広場
「へぃ、らっしゃいらっしゃい! 今が旬の、グリフォンの炭火焼きだよー!!」
すぐ近くの屋台から、大きな呼び声が飛んでくる。
多くの人が仕事の手を止め、一息入れる時間帯。店側にとっては絶好の稼ぎ時ということもあり、あちこちから威勢の良い声が上がってくる。
「こっちは、羽根兎と飛豚の蜂蜜酒漬けだよ! ここでしか食べられないよー!」
「両替ー、両替ー! ウチは木銭10枚からやってるよぉ!」
「骨銭が9と黒木2枚!? せめて石銭くらいないのぉ?」
「620エンヌか。なら、骨銭二つと銅1枚やるからお釣りは石銭四つで頼むよ」
「お客さん、銀貨は先に崩してから来てくれんかね」
周囲の勢いに気圧され、僕は逃げるように移動する。
屋台と屋台の隙間の空間、ちょうど人の流れの澱んだ場所で落ち着くと戸惑い気味に息を吐いた。
見渡す限りの人、人、人。開場前のまばらな状態とは打って変わって、溢れんばかりの人が市場全体を覆い尽くしている。
あまりの多さに、少し酔いそうになる。
確かにここはイゾラシアでも一二を争う規模だからある程度は仕方ないのかもしれないが、それでも前に来た時は流石にここまで酷くはなかった気がする。