表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天と地の最果てには  作者: 桜橋あかね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/17

第11話 国へ戻る

シーゼルガ王国の異変を終わらせたベルゼーラ一行は、ナノゼルガ王国へ急いで戻っていた。


その間……ベルゼーラはずっと、考えていた。

解放隊が、どうして女王を人質にして城へ閉じ籠ったのか。

その時、国家剣士(ネルシェガー)はなぜその事態を防げなかったのか。


ナノゼルガ王国の神像は国王が兼ねている。

それが、今回の事の筋だと思うのだが―――


(とりあえず戻り次第、事情が分かる剣士に話を聞くしか無いのか)


情報が少ない分、聞いた時に対策を練ろう。


「……ベルゼーラさん」

ふと、チアが声をかけた。


「どうした、チア」


「これ、ベルゼーラさんに渡した方が良いと思って」

お守り石が入った、巾着袋を渡してきた。


「お父さんの形見だろう?チアが、きちんと持っていなさい」


「その、今回ばかりは気が気でなくて……」

チアはそう言うと、目に涙を浮かべて口唇を噛み締める。


「そうか、俺の事をそれほど大切にしているのか。分かった、受け取るよ。その代わり――」


「その代わり?」


「絶対、死なないからな」

そうベルゼーラが言うと、石が入った袋を受け取った。


▪▪▪


船は、海側に面した国境門へ着いた。


(わたくし)からも、どうかこの事態を無事に終わらせてください」

ノントがそう言う。


「ありがとう。気をつけて帰ってください」

ベルゼーラが返すと、ノントは頷いた。


そして、船は直ぐに来た方向に向かって出港した。


「とりあえず、首都に向かうとするか」

ベルゼーラが言うと、皆は頷く。


そして、門から街へ入った時だ。


「……!?」

ベルゼーラはまた、嫌な気を捉えた。


「……私達を狙ってるかもしれません」

そう、メイリーがベルゼーラに囁く。

彼女も、その嫌な気を捉えたようだ。


(……どこだ、どこから狙っている)

そうベルゼーラは思いながら、周りを見渡す。


(ここまで来ておいて、死ぬわけには……!)


▫▫▫


その時、メイリーは冷や汗をかいていた。


――この感じは、解放隊が狙っている時の気だ。


短剣を取り出し、辺りを見渡す。

そう遠い距離ではない。きっと、近くに……


ふと、人混みの中から、見たことのある顔が見えた。


(あれは、オリィ!)


マントのポケットに手を入れている。

で、その手が上がるのが見えた。


もしかして、私達に拳銃を向ける気じゃ――


(……だとしたら、私に出来るのは!)


メイリーは、走り出した。


「ベルゼーラさんに!ぜってぇ手を出してやるもんか!!」

そう言いながら、オリィに向けて短剣を投げる。


その短剣は、見事にポケットに入れていた手の腕に刺さる。

オリィはその短剣を抜くと、腕の傷をもう片方の手で押さえてしゃがみこむ。


ふと、オリィと目が合う。

その目は、なんだか私に訴えているような――


「メイリー!右側!」

ベルゼーラの声で、メイリーは我に返る。


右を見る。

そこにはオリィの手下のリズイルが短剣を片手に、近くへ寄っていた。


(……私としたことが!)

一瞬の気の緩みで、近くまで寄らせていた。


「よくもオリィ様を!」

リズイルが短剣を振りかざす。


避けようとした瞬間、脇腹に痛みが走る。


「イッ……」

メイリーは、脇を手で押さえながらしゃがむ。

血が流れ出ているのが、よく分かる。

それに、意識が朦朧(もうろう)になる。


その時一気に、周りの人混みが騒ぎ始める。

リズイルは、オリィの所に駆け寄るとその場を離れた。


▫▫▫


「メイリー!」

「メイリーさん!!」


三人はメイリーに駆け寄る。


「……す、すい、ません」

メイリーは、か細い声でそういう。


「無理に話しては駄目です。今から応急処置をして、医術院に運びますから!」

アシラが言う。


「大丈夫か」

誰かが、こちらに向かって話しかけた。

ベルゼーラが声の方を向くと、白衣を着た人が居る。


「俺はこの近くの医術院に所属している、ロンゾンです。怪我人が居ると聞いて、来ました」

そう彼が言う。


ベルゼーラが事の事情を少し話し、アシラが傷の状態を話す。


「……やや傷が深め、か。内臓を傷付けている可能性もあるので、手術をしましょう。もうそろそろ、助手達が担架を持ってきます」

ロンゾンが言う。


「すいません、この子も連れていっても良いですか。さっきの光景を目の前にして、気が動揺しています」

ベルゼーラが、そう聞く。

チアは、今にでも泣きそうだからだ。


「分かりました。手の空いている助手に、面倒を見させます」


「お願いします」


その時、助手の人達が担架を持ってきた。

そこにメイリーを乗せる。


「確か、アシラさんと言いましたな。オペを一緒に行いたいのですが、よろしいか」

ロンゾンが言う。


「はい、分かりました」


「……すいません、俺は寄る場所があります。そのまま、お願い出来ますか」

ベルゼーラが、最後にそう付け加えた。


「分かりました」

ロンゾンがそう返すと、ベルゼーラは頷いた。


▪▪▪


その頃、人気(ひとけ)の無い場所では。


「……オリィ様、どうしてすぐ拳銃を出さなかったのです」

リズイルが、オリィの腕に包帯をしながら聞く。


「メイリーの剣の方が、早かったからだ」


そう返すと、リズイルは不満そうな顔をする。

「あのタイミングでは、こちらの方が早かったです」


実のところ、拳銃を取り出すのを戸惑っていたのだ。

なぜ戸惑っていたか、今になってようやく分かった。


かつて、メイリーが自分に言っていた事。

―――『護りたい者は誰か』、と言うもの。


それは、そう……メイリーの事だ。


血の分けあった姉弟(きょうだい)では無かった。

それでも、仲は本当の家族以上のモノがあった。


解放隊が出来た頃、言っていた事を思い出した。


『何があっても、俺はメイリーを護るから』


だからこそ、あの時『言っている事が分かる』と彼女が言っていた。

どうして俺は、今まで忘れていたのだろう。


本当に護りたい者は、自分の手で護ると決意したのに――


「さて、包帯は巻き終わりました。本部にはどう報告しましょう」

リズイルがそう言う。


「……とりあえず、メイリーを負傷させた、痛手にはなるだろうと伝えてくれ」


「分かりました」

そうリズイルが返すと、無線で報告を入れる。


俺は……俺は。


もう、解放隊には居られない。

もう、無念で死んだ人達の血で(よご)れてはいけない。


――やっている事は、かつて自分の家族を殺した罪人(やつら)と同じだ。


(……今からでも、『(つぐな)い』は出来るだろうか)


そうオリィは思うと、懐から強化縄を取り出し、リズイルの所へ寄る。


「オリィ様……?」


リズイルが振り返ると同時に、オリィは鳩尾(みぞおち)を殴り付ける。

一瞬動かなくなったリズイルの手足を、強化縄で巻き付ける。


「オ、オリィ……様……どう、して」


「……済まない、リズイル。俺はもう解放隊(あそこ)には戻らない」


そうオリィは言うと、リズイルをその場に残して去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これはかなり重症ですよ…… (;゜Д゜) 息つく暇もないっっ [気になる点] 絶対死なない なんて言うたらフラグ立ちそうで怖い [一言] しかし心強そうな味方が増える?! 胸アツ展開キタ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ