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レオナルドは朝から学園の入り口で一人の人物を待っていた。
「イザベラ…嬢!」
イザベラの薄緑色の大きな瞳はレオナルドの存在を捉え立ち止まった。
「レオ様、おはようございます。」
イザベラはにこやかに挨拶をした。
「あぁ、おはよう。話があるから、こっちに来てほしい。」
話す内容はイザベラも分かっていたので、動こうとはしなかった。
「別れるつもりはありません。何度言ったらわかるんですか?」
イザベラは笑顔で応えるが、その笑顔がレオナルドには不気味に感じた。
「イザベラ嬢…。ごめん。ローズマリーとの婚約が破棄になったとしても、俺は君を選ばない。これだけは断言できる。」
レオナルドは申し訳なさそうな表情でイザベラを見て、頭を下げた。
学園の入り口なので他の生徒もこの様子を見ていた。
ヒソヒソと他の生徒が何か言うのもわかる。
王子に頭を下げさせているのだから。
なんて気分がいいのかしら?
イザベラは王子であるレオナルドが頭を下げたことで、優越感に浸っていた。
「あらあら、王子であるレオナルド様に頭を下げさせて優越感に浸るだなんて…子どもてすわね。」
カツっとヒールの音を鳴らし、イザベラの背後にローズマリーが現れた。
「なっ!」
イザベラは驚き、
レオナルドは、ローズマリーの声を聞いて頭を上げた。
「レオナルド様、王子なのですから、謝罪はしても、簡単に頭は下げてはダメですわよ?」
「ローズマリー、何故ここに?」
レオナルドもイザベラも何で?という顔をしている。
「用があって訪れましたら、レオナルド様が頭を下げているから驚きましたわ。王子が頭を下げてお願いと謝罪をしているのに……器が小さいですわね。あぁ、まだ子どもでしたわね。」
イザベラはイラッとした。
ことあるごとに子どもと言われるので、余計にイライラが募る。
「元はといえば、貴女のせいでしょー!!」
「違いますわ。私ではなく、イザベラさんとレオナルド様のせいですわよ。」
そう、こんなことになったのは、イザベラがレオナルドに甘えまくり散財させたから。もちろん、レオナルドもイザベラの甘えを何も疑問に思わず散財して国王に借金している。
「レオナルド様の心を取り戻したかったら、まず自分が変わりなさい。」
イザベラは何も言い返すことができなかった。
その様子を見てローズマリーは動き出した。
「私の使用人を勝手に呼び出さないでいただきたいわ。」
ローズマリーはイザベラの横を通るときに、イザベラにしか聞こえない声で呟いた。
イザベラがぎくりとしてローズマリーの方を見ると、レオナルドが嬉しそうな顔でローズマリーをエスコートしていた。
その様子がまるで、二人が一緒にいることが当たり前のようなお似合いカップルだった。
「…何なのよ。」
自分がエスコートされていた時よりも遥かに嬉しそうな顔でローズマリーをエスコートしているレオナルドを見て、イザベラは悔しそうな怒っているような顔をしていた。




