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1105、共に歌う加須とアリシア

加須は礼拝堂の祭壇の前で、アリシアと並んで歌っていた。

そこに避難した人々も共に歌った。

加須は歌うアリシアの横顔を見た。するとアリシアも加須を見た。

目と目が合った。

加須はもう、アリシアの顔をブスだとは思わなかった。加須にとってこの顔は世界に唯一無二の顔だった。他の顔と優劣をつけるのはゲスのやることだと思った。加須は目鼻立ちで人の美しさが決まるとはもう思わなかった。アリシアの体も以前は他の女と比べて最高だと価値づけていたが、それもくだらないことだと考えた。他の女と比べていたら、いつまでもアリシア以上の女が現れる可能性がある。アリシアが最高の女ではなくて、アリシアがアリシアであることが加須にとって重要なことだった。

加須とアリシアは歌うことで心を通わせていた。一体感を味わっていた。

ふたりは見つめ合っていた眼を、正面に向け、祭壇から周囲の多くの人々に視線を移した。

人々はふたりを見て歌っていた。

加須はそれを自分たちを祝福するような歌だと錯覚した。それは錯覚だとわかっていても、加須にはちょうど礼拝堂の祭壇の前であったので、結婚式をしているような気持ちになった。

加須は歌いながら左手でアリシアの右手を握った。

アリシアは握り返してきた。

加須の顔は紅潮した。

加須は体中が温かくなり、股間も勃起しているのを感じた。加須はそれをいやらしいことだとは思わなかった。

加須は幸福だった。

自分では気がつかなかったが、加須は自信に満ちた表情をしていた。

彼らの歌が、礼拝堂にドラゴンが入ることを妨げていた。もちろん加須はそんな自覚はなかった。この歌は初めはチョロに居場所を伝えるという目的があったが、今では加須にとって目的はどうでもよく、こうしてアリシアといつまでも歌い続けたい、それだけを思っていた。


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