107、美女探し
ベインの町に着くと、五味たちはさっそく美女探しを始めた。
ベインは大きな町だった。中央に城があり、周囲には街路が網の目のように張り巡らされていて、まるで迷路のようだった。それは中世ヨーロッパというよりはイスラム都市を思わせた。そういえば日差しも暑く、ベールをかぶっている女性も多かった。市場では人が多く賑わっていた。その市場に五味たちはいた。
「美女いねーかな?」
五味たちはキョロキョロと辺りを探した。
女性たちはベールをかぶっている者が多かったため、なかなか美女が見つからなかった。
チョロは言った。
「なんでえ、一万ゴールドかよ」
九頭は言った。
「なにが?」
「え?今、ご婦人から財布を掏ったんだけどな、たったの一万ゴールドしか入ってねーの」
さすがにチョロの盗みには良心を痛めた九頭は言った。
「あんまり掏りは良くないんじゃないか」
加須も言う。
「うん、そのご婦人はその一万ゴールドで今日の食材を買おうとしていたんだろ?」
五味も言う。
「それは罪だぞ、チョロ」
「なんだよ、おめーら。今日食っていけてるのは、誰のおかげだよ?」
「それを言われると弱いな」
五味がそう言うと、ナナシスが五味の肩をツンツンつついて言う。
「いや、そういうのも今が最後かもしれないぞ」
「なんだよ、ナナシス」
「あれ見ろよ、スカーフを被った女、っていうか、ほぼ少女。メチャメチャ美人じゃねーか?」
「え?」
五味たちは見て声を揃えた。
「「「「完璧な美少女!」」」」
スカーフの下には見れば目が潰れるほどの美しい顔があった。
「体はどうだ?」
加須は見た。
「み、みごとなプロポーション、アリシアなんか目じゃない」
九頭は言った。
「感触はどうだろう?お尻を触ってみよう」
九頭が行きかけたので五味は止めた。
「バカ、それじゃ、痴漢になっちゃうだろ?ナナシス、あの子に化けるんだ」
ナナシスのデブのオバサンはゆらゆらと陽炎の如く姿が揺らめいて、五味たちが気づいたときには、あの完璧な美少女に変身していた。
「「「「おおっ、完璧!」」」」
加須はその姿をジロジロ眺めて、心ゆくまで楽しんだ。
九頭はお尻を触って、心ゆくまで楽しんだ。
五味は股間に顔を埋めて心ゆくまで楽しめなかった。一物があったからだ。
「やっぱり、ここまでは化けられないんだな。あ、そうだ、ご本人に見せてもらえばいいんだ。チョロ、カネくれ、そのカネであの完璧美少女にアソコを見せてもらおう」
ゲス過ぎる。
チョロは言った。
「いくらあればいいんだ?」
「二万もあればいいんじゃないか?」
五味は一万ゴールド金貨二枚を持って、彼女に言った。
「このカネでアソコを見せてくれませんか?」
九頭は笑った。
「アホか、それはナナシスだ」
「え?」
五味はナナシスの股間を触った。
「ホントだ。あるものがある。じゃあ、ご本人はどこに?」
加須は言った。
「どこかに行っちゃったよ」
五味はナナシスの体全体を見た。
「うん、これだけでも充分稼げそうだぞ。よし、さっそく興行開始だ」
五人は広場に出て、正方形の噴水があったので、その周りの段差を利用しショーの舞台に決めた。
五味と九頭と加須は客の呼び込みを始めた。
「さあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。今から、世界一と名高い美少女ナナシアのストリップショーを始めるよ」
「欲求不満の男性必見、美しい少女の花のようなおっぱいが見られるよ」
「さあ、みなさんカネを出して、十万ゴールド集まったら、ナナシアが一枚脱ぐよ。もう十万ゴールドでもう一枚、そうやって十万ゴールドずつで段々少女の初心な裸が顔を見せるよ。さあ、はい、一万ゴールド頂きました。あと九万ゴールドで靴が片方脱げるよ」
すると客の中から不満の声が上がった。
「靴片方に十万ゴールドもかよ!」
五味は言った。
「お客さん、これはお得な話ですよ。靴片方が十万ゴールドでも、下着も同じように十万ゴールドですよ。安いと思いませんか?」
「安いな」
と言ったのは客に化けたチョロだ。ようするにサクラだ。
もう、噴水前の広場は男たちでごった返していた。
そこへ、憲兵がやって来た。
「こらー!何をしている!」
人垣はふたつに割れて憲兵が十人ほどその割れた道を歩いて来た。
「やばいぞ、逃げろ!」
「あ、逃げたぞ、小僧どもを捕まえろ!」
ポルトスとアラミスは剣を抜いて、噴水の段の上で立ちはだかった。
「貴様らは何者だ?」
「ガンダリア王国三銃士ポルトス!」
「同じくアラミス!」
ふたりは憲兵たちと剣を交わした。
しかし、客たちが協力したため、五味と九頭と加須はあっという間に捕まって後ろ手に縛られてしまった。
ポルトスとアラミスはこの人だかりの中で剣を振るって逃げることはできないと観念し、ふたりもお縄についた。
チョロはサクラとして客の中にいたので無事だった。
ナナシスは・・・
憲兵たちはナナシスの前に跪いた。
「探しましたぞ、姫」




