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7年前の出来事編です。
ーー7年前
「お父様、少しお話があるのですが…。」
14歳になったばかりのローズマリーがアドルフの執務室に足を運んだ。
執務室に足を運ぶことはあまりない為、アドルフも驚いていた。
「話とは?」
アドルフは膨大な量の仕事に追われていた。
書類を片手にみながら聞いてきた。
「はい、私の婚約者のことですが…」
「ブルース侯爵家の子息、ルイのことか?確かローズマリーと同い年だったな。」
アドルフは手を止めて、ローズマリーの方を見た。
「はい、最近何だか様子がおかしいのです。話しかけるとびくついてて、何かを隠しているような…。あの噂のせいかもしれないですが…。」
ブルース侯爵は鉱物か採れる土地を高価格で貸し出しをしてるが、価値ない物しか採れないと噂されている。
そんな噂が流れ始めてから、ルイの様子がおかしくなった。いつもニコニコと笑っていて優しかったルイが、あまり笑わなくなり、話をしていても上の空になることが多かった。
「あくまで、噂だろう?ローズマリーが気にするようなことではない。ただ調子が悪いだけだろ。」
アドルフはそう言うと、また書類に目をやりペンを走らせた。
ローズマリーは、アドルフの様子を見て、執務室をあとにした。
「証拠を集めないとダメね。」
山ばかりのブルース侯爵領地。
麓には小さな町があるが、あまり活気がない。
侯爵家の領地にしては寂しすぎる…。
鉱物が採るので経済的には豊かなのだろうけど…
「ルイ!」
ルイと呼ばれた柔らかそうな栗色の髪の少年は声のする方に振り向いた。
「…ローズマリー。どうしたの?」
ローズマリーを見てあからさまにホッとしたような顔をした。
「今日は約束した日よ?鉱山に連れて行ってくれるって。」
証拠を集めるために、ルイにただ単に鉱山に行きたいとだけ何度もお願いして、ようやく了承を得たのだ。
「…あぁ、そうだったよね。でも僕じゃなくて、父さんが案内してくれるみたいだから…。」
「ルイは行かないの?」
「…うん。子どもたちの世話があるから…。」
ルイは、顔を少しだけ伏せた。
子どもたちの世話?とローズマリーが聞き返すと、孤児の子どもたちを一時的に侯爵邸で預かっている。預かっている子たちは、貴族や商人の養子になることが決まっている子たちだと。
ローズマリーは話だけを聞くといい話に聞こえるが、何故だが納得できなかった。
「クロフォード公爵家ご令嬢、お久しぶりですね。」
ローズマリーの背後から声が聞こえたので振り返った。
「あら、お久しぶりですわね。ブルース侯爵。今日は鉱山を案内していただけるみたいで、光栄ですわ。」
「いやいや、こちらこそ興味を持ってくれて嬉しいよ。ルイ、ローズマリー嬢を案内してくるから、子どもたちの世話を頼んだぞ。」
ルイは、黙って頷いた。
ローズマリーはその姿に違和感しかなかった。
なにかに怯えてるような感じがしたのだった…。




