プロローグ 二人は出会う
「……ここか、ベルゼーラさんの喫茶店」
そう、チアは呟いた。
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チアは孤児院に住んでいたが、15歳になると孤児院を出る決まりがあった為、職と住が出来そうな仕事場を探していた。
その時、喫茶店の住み込みアルバイトの募集をしていると、孤児院のお手伝いさんが言っていたので手紙を出した。
翌日、手紙の返事が来た。
『それでは、明後日。うちへ来てください』と書かれていた。
……それで、今日。
街外れにある、喫茶店に来たのだ。
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「あら?もしかして、手紙をくださった子?」
ふと、後ろから声が聞こえた。
チアは振り返ると、そこには女性が居た。
「あ、はい。その……」
「ああ、私はすぐ近くに住んでいるコヨモと申しますわ。彼の喫茶店がある、ここの地主をしている身なのです。……もうすぐ、彼は畑から戻ってくるだろうから」
コヨモさんがそう言うと、近くの林の奥から男性がやって来た。
畑を耕す道具を手にしている。
「……おや、お客さんかな」
その男性がそう言う。
「手紙を出した子よ、ベルゼーラさん」
コヨモさんが横から言う。
「ああ、わかりました。それでは、中へどうぞ」
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喫茶店の中に入った。
カウンター席や、向かい席など中々広い店内だとチアは思った。
向かい席に案内された。
「それでは、話を聞こうか」
そう、ベルゼーラが言う。
「……は、はい。その、ここで働かせてください!住み込みで!」
ベルゼーラは少し考えたのち
「じゃあ、任せよう」と言った。
「え、良いんですか?」
チアがそう言うと、ベルゼーラは頷いた。
「ああ。元はさっきのコヨモさんの娘さんが、お手伝いで働いて居たんだがな。学校の関係で街中の方に出ると言ったんだ。それで人を募集していて、ちょうどお前さんから手紙を貰ったんだ」
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一度孤児院に戻り、荷物をまとめて改めて来ることにした。
「では、気を付けてな」
ベルゼーラはそう言った。
「はい」
チアは喫茶店を後にした。
(しかし、あの子……)
ベルゼーラは1つ気になることがある。
チアの姓の事だ。
ベルゼーラがまだ国家剣士だった頃の、かつての反乱軍の戦争で殉職した戦地医術師の姓を思い出したのだ。
(まあ、いずれ分かることか)
焦るような事ではない。今はあの子と過ごす事を考えよう。
▫▫▫
「なんか、意外とすぐ決まったな」
孤児院に戻る途中、チアはそう呟いた。
(………でも、何だろう。ベルゼーラさんに会うのって、初めてじゃ無いかも)
遠い昔――反乱軍の戦争があったとき――に、剣士の姿を見たことがある。
その時、随分偉い立場の人だろうっていう剣士が、ベルゼーラさんに似ていた。
(まあ、気のせいなのかもね)
とにかく、ベルゼーラさんのところで働くんだ。
しっかりとやらなきゃいけないよね。
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二人の生活は始まったが、まさかの事態に巻き込まれるとは思ってもいなかった。