03
ローズマリーはレオナルドの部屋をじっくりと観察した。
テーブルの上には、お菓子とお茶が散乱し、ソファにも食べかすが落ちていた。
ローズマリーは部屋のなかで唯一きちんと整えられている綺麗そうなベッドに腰かけた。
「座る場所がなかったので。ベッドが一番綺麗ですから。」
「そんなことより、婚約ってどういう…!」
「あら、私も不本意ですわ。よりにもよって王子である貴方と婚約だなんて。陛下に頼まれて致し方無くお受けしたまで。自分だけが不本意だと思わないでくださいませ。」
ローズマリーはあからさまに嫌ですという態度をとっていた。
「俺の意見も聞かずに話を進めて…いくら不本意とはいえ…。」
「文句がおありでしたら、ご自分の今までなさってきたことを振りかえって反省したらいかがですか?」
「…どういうことだ。」
レオナルドはベッドに腰かけているローズマリーに詰め寄った。
「王子としての資質が足りないが故に恋人であるイザベラさんとの仲が認めていただけないのですよ?レオナルド様…貴方はイザベラさんの傀儡なのですか?」
レオナルドはきょとんとした。
「自覚もないのですか…?」
ローズマリーは深いため息をついた。
「俺は、イザベラのことが好きだから、イザベラが喜ぶことをしたまでだ!」
ローズマリーは、すっと立ち上がり目の前にいるレオナルドの左頬を自分の右手で平手打ちをした。
結構な勢いで放心状態のレオナルドにもう一度平手打ちをした。
「黙れ、バカが。イザベラのために?バカバカしい。名前なんて必要ないわね、これからはバカ王子と呼ぶわ。大好きなイザベラのために数々の貢ぎ物をし、その貢ぎ物を購入するお金は、国民が一生懸命働いて納めた税金…それを私利私欲に使うなんてバカ以外何者でもないわ。だから、王子としての資質が疑われるのよ。本当にバカ。」
レオナルドは左頬をおさえながら顔を真っ赤にしていた。
「バカ王子ったらまるで、お猿さんみたいね。あら、でも、お猿さんの方が、賢いかしらね?」
「この俺を平手打ちをして、暴言を吐いてタダで済むと思ってるのか!不敬罪にあたいするぞっ!」
ローズマリーはクスクスと笑いながらたちあがり、扇子でレオナルドの顎をくいっともちあげた。
「黙れ、バカ王子。貴方のせいで素が出てしまっただけですわ。それに、タダですみますのよ?なんていっても…」
ローズマリーがニヤリと笑うと同時に閉まっていた扉がバンと開いた。
「レオナルドに何をしても不問と処す」
その声は国王で、国王と王妃がたたずんでいた。
「レオナルド、ローズマリーさんと婚約できるなんて喜ばしいことよ?二人で多くの時間を過ごし、お互いを知っていくことが大切です。」
王妃はにこりとしながら言い聞かせるように淡々と話した。
「父上、母上!ローズマリー嬢とは歳が離れていて…」
「年齢など関係ない。ローズマリー嬢以上に将来の王妃に相応しいご令嬢もいない。ローズマリー嬢、改めて息子をよろしくお願いします。」
国王と王妃は深々とローズマリーに頭を下げた。
ローズマリーはとても良い笑顔で
「もちろんですわ。こちらこそ、よろしくお願い致します。」
レオナルドはひとり蚊帳の外で、何が何だか分からなくなってしまっていた。