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10、下水道逃亡

五味と九頭は下水道の中を(くそ)まみれ、汚物まみれで歩いていた。

「おい、五味よ。俺たち本当にこんな臭くて汚い思いをしてまで逃げる必要はあるのかな?」

九頭がそう言うと五味は答えた。

「うん、よく考えたら、おまえにとってはそう思うのは当然だ。まだ、自分の国にいるからな。でも、俺の立場になって考えてくれ。俺は隣国ガンダリアから来たゴーミ王だ。バトシア王国の城に行って生きていられるかな?」

「俺の権力で守ってやるよ」

「お、勇ましいな」

「へへ、俺さ、なんていうか、この世界に来て自信がついたみたいなんだ」

「どんな?」

「人の上に立つ快楽?ハーレムで好き放題する自由?前世の俺ならば、ハーレムが与えられても、そんな王侯貴族みたいな遊びはできません、って逃げちゃったかもしれないのに、実際は遊びまくった。いろんな女の○○を××した。楽しかった。こんな人生ならば生きている意味はあると思った。五味はどうだった?ガンダリア王国のハーレムは?」

「よかった。とくにマリンちゃんが良かった。マリンちゃんの◇◇を△△するのは最高だった」

ふたりは糞まみれのままハーレムの思い出に思いを馳せた。

五味はふと気づいて言った。

「あれ?そういえば、おかしくないか?」

「なにが?」

「ここは下水だろ?」

「うん」

「なんでこんなに明るいんだ。まあ、暗いには違いないけど歩いて行けるくらいの暗さだ。どこかから、光が漏れてくるみたいだ」

「あ、あの角を曲がったところから光が差してないか?」

「行ってみよう」

ふたりは角を曲がった。

「おい、九頭、しめたぞ。マンホールだ。梯子まである」

「よし、地上に逃げられるぞ」

九頭は梯子を上がって、マンホールの蓋を押し開けた。そして、空を見た。そこには顔があった。それはアトリフ五人衆のひとりの顔だった。

「へへへ、クーズ国王様こんにちは」

「うわっ」

九頭は梯子から飛び降りた。途中まで上がってきていた五味にぶつかりふたりは下水の水の中に落ちた。

「うわっ、汚ね、九頭、何してんだよ?」

「マンホールの蓋を開けたら、アトリフ五人衆のひとりがいたんだ」

すると上から声がした。

「もうどこの出口も塞いでるぜ。へへへ」

「くそう」

五味は下水の中を歩き始めた。

「おい、五味、どこ行くんだよ。どこの出口も塞がれてるらしいぞ」

五味は九頭に言った。

「頭を使えよ。下水の出口はマンホールとか川岸だけか?」

「え?」


ここはある民家のトイレ。若いそばかすだらけの赤い髪の娘さんが便器に座って、おしっこをしている。

「ああ~、気持ちがいい。放尿ってやっぱり最高ね」

するとこんな声が聞こえて来た。

「ああ~、気持ちがいい。若いお嬢さんのおしっこを顔に受けられるなんて」

娘は青ざめた。

「え?なに?誰?」

そのとき便座の中の尻に触れるものがあった。それは五味の顔だった。

「ぎゃー、なに?なんなの?」

娘はトイレの床に腰を抜かして座り込んだ。

便器の中から五味が全身を現した。

「いや~、ここの便器の下は狭い排水管で、ジャッキーチェンみたいに突っ張り棒みたいにして登れたよ」

あとから遅れて、九頭が出て来た。

「あ~、助かった。ここはどこだろう?」

娘は驚いた。自分の国の国王が便器の中から出て来たからだ。

「へ、陛下?」

「お、俺の顔を知ってるのか?」

九頭は娘に言った。

娘は言った。

「なんで、国王陛下がうちの便所から出てくんのよ。変態なの?」

九頭は言った。

「お嬢さん、俺たちを(かくま)ってくれないか?」

「あんた、本当に国王なの?」

「本当だ。そして、こっちにいるのはガンダリア王国の国王ゴーミだ」

「ガ、ガンダリアの国王?」

五味は言った。

「もし君が、俺たちを助けてくれたら、褒美として、なんでもくれてやろう」

「なんで王が逃げてんの?クーズ陛下も懸賞金がかけられているし、ていうか臭い」

ふたりは娘の好意で、シャワーを浴びることができた。そして、新しい服に着替えた。

娘は言った。

「あたしの名前はアリシア。あたし、王族ファンなの」

五味と九頭は「ラッキー」と思った。

五味は言った。

「じゃあ、アリシア。俺たちはこれから、ロンガ王国の王、カースに会いに行きたいんだ」

九頭は言った。

「え?五味、何を言ってるんだ。俺はこの国の王だぞ。おまえだって俺がいれば、この国で遊んで暮らせるんだぞ」

「九頭よ、頭を使えよ。おまえの国は南のバトシア、俺の国は真ん中のガンダリア、そして、恐らく加須が王になっているロンガが北、この三国は戦争をしている。俺は現在王座を捨てて逃亡中だ。おまえも、逃亡中だ。で、おまえがもし、このまま、王座に戻ったらどうなる?」

「え?」

「俺が捨てたガンダリアと戦争をすることになるんだぞ。そして、もし、ガンダリアを倒したら次は加須が王をやってるロンガと戦わなければいけないんだぞ。最終的には俺とおまえと加須のうちふたりは死ぬんだぞ」

「ま、最初に死ぬのはおまえだろ、五味。今、敵国にいるんだからな」

「怖いこと言うなよ。でも、俺がここで処刑されて、おまえが加須の率いるロンガと戦い負ければおまえも死ぬんじゃないか?」

「勝てばいいだろ?」

「いや、そういう考えは良くない。あらゆる可能性を考えて、最善を尽くすべきなんだ」

「最善って?」

「最終目標は、この三国を俺たち三人で統治するんだ」

「ま、マジで言ってんのか?おまえ、いつから野心家になった?」

「俺はハーレムで遊んだのをきっかけになんか自信が出て来た。それで俺の未来像がこうだ。ロンガ、ガンダリア、バトシア、の三国に君臨するのは俺たち三人。そして、ここからが重要なんだが、俺たちは象徴になるんだ」

「え?日本の天皇みたいにか?」

「そうだ」

「やだやだやだ、絶対やだ。ご公務でお言葉を間違わずに言うなんて俺には無理!」

「いや、そうじゃねえ、天皇とは違う。俺たちの公務は子作りだ」

「子作り?」

「ようするにハーレムで遊びまくって一生を過ごそうってわけだ」

「五味!おまえ、最高だな!」

するとアリシアが言った。

「あんたたち、本当にガンダリアとバトシアの国王なの?ふたりとも若いけど賢者として尊敬される国王だったはずなのに」

五味は言った。

「余は国王である」

九頭も言った。

「朕も」

アリシアは眼を輝かせた。

「マジで、目の前に憧れのガンダリア王とバトシア王がいる。夢みたい」

そのとき、外から声が聞こえた。

「クーズ王を捕らえた者は一億ゴールドの懸賞金が出る。逆に匿えば死刑だ。だから、匿っている者はすぐに申し出ろ。今なら許され一億ゴールドもその者のものだ」

アリシアは窓を開けて手を振って言った。

「おまわりさーん!ここにクーズ王陛下と隣国のガンダリア王がいるわよ!」

五味と九頭は絶句した。

「マジか!」


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