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1103、ゼランの思索

一方、月の神殿の半島の根元ではポルトスたちが、低脳なドラゴンたちと戦っていた。低脳とは、ほぼ野獣であることだ。トカゲ型が多いこの野獣たちがルナシルの町全体に押し寄せてきていた。

ラレン、ラーニャ、ジイはそんな低脳なドラゴンを斬って戦った。ポルトスもやむを得ず、斬り殺して自分とオーリを守った。

ポルトスは考えた。

「この低脳なドラゴンたち相手ならば殺すことは許されるかもしれない。しかし、人格を持ったドラゴンと戦わねばならなくなったらどうしたらいいだろうか?先生ならどうする?ユリトス先生!」


ゼランは五味と九頭と神官に話しかけていた。

「おまえが五味でおまえが九頭か。異世界から来たのか?」

九頭は答える。

「そうだ。だから異世界転生師ドラゴン・レセンのところに行って転生予約をするんだ」

「転生予約?なんだそれは?」

五味は言う。

「もう一度元の世界に転生する予約をするんだ」

「予約?」

「予約さえすれば俺たちはいつ死んでも元の世界に戻れるそういうわけだ。岩のドラゴンには俺たちの寿命はもうすぐだと言われている」

ゼランは真面目になっていた。

「異世界とは本当にあるのだな?」

五味は答えた。

「ああ、ある」

ゼランは言う。

「では、この世界を支配したからとて、全てを支配したことにはならないのだな?」

九頭は頷く。

「そうだ。世界は広い、宇宙は広い、異世界も無数にあるということだ」

ゼランは考えた。

「それが本当だとしたら、俺が支配しようとしているこの世界は・・・」

神官は言う。

「何を考えている?」

ゼランは言う。

「俺がしていることは虚しいことなのか?」

五味と九頭はこの言葉に驚いた。魔王という悪人が、自分の野望を虚しいのではないかと自問している。

ゼランは言う。

「おい、五味、九頭、その異世界転生師レセンは本当にドラゴンなのか?」

五味は言う。

「ああ、ドラゴンと聞いている。神のようなドラゴンだと」

神官は言う。

「レセンは神だ。ドラゴンと言うには持っている力が偉大すぎる」

ゼランは神官に訊く。

「偉大すぎる力とはなんだ?」

「異世界を見ることが出来る。時空を超越されているのだ」

「時空を超越・・・か」

ゼランは何か考えていて、そして、言った。

「俺はレセンに会ってみたいな。話がしたい。場合によっては世界征服はやめるかもしれない」

「「え?」」

五味と九頭は驚いた。魔王が世界征服の野望を放棄する?それは五味たちがゲームで経験したことにはない発想だった。

ゼランは神官に言う。

「とにかく月に行くには三本の聖剣が必要なのだな?そして、魔剣ではダメなのだな?」

神官は言う。

「そうだ、聖剣が月の神殿に三本揃ったとき、月への階段は現れる」

ゼランは考えた。

「では是非とも加須の持つ白熱の魔剣とそれを聖化するドラゴンの秘宝が必要なのだな?」

「ああ、そうだ」

ゼランは言う。

「おい、五味、九頭、約束できるか?おまえたちはここにいると」

五味と九頭は意外な言葉に驚いた。

ゼランは言う。

「俺はおまえたちと共に月に行ってレセンと話してみたくなった。そのためにはルナシルの町に逃げ込んだ秘宝を持つコソ泥を見つけなければならない。そして、加須を連れて戻って来る。そうしたら、俺とおまえたちは共に月に行くのだ。いいな?」

五味と九頭は動揺していた。魔王が事実上仲間になると言っているのだ。

ゼランはもう一度言った。

「おまえらはここで待て。いいな?」

五味は言った。

「おまえはどこに行くんだ?チョロと加須を連れて帰るのか?」

ゼランは言う。

「そのチョロというコソ泥は殺してもいい。ようはドラゴンの秘宝と聖剣が手に入ればいいのだ。それと加須の身柄もか?」

五味と九頭は「やはりゼランは魔王だ」と思った。自分の目的のためには人を殺しても構わないと思っているからだ。

五味は言う。

「わかった。加須を連れて来てくれ。それとチョロを殺したら俺たちは協力しないぞ」

ゼランは言う。

「そのコソ泥は生きている意味があるのか?」

五味は言う。

「おまえにはないように思えても、チョロ自身にとっては生きていて意味のないことはない。みんなそうだろう?おまえは人を殺しすぎる」

ゼランは笑った。

「虫けらやネズミに生きている意味などあるのか?」

五味は言う。

「だから、おまえには意味がないように見えても虫もネズミも生きている意味はある。生きたいと思っている。他人の気持ちを考えたことはないのか?」

「ふん、くだらない問答になってきた。いいか、おまえらはそこを動くな。俺は秘宝と聖剣と加須を連れて戻って来る。そうしたら、共に月へ行くぞ」

ドラゴンナイトの姿のゼランは翼を羽ばたかせて神殿を出て行った。

神殿には五味と九頭と神官が残された。

「おい、五味」

「なんだ、九頭」

「これって逃げろってことか?」

「いや、俺たちも加須を助けに行こうぜ」

神官は言う。

「私は逃げます」

神官は神殿を出た。

しかし、そこにはザザックとラーニャの姿をしたトーマが戦っていた。

神官は言う。

「もうこの神殿に魔王はふたりともいない。部下もいない。おまえたちの戦いは無意味だ。すぐにやめろ」

ザザックは言う。

「無意味なんかじゃねえ。こいつの持っているのは聖剣・豊穣の剣が魔剣化したものだ。こんなものがいつまでもあっては、世界の脅威だ」

トーマは言った。

「そうか、神殿にはもう守る者はいないか」

彼はラーニャの姿からドラゴンの姿になり空に舞い上がった。トーマは四つあるうちのひとつの心臓が潰れていた。その痛みは相当なものだったが、ガランに忠実なこのスパイは主の元へ向かった。

ザザックは飛び立ったトーマを見て舌打ちした。

神官は陸地の方に走って逃げていった。

ザザックのところに五味と九頭が出てきた。

五味は言う。

「ガランもゼランもルナシルの町に行った。ドラゴンの秘宝と、聖剣・白熱の剣と加須の身柄が目的だ。秘宝はチョロが持っている。あいつの身が危ない」

ザザックは言う。

「よし、行くか。戦いの舞台は月の神殿からルナシルの町の中ってわけだ」


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