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第1話 季節外れの、紅き流れ星

チアがベルゼーラのところで働き始めて、3ヶ月が経った。

その頃から、不穏なニュースが度々ラジオで流れていた。


▪▪▪


『続いてのニュースです。エルゼルガ王国では、季節外れの流れ星が観測されています。当局は――』


ラジオで、そう流れている。


「その流れ星って、一体何なんでしょうかね?」

喫茶店の準備をしながら、チアはそう言う。


「そうだな。俺も少し気になるが……」


エルゼルガ王国の流れ星は、夏終わりから秋の半ばまで観測される。

今は初夏にあたる為、観測されるのは妙な事だ。


そのまま開店の準備をしていると、ドアの叩く音がした。

ベルゼーラがドアを開けると、国家剣士(ネルシェガー)の格好をした男性が居た。


「ベルゼーラ殿、少し良かろうか」


「……デオロガ殿!」


彼は、デオロガ・ノアロ。ベルゼーラのかつての上司だ。

プライベートで度々来ていたが、なぜ今回は国家剣士(ネルシェガー)の格好をしているのだろうか。


「メルシェ女王様より、謁見の申し立てをお伝えに」


「………メルシェ様が、どうして?」


なぜわざわざ謁見を俺に……。

それを聞くと、デオロガは表情を曇らせた。


「例の流れ星の件で、だ」

そう、デオロガは静かに言った。


「とりあえず、城まで来て頂きたい」


▪▪▪


急遽、喫茶店を臨時閉店し、ベルゼーラとチアは街中にある城へと赴いた。

馬車を走らせて、20分程で着いた。

(デオロガは、先に城へ戻っていた)


門番に謁見の件を話すと、通してくれた。

城警備員に謁見の間まで、案内される。


数分待ったところで、メルシェ女王が入ってきた。


「お待たせしましたわ」

そう言うと、席の向かいに座る。


「謁見の内容は、デオロガ殿から聞いています」

ベルゼーラはそう口を開く。


「そう、なら話が早いわ。……貴方には、この件に関して調べて頂きたい」


「………は、流れ星の事をですか?」

そう言うとメルシェ女王は頷いた。


「向こうの国から、電報を受け取ってな。流れ星があった時から大気の乱れ等々の報告と……どうやら、その流れ星は紅く染まるらしい」


普段の流れ星は、蒼白く流れるのが一般的であり、『紅い流れ星』など聞いた事が無い。

大気の乱れがあるとすれば……


「それは、国の均衡が崩れ始めている、という事でしょうか」


「まあ、そう言う訳であるな。貴方も分かるように、国家剣士(ネルシェガー)は忙しい。だからこそ、調査をして欲しい」


ベルゼーラは、一瞬昔の事を思い出した。


「私で、よろしいのでしょうか。兄上を救えなかった、私が……」


「もう、それは昔の事。今は別の事案……さもなければ、謁見を申し立てしないわ」

メルシェ女王は、そう返した。


「分かりました。お受けします」

そうベルゼーラが言うと、メルシェ女王は頷いた。


▪▪▪


城を出たその足で、とある武器屋に向かった。

路地をいくつも通り抜けた先に、ロンザ武器屋がある。


ベルゼーラが国家剣士(ネルシェガー)の時に、よく質の良い剣を買いに来ていた。


「あら、いらっしゃい。お久しぶりですねぇ」

女店主のミオシさんが出迎えてくれた。


事情を話すと、剣を提供してくれた。


「それと、アシラ君は居るかね」

とベルゼーラは聞いた。


アシラは、この家の次男で『総合医術師(ヴォイトジェン)』の資格を持ち、現在はフリーランス (※) として活動していると聞いている。

学校を主席で卒業するなど、頭も良く切れ者と感じている為これからの旅のお供にと思ったのだ。


「ああ、それでしたら。今日は確か休みの日で……」

ミオシさんはそう言って家の奥に行くと、アシラと共に出てきた。


「あの、事情は母から聞きました。僕で良ければお願いします」

そうアシラは言った。


「ありがとう。よろしくな、アシラ君」


▪▪▪


「あのう、ベルゼーラさん」

帰宅途中、馬車の中でチアが言う。


「どうしたんだ」


「さっき、城の中での会話なんですけど……今の女王様の兄上を救えなかった、と言うのは?」


チアはベルゼーラの所で働き始めてから、彼が元国家剣士(ネルシェガー)だと言うのは聞いていた。

……のだが、その事は何一つも言っていなかった。

辞めた理由も『いずれは話す』としか伝えて無かった。


「……先の反乱軍の戦争は、知っているよな」

ベルゼーラは静かにそう言う。


「はい。確か、その時ナノゼルガ国王が暗殺をされて……もしかして」


「チアが察した通りだ。俺はその時、国王を護る為に動いて居たんだが……護れなかったんだ。俺は国家裁判で裁かれた身で、本来なら死罪に等しいと考えた。だが、女王様が機転をしてくれたのか剣士の剥奪だけで済んだのだ」


そう言う事があって、街中に住めないのか。

それもチアが言うと、ベルゼーラは頷いた。


「まあ、女王様があのような事を言ってくださるだけでも、俺は生きる資格があるのかもしれない。……今は、異変を探ろう」


そうベルゼーラが言うと、チアは頷いた。


▪▪▪


デオロガ・ノアロ 49歳


ベルゼーラが国家剣士(ネルシェガー)として活動していた時の、かつての上司。

『職を追いやったのは自分の責任』と考えており、度々ベルゼーラの元にプライベートで来ている。


▪▪▪


(※) 『総合医術師(ヴォイトジェン)』のフリーランスとは


基本的に、総合医術師(ヴォイトジェン)医術院(いじゅついん) (病院のような施設) で勤務する。

しかし、個人で活動をする人もいて、その人達を『フリーランス』と呼ぶ。


給料に関しては、医術院勤務は月給制、フリーランスは歩合(ぶあい)制である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おっ(;・∀・)っ 物語が静かに動き出しましたね(;・∀・)ッ なりほど……ふむふむふむふむ フム(;´Д`)? (;´Д`)…… そんなことがあったんですか…… なんとまあ […
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