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「国王陛下と王妃様はお会いできません。お引き取りを。」
何度も食い下がったけれど、陛下の側近にそう言われた。
理由は聞いたけど、何も答えてくれなかった。
「では、騎士団長を呼んで頂けますか?」
側近は頷いて騎士団長を呼びに行った。
「…どちらかにもお会いできないなんて。」
ローズマリーは頭を抱えた。
公爵令嬢では会ってもらえないのか……
「ローズマリー嬢が言うなら、本当のことだな。嘘をつく理由がない。私と第1騎士団を貸そう。私と第1騎士団が証人となれば、誰も文句は言うまい。子ども達の安全が第1だ、早めに動こう。」
騎士団長のオーウェンス伯爵が力を貸してくれることになった。
自分の父親より年上で更にオーウェンス伯爵の息子も第1騎士団に所属している。
「こちらが、ブルース侯爵の資料になります。そして、これが署名です。」
オーウェンス伯爵は資料をじっくりと見ていた。
「ふん、クロフォード公爵が報復に怯えるなど残念極まりないな。ローズマリー嬢、日にちを決めよう。現行犯で捕まえるのが1番いい。だが、ブルース侯爵が採掘場へルイ子息が監禁部屋にいる日を狙わねばならない。だが、ルイ子息はローズマリー嬢の婚約者。覚悟はできているか?」
「覚悟がなければ、ここにいませんわ。」
ローズマリーの瞳は真っ直ぐとオーウェンス伯爵を見ていた。
「それもそうだな。」
オーウェンス伯爵はフッと笑い、ローズマリーと話を続けるのだった。
「お待ちしておりました、ローズマリー様」
ブルース家の執事が深々と頭を下げた。
執事の後ろからルイが穏やかな笑顔でローズマリーを迎え入れた。
「ローズマリー!久しぶりだね?」
ルイはローズマリーを嬉しそうにぎゅーっと抱きしめた。
「あら?先日来たばかりですわよ?」
ローズマリーの表情は無だが、抱きしめられてることによってルイには見えていない。
「え?そうだっけ?」
本当に覚えていないようだ。
まぁ、いいか。と呟き、ローズマリーを自室へと案内する。
普段のルイは明るくて優しい。
いつもニコニコと笑っていたし、スキンシップも多かった。
今日は普段のルイに近い……
「ルイ、何か良いことでもあったの?」
ローズマリーはいつものように、ソファに座っているルイの隣に座る。
「あぁ!お父様に褒められたんだ!」
「ブルース侯爵に?」
ルイは終始嬉しそうに日々の出来事を話していく。
子どもたちの監禁のことは除いて。
ルイからお茶を渡されたが一口も飲む気にはなれなかった。
ただ、ルイの話を聞いて頷くしかなかった。
「あ!ローズマリーに見せたいものがあるんだ!」
と話の途中でいきなり言い始め、ローズマリーを引っ張るような形で連れて行く。
この道順は以前に執事に案内してもらった監禁部屋への道だった。
「ルイ、どこにつれてくの?」
分かってはいたが、聞かずにはいられなかった。
「僕の仕事部屋だよ!」
異変を感じた執事が慌てながらルイを止めるように目の前に立ちはだかる。
「ルイ様、どこへ行かれるのでしょうか?」
「仕事部屋にローズマリーを案内するから、暫くは近付かないでね、セバスチャン。」
ローズマリーはセバスチャンに分かるように小さく頷き、セバスチャンは理解したかのように、ルイの前から去った。
「ここが、僕の仕事部屋!」
バンと扉を開けると目の前には鎖で繋がれた子どもたちが数名いて、全員怯えていた。
やはり監禁部屋で先日見たときより子供の数が減っていた。
「……。」
ローズマリーが何も反応しないので、ルイはローズマリーの顔を覗き込んだ。
「すごいでしょ!この子達を教育して他国の貴族に売るんだ!今日もお父様は採掘場の帰りに孤児院に寄って他国の貴族に売るらしいよ!すごいでしょ!」
無邪気な笑顔をローズマリーに向けた。
ローズマリーは思わず、
バシッ
と類の頬を平手打ちした。
「これを良いことだと、すごいことだと本気で思っているの?」
ルイは平手打ちされたままな状態で呆然としている。
「……お父様に褒められたのが初めてだったから嬉しくて。それに子ども達も嬉しいに決まってる。だって、誰かに必要とされてるんだから。」
「…残念ね、ルイ。子ども達が怯えてるの見えないのね。」
ローズマリーが悲しそうに微笑むと同時にオーウェンス伯爵と第1騎士団が流れ込むように入ってきた。
騎士団の数名がルイを拘束する。ルイは抵抗することなくあっさりと捕まった。
ただ、どうして?何故?という顔をローズマリーに向けているのだった。




