表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Let's鬼退治!  作者: 岡智みみか
8/71

第4話

「いっちー? どうしたの?」


「切れた」


 ベッドに寝ていた彼女は起き上がった。


「消毒して絆創膏貼る?」


「唇にしみるから、塗り薬と絆創膏だけでいい」


 クラスでは比較的独りでいることの多いいっちーが、彼女には懐いている。


優雅な黒髪の大人し気な彼女は、いっちー口の端に細い指でそっと薬を塗った。


「キジはまた体育サボってんの?」


「私、ああいうの嫌い」


 キジと呼ばれた彼女は、甘くささやくような声でそう言った。


いっちーを見つめながら目を細め微笑む。


あたしはなんだかその雰囲気に恥ずかしくなってきて、モジモジとしている。


「こんにちは。あなたがいっちーを連れてきてくれたの?」


 いっちーはあたしをにらんだ。


「違うよ。勝手についてきただけ」


「そう。ありがとうね」


 あたしにまでにこっと微笑むから、ますます恥ずかしくなる。


「じゃ、先に戻ってるね」


 知り合いなのかな? 


あたしとは同じクラスになったことのない子だ。


いそいそとそこを抜け出す。


校庭に戻ったら、サッカーの試合は続いていた。


「負けてんだけど」


「本当だね」


 猿木沢さんに2点を入れられ、4対2で負けている。


「もも、出られる?」


「任せて」


 選手交代。


ピッチに立ったあたしの前に、猿木沢さんが立ちはだかった。


「あんた名前は?」


「花田もも」


「ダセー名前」


「そういうの、あたしには効かないよ」


 視線をボールに移す。


キックオフのホイッスル。


走り出したあたしの足を、猿木沢さんが引っかけようとちょっかいを出してくる。


それを飛び越えようとして、肩と肩が激しくぶつかり合った。


外野からのヤジが飛ぶ。


執拗にマークされていた。


パスが一つも通らない。


体操服をつかまれ、動きが制限されている。


あたしはワザと高くボールを上げた。


その動きに気を取られているうちに、サッと走り出す。


「しまった!」


 団子状態になっていた集団をようやく抜け出した。


猿木沢さんの足でも追いつけない。


「もも、頼んだ!」


 飛んで来たパスをドリブルで駆け上がる。


敵も味方もほとんど全てを後ろに置いてきた。


キーパーは大きく両腕を広げている。


あたしは狙いを定めた。


「いっけー!」


 右上のコースを狙ったシュートは、飛び上がったキーパーの指先をわずかに外した。


「ゴール!」


 歓声が上がる。


同時に試合終了のホイッスルが鳴った。


試合結果は4対3。


あたしの周りには駆け寄ってきたクラスのみんなが飛びついた。


「さっすがもも! カッコよかったぁ!」


「負けたし」


「いいんだよそんなこと。気にすんな」


 同じクラスのはーちゃんとしーちゃんがあたしの両腕に絡みついた。


「行こう。次は数学だよ。どうせ宿題やってないんでしょ?」


 三組のグループに猿木沢さんの姿が見えた。


振り返った彼女と一瞬目が合う。


彼女たちの次の授業何なんだろう。


ふとそんなことが気になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ