07
王立学園の食堂でいつものように学園内にある薔薇園を一望できる席で、レオナルド、イザベラ、ロック、フランクの四人で昼食をとっていた。
「……と言うわけだ!俺が王子としての資質を備えれば、破棄ができる!」
自信満々に宣言したが、イザベラはどことなく不満そうで、ロックは呆れていて、フランクは少し困ったような顔をしていた。
「レオ様、休日はあのクソ…じゃなくて、ローズマリー様と一緒なんですか?休日はもう、私と一緒にいてくれないんですか?」
イザベラの大きな薄い緑色の瞳が涙でうるうるしていた。
レオナルドはそんなイザベラが可愛いくて仕方がない。
「イザベラ、俺だって一緒にいたいさ。だが、今はイザベラと結婚するために俺は頑張るから、イザベラも頑張ってくれるか?その分、学園内では一緒にいるよ。」
だから泣かないで、とイザベラの耳元で囁き、こぼれ落ちた涙をレオナルドの指で優しく拭った。
「レオ様がそうおっしゃるなら…。1ヶ月後の学園創立パーティーはエスコートしてくださるんですよね?」
イザベラが瞳をうるうるさせながら聞いてきた。
「あぁ、もちろん!」
ロックは何か言いたげにレオナルドの方を見たが、レオナルドとイザベラが二人の世界に入ってしまったため、言葉を飲み込んだ。
フランクはいつものことなので、いつも通りに食事を堪能していた。
「はぁ…」
「ロック、ため息なんかついて、どうした?」
フランクはもぐもぐと食事をしながらロックに話しかけた。
ロックはまた、ため息をついた。
「いや、なんでもない」
ロックはまたため息をついたが、フランクはもう気にもとめなくなっていた。
ロックは将来のことを案じ、レオナルドに一言言おうかと思ったが、諦めた。
昼食の時間が終わる鐘が聞こえ、レオナルドはイザベラと離れるのが名残惜しそうにしていた。
レオナルドとロックとフランクは同じクラスだがイザベラとはクラスが違う。
イザベラはひとり自分の教室に歩み始めた。
誰もいない廊下を歩きながら、イザベラはぶつぶつ独り言をしていた。
「ばっっっっかじゃないの!何が婚約披露パーティーが延期よ!今すぐ婚約破棄でしょーが!せっかく楽して贅沢して暮らせると思ったのに…。ドレスも宝石もおねだりしても買って貰えないなら意味ないじゃない!」
と、廊下の壁を蹴った。
「あー。イライラするー。本当にバカすぎるわ。レベル落として、ロックかフランクあたりを落とせばよかったかしら。今よりはマシな生活はおくれるだろうし…。あーイライラする。」
といいながら、壁を再度蹴った。
「あのクソ女がいなければ…」
そうぶつぶつ呟きながら何かを閃いたような顔をした。
「そうよ、私は幸せにならなくちゃいけないのよ。だって私は可愛いんですもの。ふふっ」
イザベラは不適な笑みを浮かべながら自分のクラスへとまた歩きだした。