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悲しそうに微笑むローズマリー。
そんな顔はさせたくないのに……。
「どんなことがあっても、俺は破棄にもしないし解消もしない。変な噂からローズマリーを守るから、そんな顔をしないでくれ。」
「…レオナルド様。」
「医者を呼んでくる。」
レオナルドは悔しさのあまり、その場にいることができなくて、医者を呼ぶためにローズマリーの側から離れた。
部屋を出てすぐに壁に八つ当たりをしてしまった。
「…あんな顔をさせたいわけじゃない。」
傷も順調に治りつつあるが、痕は必ず残ると。鎖骨から胸にかけて…ドレスを着ると嫌でもさらけ出てしまう部分だ。
安静にしていないと、また傷口が開いてしまうので、今は寝るか読書をするだけ。
仕事も溜まっているが、レオナルドが仕事をさせてはくれない。
「どうしたものかしら…。」
傷痕があると人はどうしても色々と勘ぐってしまう。事情を知っているならまだしも、知らない者はあることないことを噂するだろう。真実よりも嘘の方が噂はひろまりやすい。
この傷を利用して、王家を誹謗する者もあらわれるだろう。
だから王妃の言うことはわかる。
彼女も守りたいものがあるから。
私はただの貴族令嬢なのだから…。
「夕食を持ってきたぞ。」
レオナルドがワゴンを押しながら、ベッド付近に置かれたテーブルに食事をセッティングする。二人分を。
城の使用人ではなく、食事ぐらいは俺が面倒をみる!と言って、一緒に食事をするようになった。
「レオナルド様、ありがとうございます。私は大丈夫ですので、陛下と王妃様と一緒に…」
「父と母から許可は得ている!それとも、俺と一緒が嫌?」
「嫌ではありませんが…。」
ならいいよな!
と満面の笑みで答えるレオナルドに、ローズマリーは弱い。
「食事しながら聞いて欲しいんだけど…」
「何ですか?」
レオナルドはパンをちぎりながら
「イザベラは裁判にかけられて幽閉になる手筈だ。ノワール男爵はこの件に責任を感じて爵位を返上して平民として暮らす予定だ。ノワール男爵夫人は、イザベラとは縁を切りたいとまで言っていた。」
「まぁ、仕方がないことですわ。ですが一度、イザベラさんとよく話し合わなければなりませんわね。」
ローズマリーは一口水を飲んだ。
「イザベラは今、正気じゃなくて…あまり行かせたくないのだが…。俺も行きたくないし。」
ローズマリーはニコリと微笑み、レオナルドの頬を平手打ちをした。
バチンと音がして、レオナルドはただ呆然とした。
「やはり貴方はバカ王子のままですか?レオナルド様を責めるような言い方になりますが、このような事になったのは、レオナルド様がイザベラさんと話し合うのを怠ったからですわ。そして、イザベラさんを煽るような物の言い方をした私も悪いです。」
ローズマリーは続けた。
「彼女が正気を失ったまま幽閉しても、周りのせいにするだけで何の意味もありませんわ。イザベラさんには自分のした事の愚かさを、そして罪の重さをわからせてあげるために、私達はイザベラさんと話し合わなければなりません。」
ローズマリーは真っ直ぐとレオナルドを見て、レオナルドは小さく頷いた。




