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俺の名前は、ジャック。
苗字は捨てた。
7年前の10歳までは貴族だった。
没落しかけていた伯爵家の嫡子だった。
裕福ではなかったが、使用人は数名おり領地もあった。
周りの人達も、領地の人達も優しく穏やかな生活をしていた。
貴族の嫡子としての必要最低限のマナーは両親から教わった。
だが、勉強等は家庭教師を雇う余裕もなく、家の書庫にあるものを読み、わからない所は両親に聞いた。
両親は仲がよく、いつも笑顔で幸せそうだった。
だが、それが崩れだしたのが7年前。
父親がとある商人から話を持ちかけられた。
「ある侯爵様の所有の鉱山で、鉱物が採れたふりを伯爵様にお願いしたいんですが……。」
父親も最初は不思議に思って断っていたが、ブルース侯爵が直々に訪れ話をもちかけた。
「伯爵には、採れたふりをしてくれるだけでいい。貴族以外の平民にも夢と裕福さを分け与えたい。もちろん、契約者には鉱物が摂れる場所を提供はするよ。ただ、安い買い物ではないから、採れると宣伝しなければいけなくてね。協力してくれないか?もちろん、報酬をだすよ?」
父親は平民にも裕福になれるチャンスがあるときいて、ブルース侯爵の優しさに感銘して協力をしてしまった。
それが間違いだった。
「ブルース侯爵が捕まった?!」
商人から聞いて、父親はまずいと思ったのか、母親にいきなり離縁を申し出た。
「あなた、どうして?」
「ジャックを連れて、逃げなさい。実家に帰ることは難しいだろうから、これを売ってどこか別の場所で暮らしなさい。」
父親は報酬として鉱山でとれた宝石をいくつか渡したのだった。
「私は直に捕まる。クロフォード公爵家が動いている。大事になるだろう。早く荷物をまとめて逃げるんだ。」
母親は俺の手を握り、その日のうちに伯爵家を出た。
伯爵家の使用人と逃げたので、その実家の近くに家を借り、母親は慣れない仕事を始めた。
数日後に詐欺罪で父親が捕まり国外追放だと、元使用人からきいた。
あっという間の出来事で、何が何だか分からなかった。
母親が仕事に行っている間は、家の事を元使用人に聞きながら行っていた。
そんな時、ある一人の少女と出会った。
「おにぃちゃん、これおとしたよ?」
薄緑色の大きな瞳がとてもきれいで身なりはあまり良くなかったけれど可愛らしい女の子だ。
「…ありがとう。」
それから、買い物などで外に出ると必ずと言っていいほどその少女に出会う。
「イザベラ、また追い出されたの?」
「うん。だからあそぼー?」
と買い物から帰り夕食の支度するまでイザベラと遊ぶ日が続いていた。
それから数年が経ち、遊ぶとは言わないけれどたまに話はする仲になっていた。
そんな時に、事件が起きてしまった。




