

チョロは腰の袋からドラゴンの秘宝を取りだした。

「光っている・・・」

それはわずかに緑の光を発していた。


いっぽうの加須とアリシアはまだ歌を歌っていた。

すると、加須の背中の魔剣の紫の光が弱まっていった。

加須はそれに気づかず歌い続けた。


走る五味と九頭の背中の聖剣も緑色の光を放ち始めた。

ラーニャは言う。

「五味、九頭、あんたたちの聖剣が光っているわよ」

五味は言う。

「きっと加須とアリシアの歌に反応しているんだ。さっきもそうだった。そして、ドラゴンの秘宝も反応するはずだ。さっきはガランの中にあった秘宝に反応した」

五味たちは広場に出た。

そこでは町の男たちと、ドラゴンたちが戦っている。

五味たちにもドラゴンが襲いかかって来た。

五味は寂滅の剣を抜いた。

その聖剣は光っていた。

それを見た低脳なドラゴンは五味から放れた。

それを見た九頭も聖剣・真空の剣を抜いた。

「これはお守りだな」

九頭は笑った。

「戦わなくて済みそうだ」

五味は言う。

「歌は広場の向こう側にある礼拝堂から聞こえる」


空中のガランは礼拝堂を見下ろして言う。

「この歌は不快だ。あの礼拝堂から聞こえてくる。あの小娘と小僧か」

礼拝堂の中から聞こえる歌声はアリシアと加須の声だけではなく、多くの人々の声になった。すると、歌声は、礼拝堂の近所からも聞こえ始め、次第に町全体に広がっていった。

自宅に隠れていた女性や子供、老人たちがともに歌い始めたのだ。


チョロは光を強く発し始めたドラゴンの秘宝をテーブルの上に置いた。

「すげえ、聖なる光が激しくなり始めた」


ガランはこの歌声に焦りを覚え始めた。

「よし、礼拝堂に乗り込んでやろう。奴は生け捕りにしなければ」

ガランは降下して、礼拝堂の前の広場に降り立った。

そこにいた町の男たちは魔王が現れたことに驚いて、魔王から距離を置いた。

しかし、礼拝堂の入り口には多くの男たちが、剣を抜いて立っていた。

「魔王だな?この礼拝堂には一歩も入れさせないぞ」

「ふん、雑魚どもが!」

ガランは炎を吐いた。

男たちは堪らず逃げ惑った。

礼拝堂への道は開いた。

ガランは礼拝堂に入ろうとした。

そのとき後ろから声が聞こえた。

「待てー!」

ガランが振り向くと五味と九頭が聖剣を抜いて走ってきた。その後ろからも仲間が走ってきた。

ガランはその聖剣を見て恐れた。

ガランは礼拝堂の中へ飛び込んだ。

中で歌を歌っていた女子供老人は歌をやめ逃げ惑った。

加須は言う。

「歌をやめちゃダメだ。歌で俺たちは魔王に勝つんだ」

加須はいっそう歌声を張り上げた。

すると、背中の魔剣がついに紫ではなく緑色の光を放ち始めた。

ガランは驚いた。

「なぜだ?魔剣が歌の力で聖剣になったとでも言うのか?」

町中の歌はまだ続いていた。

次第にドラゴンたちは退却し始めた。


スパイダーズのネランは町の角から、礼拝堂を見ていた。

「ガラン様のピンチだ。この歌を鎮めなければあの方は負ける。礼拝堂に聖剣が揃えばあとはドラゴンの秘宝のみだ」

ネランは後ろを見た。さっきから、違和感のする民家があったのである。

アパートの一階の窓が緑色に光っている。

窓ガラスが強風に吹き付けられたようにガタガタと揺れている。

ネランはそこに歩み寄って、中を覗いた。

するとそこにはチョロがネズトスと驚いて、テーブルに置かれたドラゴンの秘宝を見ていた。

ネランはその家のドアを開けて中へ入った。

チョロとネズトスは驚いてネランを見た。

そのとき、ネランはポルトスの姿をしていた。彼はスパイダーズの変身師なのだ。


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