106、儲け話
翌朝、宿を出ると、宿の前には前日の戦いで疲れた者たちが、歩いていた。皆、ベインの町などに帰る者たちだった。夜は、ケインの町にまたソウトス軍が攻め込んでこないかと、大将のハイドロを中心に構えていたらしい。
ユリトスは馬を引いて言った。
「よし、私たちもベインの町に行こう」
一行は歩き始めた。
ナナシスがまだ太ったパン屋の女将さんだったので五味は笑った。
「ナナシス、おまえ、その姿が好きなのか?」
「いや、そうじゃないけど」
「だったら、もっと美人に変身しろよ。いや、せめて若いイケメンとかさ」
五味がそう言うと、九頭は言った。
「そうだ、ナナシスが美人になってストリップショーをやればいいんだ。そうすりゃ、簡単にカネが稼げるぞ!」
加須は九頭の顔を見た。
「そうか!それは名案だ!」
五味も笑った。
「それはナイスアイディア!」
アリシアは軽蔑の眼で言った。
「最低」
ラーニャも言った。
「こいつら本当に国王なの?」
オーリも言った。
「私も王家の者は上品なものと思っていたけど、幻滅だわ」
そんな三人の女子の声など無視して九頭は興奮して言った。
「ザ・ナナシス・ストリップ移動劇場」
五味は興奮した。
「そうか、移動劇場!これはいい。旅をしながらカネが稼げる」
加須も興奮した。
「ついでに俺たちも楽しめる」
チョロも同調した。
「そいつはいい商売になるぜ。へへへ、ナナシス、よかったな、職が見つかって」
ナナシスは照れて言った。
「いやぁ、魔法も才能かな?へへへ」
モロスは呆れた。
「この人たちは本当に、発想が下劣だっぺな」
五味はもうやる気で燃えていた。
「よし、ベインの町に着いたら劇場を借りよう。そのカネはチョロに出してもらおう。もちろん儲かったカネでチョロには返す。うん、いいぞ」
九頭は言った。
「いや、善は急げ、ここで始めよう」
「ここで?」
加須は驚いた。
九頭は言った。
「ちょうど、周りには疲れた兵士たちが歩いてるじゃないか。慰めの娯楽を求めてるんじゃないか?」
「よしっ」
五味は言って、森の中の緩い上り坂を歩く兵士たちに向かって言った。
「みなさん、兵士のみなさん。ここに、絶世の美女、ナナシアがいます。この絶世の美女が今からここでストリップショーを始めます。その前にみなさんから、カネを集めたいと思います。カネが十万ゴールド集まったら一枚、ナナシアが脱ぎます。さらに十万ゴールド集まれば、もう一枚、最後の一枚を脱ぐまでおカネを集めます。さあ、絶世の美女、ナナシアの裸を見たい方は、足を止め、こちらをご覧ください」
兵士たちは五味の方を見た。ちなみに、ユリトスたちは足を止めていない。止めているのは、ナナシス、五味、九頭、加須、チョロの五人だけ、ジイが心配そうに五味を見ながら、ユリトスが「ジイ殿、放っておきましょう」と言うので、前に向かって歩く。
足を止めた兵士たちは言う。
「絶世の美女ってどこにいるんだ?」
五味はナナシスを指して言う。
「ここにいるじゃないですか?」
「そいつのどこが、絶世の美女なんだよ?ただのデブのオバサンじゃねーか」
五味たちは「しまった」と思った。
「やべ、まだ、ナナシスが美女に変身していなかった」
五味たち五人はスタコラサッサとユリトスたちのほうへ逃げて追い越して行った。
「ユリトスさん。俺たちは先にベインの町に行って興行を始めてるよ」
ユリトスは顔に手を当てて言った。
「恥ずかしい、あれでもロガバの三人の国王か?ポルトス、アラミス、一応護衛について行ってくれ」
「はい」
ポルトスは馬をデボイ伯爵に預け、アラミスと共に走って五味たちを追いかけた。
「お待ちくださーい、ゴーミ陛下ー!」




