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ミステリ作家の異世界日記――小説を書こう、異世界で  作者: 黒井影絵
第10章 勇者バトルロイヤル

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073――乱戦!バトルロイヤル(3)

 ボーナスステージの開催と概略の説明をすると、沈んでいた連中の士気は見るからに上昇する。


 予想通りだ。


「要するに君たちは、襲いかかる敵群をひたすら迎え撃てばいい。撃墜数に応じて点数が付けられるという簡単なゲームだ。ただし、前回までのランキング上位者にはハンディキャップとしてマイナス補正が掛かっている。チームリーダーは部下の点稼ぎを優先するのが賢明だろう。それと、このステージではプレイヤー同士の攻撃は当たらないようになっている」

 俺のアドバイスに、各チームのリーダーは重々しく頷いた。

 彼らも一応は、点が伸び悩んでいる部下のモチベーション低下には頭を悩ませていたらしい。

「点は敵の強さに応じて付けられる。強い敵を倒せば高得点を得られるが、為損じると当然反撃を喰らう。数と質のどちらを優先するかは君たちの判断次第だ」


 このステージ関しては詳しい説明は不要だろう。

 もっとも、作ったのはデンだ。

 楽な労力で美味しい思いはさせないんだろうな。


 俺はステージの開始を宣言する。


「3……2……1……ボーナスステージ・スタート!!」



 選手達が続々とステージに転送されて行き、直ぐ様トップランカー達は迎撃する場所の確保に奔走する……。


「はい、ボーナスステージ始まりました。実況は引き続きまして、テル・ムーサがお送りします。解説のカイセットさん、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「最終ステージ前の箸休めも兼ねた敗者復活戦のような趣のステージですが、これをどう見ますか?カイセットさん」

「このステージではプレイヤーのキルに関しては、それ自体が出来ないように設定されているとのこと。内容的に敵対的魔獣がどのような出方をするのか不明な以上、同士討ちは決して得策ではないのですが……さて、どうでるか、ですね」

「そうですねぇ、ちょっと出場選手のクセが強い傾向がありますが……」

「さて、選手のエントリーが全て終わったようですが、ここから各チームがどこを担当するかですが……えっ?……おっとぉ?エントリーナンバー1番オチュード選手率いるお騒がせ傭兵団が最前線に設置されている拠点を占拠して、他チームと揉めてます!何をやってるんだー?」

「……本当に何を考えてるんだ?奴らこれ以上憎悪(ヘイト)を溜めてどうする、バカか?……いや、失礼」

「あ、いえ、私も同感ですが……彼らには学習能力が無いのでしょうか?」

「それは否定できませんね……それにしても、まさかとは思いますが、彼らだけで魔物を倒すつもりなんですかね?流石に彼らの力量では無理だと思うのですが……」

「ええ、そうですよねぇ。あ、そう言ってる間にも第一ウェーブがやってきました。ジェリの集団がプレイヤーが守る拠点目掛けて迫ります!手持ちの資料によると、ウェーブは全部で三十まであって、十ウェーブ毎にボスとボーナスキャラが出現するという構成になってます。オチュード傭兵団は難なく銃火器で掃射して得点を独占しております!他チームの選手はこの様を苦々しく睨んでいる!」

「これはひどい。良くここまで他のプレイヤーの精神を逆撫で出来るなと逆に感心します。大方、第二ステージで即退場したエミリ選手のリカバリが目的なんでしょうけど、次のステージの展開を考え……ないんでしょうなぁ……」

「あまりにも刹那的!宵越しのマナーなど知るかと言わんばかりの独善プレイ!彼らの暴走を止める者はいないのかー!」

「ただ、ここまでのステージ構成から考えるに、彼らの戦力だけで持つとは思えないんですよね……」

「ですよねー……そろそろ、第九ウェーブが終わり、最初のボスが出現します!最初のボスは……謎のミステリアス勇者!戦士オッズーーー!」


 スクリーンの中では疾走する数台の車輪付きのゴレムが現れ、その先頭のゴレムの上に乗って前髪君ことオッズが登場した。

 彼はそこから飛び降り、異常に素早い動きで銃弾を掻い潜り、オチュード傭兵団の拠点に接近する。

「彼はカイセットさんの相棒との事ですが、今日の仕上がりはどうでしょうか?」

「そうですねぇ……彼は元々、抜群の戦闘センスの持ち主なんですが……」

「どうされましたか?何か問題でも?」

「あ……いえ……ここ最近、随分動きが俊敏になって……少し違和感が……あんなに生き生きしてる所は今まで見たことがないので……戸惑ってます」

 カイセットは首をひねっている。

「龍王国の環境が肌に合ったんでしょうか?」

「そうなんでしょうなぁ……」

「さぁ、オッズさんですが、ゴレムの支援を受けて拠点の城壁を飛び越えて、乗り込んだ!オチュード傭兵団は乱戦状態だーー!!」


『何なんだコイツ!!!』

『うわっ、つえぇぇ……ギャーー!!!』

『ひぃぃぃ――』

『ま、待て!オッズ殿!!ははは話せば分かる――うわぁあああ!!』


「傭兵団は大混乱!そして当たり前ように他のプレイヤーは静観しております!!」

「……当然でしょうなぁ」


『こんガキャ――!!くたばりやがれぇぇぇ――!!』


「おおっと!エミリ選手、得意のマシンガン掃射でオッズさんを拠点の外に追いやった――!!」

「流石にいくら彼でも重火器には勝てませんね。設定で耐久力を上げてあるんでしょうけど、無敵ではないでしょうから」


『死ね!死ね!!あたしは勝ち上がって全てを掻っ攫ってやるんだよっ!邪魔すんな!!』


「エミリ選手、鬼の形相で乱射しております!」


『聖女だぁー?アイドルだぁー??全部、あたしがミンチにしてやんよ!!あは、あはははっ!!なーにが“世界で一番かわいい”だ!!あのイノとか言う小娘!絶対ずたずたにしたるっ!!ぎゃはははは!!』


「うわぁ……」

「エミリ選手、銃乱射しながらの犯行予告!!これは、危険だー!!」

「どうやら、彼女は強い武器を渡してはいけないタイプの人だったようです」

「このまま、彼女がこのボス戦を制するのかー?……おわっ?!突然、傭兵団が占拠している拠点に複数の爆発が起きたー?!」


『きゃぁ――!!』


「エミリ選手、爆風で吹っ飛んだーーー何が起きたー?!」

「複数の魔法と砲弾が着弾したようです。方向からすると後方……あの暴言が他のプレイヤーの逆鱗に触れたのでしょう」

「高所から落ちてダメージを受けたエミリ選手に追い打ちでゴレムの突進が!!撥ねられて、ふっとんだエミリ選手退場ーー!!」

『エミリー――!!!』

『よっしゃぁぁぁーー!!やったぁーー!!』

「エミリ選手の退場にショックを受けるオチュード選手とは裏腹に、後方の他プレイヤーの拠点のあちこちからは歓声があがっております!!」

「まぁ、当然でしょうね……」

「逆上したオチュード選手はオッズさんに切り掛かっていったー!その隙に後方から他のプレイヤーが傭兵団の拠点に雪崩れ込んで、次々にならず者たちを拠点から放り投げているー!!」

「もう、ぐだぐだです」

「しかし、オチュード対オッズの対決は相打ち!両者リングアウト!!オッズさんの蓄積したダメージは大きかったかー?」

「傭兵団の彼らは……一体何がしたいんですかね……?」

「リーダーを失った傭兵団はあっさり撤退、最先端の拠点は複数のチームが一時的に共闘する模様です!」

「共通の敵、獅子身中の虫によって結果的に彼らの連帯が強まったようですね。しかし、先ほどゴレムが出てきた事から、耐久度の高い敵の出現頻度が増しそうです」

「何とか混沌のボス戦を乗り越えた次の十一ウェーブ、現れたのは兵隊アリの群れ!高防御と物量戦の合わせ技か!」

「これは嫌らしいですね。銃火器を始めとした飛び道具との相性はあまり良くありません」

「しかし、流石、高レベルの魔族チームが加わっているからか、マギアや魔道具を駆使して次々に殲滅していくー!」

「難易度は確実に上昇してますが、堅実に仕留めてますね、手堅く次のボスまで進めそうです」



「さぁ、やってまりました、二十ウェーブ目。次のボスは誰かー――現れたのは、魔大陸から龍王ガーラ様にリクルートされた期待の新星!テイマー・バン君です!このボス戦、どう見ますか?カイセットさん」

「事前情報だと、彼は戦闘には不慣れとの事ですが……一体どういう攻撃をしかけてくるのでしょうか。というより、彼が乗っているアレはまさか……」

「おおっとぉ?バン君は謎の巨大生物に乗っての登場です!四階建ての塔くらいの大きさの花のようですが……アレは何ですか?」

「ああ、間違いありません。アレは、植物型の魔物ラフレシアです。絶対に出先で遭遇したくない魔物の一つですね」

「強力なのですか?」

「強さはそうでもありませんが、高レベルの個体だと、状態異常攻撃のバリエーションが非常に多く、倒すのが困難な魔物です。遭遇したら、とにかく戦わずに逃げた方がいい相手です」

「そういう魔物を、この逃げられない状況で出す……」

「ええ、このゲームの主催者は間違いなく鬼畜です……」


 テルさんとカイセットは非道な魔物の出現に絶句している。

 俺は横目でデンを見た。

「大丈夫ですよ。バンさんの耐久値は最低レベルに設定してますから、攻撃が一発でも当たったら即ウェーブクリアになります」

 そうかー、一応ゲームバランスに配慮してたんだー……って、おい、本当に大丈夫か?

 俺がスクリーンに目を戻すと、ラフレシアは周囲に状態異常を起こす虹色の花粉を撒き散らして、フィールドは一気に地獄のような様相になった。


「毒、猛毒、麻痺、気絶、眠り、混乱、暗闇、沈黙、防御力低下、攻撃力低下、素早さ低下、知力低下、魔力低下、鈍足、乾燥、恐慌、吐き気、めまい、腹痛、頭痛、腰痛、疲労、肩こり、口内炎、咳、湿疹、笑い、落涙、不運、鼻水、吐血、下痢、憂鬱、衰弱、弱気、痙攣、発熱、幻覚、錯乱、倦怠、無気力、退行、忘却、空腹、スキル封印、リキャスト遅延、吃音、難聴、貧血、魅了、偏執、呪い、石化、酩酊、悔恨、肌荒れ、悪臭、かゆみ、寄生、悪夢、発狂、悪寒、冷え性、発汗、怒り、脱毛……うーん、これはひどい」


 ゲンマは画面に次々にポップアップする状態異常の種類を一つ一つ読み上げては呆れている。

 バンはさらにテイムしてお気に入りに登録していた魔物を繰り出し、進軍を命じた。

『第一陣!出陣です!!』

 横一列に並んだサボテン型の魔物スピネーがマラカスを振りながら華麗なステップを踏みつつ状態異常に苦しむプレイヤーに襲いかかる。

 スピネーは決して強い魔物ではないが、この阿鼻叫喚の状況で素早さに定評のある魔物の対処は厳しすぎた。

「思っていたより、皆さん苦労してますねー」

 デンは呑気にコメントするが……こんな地獄みたいな戦場、誰だって嫌だろう……何の罰ゲームだ。


 俺たちがドン引きしてると、バンは第二陣のアルラウネとハマドリュアスを呼び出した。

 アルラウネは攻撃魔法が使える花の魔物で、ハマドリュアスは結界と回復魔法が使える樹木の精霊で、どちらも見た目は美少女だ。


 しかし、バンは戦闘は苦手なのに、多勢に無勢の戦場でちゃんと采配できるのか?と疑問を感じているとデンがヘッドセットから、「あっ、バンさん、左から魔法攻撃来ます」とか「そろそろ正面の戦士集団の対処、お願いします」と指示を出していた。

 なるほど。こうして実地訓練を積ませる段取りか。


 プレイヤー側は態勢を整えるのにも苦労して防戦するのが精一杯という状況で、あの騎獣に乗った三人娘が拠点から飛び出した。


『バン様――!』

『バン君……!』

『バンお兄ちゃーん!』


 三人は真剣な表情で騎獣に乗ったまま横並びで立っている。

 お、ついに告白タイムか?


『あっ、クックロココ様、クーデルラさん、ヤン・デルシアちゃん、お久しぶりです!騎獣の調子はどうですか?』

 バンはラフレシアの上からペコペコお辞儀をしている。

『あっ、はい。お陰様で、すこぶる元気で……じゃない!私たちは貴方をお迎えに参りました!』

『バン君……帰ろう!』

『バンお兄ちゃーん、こんな怖い所、早く出ようよー、危ないよー』

『へっ?……何でですか?僕はもうザマイ・マサラ王国から戦力外通知を受けて追放された身なので、今更帰っても……』

 三人の呼びかけにバンは怪訝そうに首を傾げる。

『そんな事、後でどうとでも……』

『それに……僕はこの国で仕えるべき尊い御方に出会ってしまいました……だから、もう魔大陸には戻れま……』


『す、好きなんです――!!ずっとお慕いしてました!!』

 クックロココは顔を真っ赤にしてバンの言葉を告白で遮った。

『うー……抜け駆け……私も……ずっと、好きだった……バン君のこと……!』

 クーデルラも意を決したのか俯き加減で告白する。

『二人ともズルーい!わ、私だって!バンお兄ちゃんのこと大好きなんだからぁ!』

 ヤン・デルシアも腕をブンブン振りながら必死に大声で告白した。


 三人娘の告白が出揃って、当人のバンは暫しフリーズし、硬直が解けてから出た一言。


『えぇぇー……?』


 何故か疑問形の驚きだった。

『いやいや、それはおかしいでしょう』

 しかも、乙女三人の告白に、まさかのダメ出し。


『だって、お三方とも言ってましたよね?“勘違いしないでねっ”って……それも、事ある毎に。だから、何があっても勘違いしないようにしなきゃと、これまで、ずっと心がけて接客してました!』


 バンの言葉を聞いた三人娘とスクリーンの前の俺たちは無言になった――素直かよ。


「……それは……ツンデレなのでは……」

 デンはみんなが思った事を代弁するような独り言を口に出して呟いたが……


『やだなー、デンさん。ツンデレなんてラノベとか、フィクションの中だけの話ですよー。現実にはありえないですって!それは流石に女の子に夢見すぎですよー。彼女達は飽く迄も只の元お得意様です!』


 お、おう……そうだな……。

 このバンという人物は、基本的に地に足のついた常識人なんだよな……。


 三人娘は青い顔のまま、降り注ぐラフレシアの花粉を浴びて足元から石になりつつある。


『あのー、デンさん……僕、そろそろ抜けたいんですけど……夜にガーラ様とお食事する約束があるので……』

 バンは罪のない笑顔で繰り出した発言によって、少女たちの心は追い打ちのクリティカルヒットで打ち砕かれ、“ガビーン”という擬音がピッタリな表情のまま固まった。

「あっ、そうでしたね。予定より長引いちゃってすみません。後はキマリスさんに引き継ぎますんで、いいですよー。お疲れ様でしたー」

『はいっ!それじゃ、お先に失礼しまーす。では皆さんも、どうか、ご武運を!』


 バンは満面の笑みで魔物たちとともにフィールドから転移して消え去った。


 後に残されたのは顔に縦線入れて白目を剥いている三人娘の石像と複数の状態異常を抱えて呻きながら横たわるプレイヤーたちだった。


「バン君……今日は、いよいよ姉さんに食べられるのかなー……?」

 ゲンマが意味深な事を呟いたが、俺はスルーした。

 龍族が言うとどっちの意味だか分からなくて怖いから止めろ。



 その後、運営の討議の結果、ゲームの進行を一時中断して、プレイヤー達の状態異常は一律で解除しておいた。


 心無い攻撃はある程度は止むを得ないが、流石にアレは心無いにも程がある。

 この程度の温情は運営としては最低限必要だろう。

 デンには一応もう少し一般人に配慮してくれと言ってはみたものの、了承はしたが納得はしてないようだ。

 うちの弟、変なところで頑固なんだよな……これ絶対今後もやらかすな……。


 以後のウェーブは恙無く進行し、ボスのキマリスもいい感じで暴れてくれたおかげで、どうにか盛りあがりを維持したままボーナスステージを終えてくれた。



「何とか第三ステージに持ってこれたな……」


 今の所、概ね予定通りの進行だ。

「そうですね。大人数参加型ダンジョンのβテストとしては現段階でも大成功です。いいデータが取れました」

 デンは満足げに微笑んでる。

「だが……本番は、これからだ」

「マジでやるの?今まででも十分酷いけど……」

 ゲンマは半ば呆れたように言っているが、この機に乗じてやらない意味がない。

 何より、奴らは身勝手な簒奪者だ。

 俺は邪神じゃないが、決して無限に優しい神では無い。

 制裁もなしに安易に許しを与えるものか。


 このイベント、はっきり言うと、ここまでは腕慣らし……チュートリアルといってもいい。


 本当の地獄はここからだ。

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