20
「久しぶりだな。陛下に殿下の婚約者にとお願いされた以来だな。」
ローズマリーの父親であるアドルフ。
アドルフはローズマリーに優しく微笑んだ。
「そうですわね、クロフォード公爵。」
ローズマリーは視線も合わせず答える。
「ローズマリーさん、元気にしてた?」
アドルフの隣にいる公爵夫人・レイチェルが問いかけても、ローズマリーは何も話さなかった。
「ローズマリー、母であるレイチェルに返事をしないか!」
アドルフは飲んでいたお茶のカップを音を立てながら置いた。
「確かに父親である公爵と結婚したのだから母親ではあるけれど、血の繋がりはないでしょ?ね、公爵夫人?」
レイチェルはビクリと肩を震わせた。
「私の母親はもう亡くなっていますから。ただ、母親違いの双子の弟妹は気掛りですわ。」
ローズマリーは持っていた扇子を開いて扇ぎだした。
早く終わらせたいのがひしひしと伝わってくる。
「カトレア様が亡くなったのは病気で…」
レイチェルは消え入りそうな声で話をしたが、
「そんなことは分かっていますわ。7年前、あなた方二人は、公爵・公爵夫人として…そして父親・母親としての信頼を一切無くしたことをご自覚下さい。」
ローズマリーの紅い瞳が瞬時に冷たくなった。
「再婚が悪いとかではありません。むしろ、歓迎してましたわ。私が公爵夫人をお義母様と呼んでいたのをお忘れですか?私は見事に貴方方に裏切られましたわ。」
ローズマリーは扇いでいた扇子をパチンと閉じた。
「お帰りください。私が公爵邸に行くときは、年の離れた双子の弟と妹に会うときだけです。」
それだけを二人に告げるとローズマリーは立ち上がり応接室から出ようとした。
「ローズマリー!」
アドルフが立ち上がりローズマリーを呼び止めた。
「何でしょう?」
アドルフは一瞬顔を背けたが、ローズマリーを見つめ直した。
「あの時は、済まなかった…。」
「今更、謝るのですか?もう、遅いですわよ。7年経った今謝る意味がわかりません。」
ローズマリーはそのまま二人に背を向けて扉にいるセバスチャンに、お客様のお帰りですと告げて応接室をあとにした。
「何をしてるんですか、レオナルド様。」
応接室の扉の近くにレオナルドが申し訳なさそうに立っていた。
「いや、その…。」
バツが悪そうな顔のレオナルドに、ローズマリーはただただ呆れた。
「どうせ聞いていたのでしょう?詳しく話しますから、執務室に戻りますよ。」
ローズマリーは半ば呆れた状態で隣にいるレオナルドを見つめていた。




