溶け合うふたり
ほぼラブコメのシチュエーションをやり尽くした感のあるトケルとカタメ。
家にお邪魔、ベスパで遠出、クマの危機、台風、フルーツバスケ、ラジ体、カフェでお勉強、海での思わぬ競泳、なぜかヤモリ、どうしてナース、同居、レスカ、荒技の文化祭、命の危機・闇鍋、どうしてラーメンでエロティック・・・途中に告白があった。
それは、いきなり訪れた。
「カタメくん、寒いね・・・」
「えっ」
「わたしの異能力であったかくしようか?」
「え、えっ?」
まさかとカタメは思った。
出会ったばかりの頃、トケルの名前通りの『溶かす』能力にとても神秘的な想いを抱いていたカタメだったが、1週間の食材買い出しの帰りにベスパで寄った海で、突然トケルがそう言い出したのだ。
「どうやって」
カタメがトケルに問いかける。
時刻は夕刻。
地元の海は防波のテトラポットが眼前に積まれて決して視界が良いとはいえないが、砂浜にたどり着く波がその音をザ・ザ・・・サ・サ・サ・・・と鳴らしていた。
砂浜で海に向き合うふたりの背後からは沈んだ直後でまだ上方に照らし上げる太陽が残照を見せてぼんやりとしていて、左手に見える丘の上には白い灯台にやっぱり白い光源が灯されて回転している。
ずいぶんと長い間が空いたが、トケルはその答えを告げた。
「手を温めるとね、体全体が暖まるんだよ」
そして、答えを実行した。
海の静かな風は冷たいから、ふたりは今しばらく手を繋いでいたいと思った。
おしまい




