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「それで、私が噂を流したと言うの?」
王妃の執務室に、王妃とレオナルドとローズマリー。王妃の秘書官とアリアがいた。
王妃は執務室の机からは動かす、レオナルドとローズマリーは促されたソファに座らず立っていた。
「王妃様、そんなにこの傷が醜いですか?」
ローズマリーはドレスの胸元ををぐいっと下げ、傷が見えるようにした。
レオナルドは傷よりも胸に目がいっているようだ。
「王妃となれば、内面はもちろん見た目も美しくしていないとなりません。王妃が美しくあることで、諸外国との外交がうまくいくのです。」
「そう仰るなら、レオナルド様の性根を叩くだけで、私を婚約者にする必要はなかったはずです。誰が見ても、私の内面は美しくありませんから。」
王妃は黙り込んでしまった。
レオナルドは内面も美しいぞ!と言おうとしたが、言える雰囲気ではなかった。
「王妃様、何か仰ったら如何です?」
王妃は下を向くだけで何も答えなかった。
レオナルドが首を傾げた。
「母上、何か隠してませんか?」
その言葉に、王妃はびくりとしたがまだ顔は伏せたままだった。
「…ローズマリーさん、貴女はレオナルドとの婚約破棄するつもりなのでしょう?今、破棄しても構わないのよ?」
ローズマリーは王妃が何を目的でそう言っているのか分からなかった。
「王妃様、確かに言われのない噂がたち、レオナルド様にご迷惑がかかるので、解消も考えました。ですが、まだ半年経っていませんし、最初にお約束していただけましたよね?口は出すなと…」
ローズマリーは笑顔だったが、どこか怖かった。
「話はそれだけかしら?それだけなら、帰っていただける?私も暇ではないのよ。」
王妃はローズマリーを睨むように見た。
「……確認がしたかっただけなので、失礼しますわ。レオナルド様、アリア、戻りましょう?」
レオナルドは母親である王妃をじーっと見ていたが、ローズマリーに促されていたので、何の声もかけずに王妃の執務室をあとにした。
二人が去ると、執務室には静寂が訪れた。
「王妃様、あんなこと言ってよろしいのですか?」
「…よろしくないわ。でも、仕方がないじゃない。」
王妃はとても深いため息をついた。
ため息と同時に、執務室の扉が開いた。
「ヴィクトリア、その様子だと相当精神的にきたようだね?」
国王陛下が執務室にニコニコしながら入ってきた。
「陛下、楽しんでいらっしゃいます?」
もちろんといわんばかりの笑顔を見せた。
「公爵に頼まれたからとはいえ、ローズマリーさんに嫌われるのはこたえるわ…。彼女のこと好きだもの。」
陛下は肩を落としている王妃の肩を労るようにポンポンと優しく撫でた。
「公爵は公爵なりに娘であるローズマリー嬢を心配してるんだよ。傷痕が残ってしまっては、レオナルドに嫌われるのではないかと…。」
「レオナルドがローズマリーさんを嫌うわけないじゃない。試したとはいえ…罪悪感でいっぱいだわ…。」
王妃はため息しかついていなかった。
「公爵に手紙を。」
「わかっているわ。公爵もご自身で試したら良かったですのに…。」
王妃はペンと紙を用意してサラサラと書き出した。
「公爵はこれ以上、ローズマリー嬢に嫌われたくないんだろう。」
陛下はフッと軽く笑うと、王妃は私もよ!と言わんばかりに陛下を睨みつけた。




