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「お手をどうぞ…イザベラ嬢」
イザベラは差し出された手にそっと自分の手を重ねた。
王立学園の制服姿のレオナルド。
ピンクのパステルカラーのAラインドレスに真珠のお花の形の髪飾りをつけたイザベラ。
創立パーティーが開かれる学園の大広間では、ドレスアップをした令嬢と一部の子息。
学園の制服を着た一部の子息と一般クラスの生徒達が集まっていた。
昼間の立食形式のパーティーになるので軽食やお菓子が壁際のテーブルに用意されている。
大広間の壇上には来賓の席が設けられているが、まだ誰も座ってない。
「まだ来賓の方がいないようですね?」
イザベラは早くパーティーが始まって欲しかった。レオナルドとの仲を来賓に見せるために…。そう、レオナルドの恋人は私だということを。
「あぁ、少し遅いな。イザベラ、少し見てくる。」
「え?レオ様?」
レオナルドはイザベラの手を離し大広間を出て、来賓の控え室に向かった。
「なんなのよ…」
自分を優先しないレオナルドにイザベラは苛立ちを隠せなかった。
「説明をお願い致しますわ。」
来賓の控室から漏れる声に、レオナルドは聞き覚えがあった。
レオナルドは思わず扉を開けた。
「ローズマリー嬢!」
来賓はローズマリー嬢だったのか。
「あら、レオナルド様。貴方は、制服ですのね。感心致しますわ。我が国の王子であるレオナルド様が制服で参加しているのに、制服ではなくドレスアップしている生徒達の説明をお願い致します。フェルト侯爵…いえ、フェルト学長。」
眼鏡をかけ、きちっとしたスーツに身を包んでいるフェルト学長がいた。
「ローズマリー様…それは、その…」
「規則・第156条。学園内で行われる、式典・行事・パーティーは必ず制服を着用すること。」
ローズマリーは何も見ずに規則を読み上げ、フェルト学長は目を泳がせていた。
「ローズマリー嬢?学長?」
レオナルドはローズマリーが言いたいことがわかった。
何故、ドレスアップを許可しているのかと。
「この規則は、貴族クラスと一般クラスの差別を無くすため、平等だということを表すために出来た規則。お金がかかるドレスなど一般クラスの生徒は用意が難しいからこそ出来た規則では?」
フェルト学長は何も言えなかった。
「ローズマリー嬢、ドレスアップしてくる生徒がいるのを知って止めることができなかった俺が悪い。申し訳ない。」
レオナルドはローズマリーに向かって頭を下げた。
「レオナルド様、お顔をおあげください。後程、言い訳をお伺いしますわ。それでフェルト学長、如何なさいます?」
ローズマリーは目が泳いでるフェルト学長をじっと見つめた。
「ローズマリー様、申し訳ございません。ドレスアップをした一部の生徒は今から帰宅するように話してきます。」
「そうしてください。」
ローズマリーは当然だと言わんばかりの態度だった。
「ローズマリー嬢…。」
ローズマリーはレオナルドの方を向いたが、表情は無だった。
「レオナルド様が規則を守られたことは感心致しますが、ピンク色のドレスを着たイザベラさんをエスコートしていたのは如何なものかと…。」
レオナルドは見られていたのか…という表情をしていた。
「…申し訳ない。」
レオナルドはその一言だけ呟いた。
「言い訳をなさらないのですか?」
「ドレスアップしたイザベラをエスコートしたのは事実だし、止めなかったのも事実だから…。」
ローズマリーはため息をついたが、怒ってはいないようだ。
「自分が悪かった所を認め反省している様なので、私からは言うことはありません。」
いつもならここで、バカ王子と言われるのだが、レオナルドは拍子抜けした。
「他の来賓の方々に説明しなくてはいけないので私の婚約者であるレオナルド様、一緒に来てくださいますか?学園の生徒である貴方がいればより理解していただけるので。」
ローズマリーから頼まれることがほとんどなかったので、レオナルドは少し新鮮で何だか嬉しくなった。
「俺は王子だから、きっと説明したら分かってもらえるはずだ!」
「はいはい、バカ王子。行きますわよ。」
バカ王子と呼ばれても、嬉しさのほうが勝っていた。
この嬉しさは一体何なのだろう……?
レオナルドは不思議に思いながらも、ローズマリーの後についていった。




