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ミステリ作家の異世界日記――小説を書こう、異世界で  作者: 黒井影絵
第10章 勇者バトルロイヤル

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067――龍王のお気に入り(3)

 モモちゃんによる鬼特訓(アイドルレッスン)によるテイマー育成計画は順調に進んでおり、イノも無事、テイマークラスを獲得した。

 年少組でもアン姫に続けとばかりにぷちテイマーのクラスを獲得する者がちらほら出てきたが、全員が獲得出来る感じではなさそうで、やはり生まれ持った素質が必要なのだろう。

 もっとも、このクラスがどういう意味があるのかは今の所未知数だ。


 それでも子供達にとってはダンスのレッスンは非常に楽しいレクリエーションらしく、今でも多くの子が参加している。


 で、現在この自治区にはキマリス、バン、イノの三人のテイマー研修生がマスターテイマーであるモモちゃんの指導を受けている。

 一口にテイマーといっても、その能力は一様でない個性があるようで、テイム対象との相性という要素があった。


 キマリスは魔族というだけあって、悪魔っぽい攻撃的な魔獣を使役した時にバフが掛かる等のボーナスがある反面、それ以外のアピスやグノムなどの温厚な魔物との相性は極めて悪かった。


 バンはその反対に攻撃的な魔獣と相性が悪く、自然と調和している魔物、特に植物系の魔物と相性が良かった。

 その為、アピス、グノム、アルボラをあっという間に懐柔して手足のように使役している。


 イノは……そのどちらでもなく、ただただ、ひたすら見た目が可愛い魔物しかテイムしようとしなかった。

「可愛くないのはイヤですぅ〜!」

 そういって首をプルプル振っている彼女の周りにはキラキラした粉を撒き散らしている妖精が飛び交い、頭や肩の上には猫型使い魔のケトシーがボヨンボヨン跳ねている。

 ……なんだかな……らしいっちゃ、らしいが。


「皆さん、ちゃんと確実に前進してますよ!この調子で頑張りましょう!」

 モモちゃんは指導は厳しいが、教え子の努力と進歩を適切に評価する良い先生だ。



 俺は領事館の応接間で、ウィアとヒズと同席している。

 ヒズはチームアルスターでの過酷な任務をくぐり抜けたからか、一皮向けた精悍な男に成長していた。

「……話があると聞きましたが?」

 ヒズは呼び出された理由を考えて疑心暗鬼になっているのか、少し怯えているようだ。

「あ、悪い話じゃないんだ。頼みがあってな……ここにいるウィアさんが王都で事業しているのは前に話したな?最近、本格的に忙しくて人手が足りないそうなんだ。それで不都合がなければ、応援に行ってきて欲しいんだが……どうだ?」

 俺の言葉に彼は複雑な表情を浮かべた。

「……俺は……お役には立てなかったのでしょうか……」

「いやいや、そうじゃない。本当にウィアさんが困ってるんだ」

「先生の言うとおりです。今、王都での出版業の競争は激化してる。しかも、元官僚と裏社会の連中が組んで露骨な営業妨害してきている。だから、君のような営業の経験があって、ならず者の襲撃に対処できる腕っ節の強い男に来て貰ったら非常に助かるんだ」

 ヒズは野良ダンジョンでの武者修行の結果、それなりに強化され、現在ではその辺の冒険者なんか目じゃないくらい強くなっている。

「……そう言う話でしたら……でも……」

 彼は俯いて暗い顔で呟くように葛藤を吐露する。

「でも……俺は弱い人間です……特に目の前にある欲望を拒む事が出来ません……王都のような誘惑の多い華やかな場所に戻ったら……また、以前のような身勝手な人間に戻りそうで……怖いんです……」

 彼の迷いはもっともな心情だ。


「ヒズさん。私は部下の増長を許す程甘い男じゃないですよ。貴方が思い上がる傾向を見せたら、すぐにそれを指摘して正します。私はしっかり見てますからね!」

 ウィアはヒズの肩をバシバシ叩きながらそう言った。

「そこまで仰ってくれるなら……よろしくお願いします……」

 迷いつつもヒズは了承して頭を下げる。

「ええ、こちらこそ!でも、楽ができるとは思わないでくださいね!本当に目が回るほど忙しいんですから!はははははっ!」

 何とか上手く纏まりそうだな。良かった良かった。


「まぁ、万が一、ウィアさんの手に負えなくなったら……その時はクーフリンに迎えに行ってもらうから。余計な心配はしないで仕事に専念してくれ」

 俺がそう一言添えると、彼の緩みかけた顔から表情が抜け落ちて緊張が走った。

「……肝に命じます」

 彼は自分自身に刻み込むように返答した。


 ・・――◆◇◆――・・


 ここは、王都の中心地にある龍族が住まう宮殿ドラコパラチウム。

 その宮殿の機密保持された密室で、文字通り龍大陸を牛耳っている龍王ガーラとシステムの御使であるエラト・ムーサは、お茶会と言う名の秘密会議をしている。


「しかし……バン殿がカンナヅキ先生の“ファン”であったとはな!」

「ええ……奇遇……と言っていいんでしょうか……流石に上位存在の見えざる意図を感じるのですが……」

「それにしても危なかった……少々強引ではあったが、速攻で引見して正解だったな!」

「少々どころではなかったですけど……正直、側から見て、龍王たる者として、その距離感はない!、と内心焦りましたが……超結果オーライでしたね」

「なーにを言っておるのか!欲しいと思ったら全力で取りに行くのが龍族の流儀だ!遠慮などせぬわ!」

「……その流儀とやらで宝物庫のイチゴを食べ尽くされましたが?」

「あああああ……もう!――思い出しても腹がたつぅっ!あの万年寝太郎が!!」

 ガーラは黒曜石で出来たテーブルに拳を叩きつける。


 ・・――◇――・・


 魔大陸からの来訪者が来始めた頃、龍王国の宮廷は未曾有の事態の対応に追われていた。

 そんなタイミングでアースガード自治区で収穫された大量のイチゴが転送ストレージを通じて納品され、その多くは宮廷料理人の手でジャムやコンポートに加工した後に宝物庫に備蓄された。

 ガーラとエラトはお茶の時間に出されるそれらを使った菓子を楽しみに政務に勤しんでいた。


 しかし……ここで事件が発生する。


 宝物庫に貯蔵されていたイチゴと名のつく物を赤龍族のサブルムが食べ尽くしてしまったのだ。


 サブルムは赤龍族の一体で、その性質は怠惰だ。

 普段は“龍の宝物庫”に引きこもっていて、惰眠を貪りつつ使用済み魔石を再生させるのが主な仕事だ。

 龍族としては珍しい事に好戦的ではないどころか、何をするにも面倒臭がっているので一見無害な存在に見えるが、反面財宝に対する執着は異常に強く、簒奪者には徹底して苛虐な攻撃を与え、それは相手の息の根が止まるまで執拗に続けられる。


 しかし、この龍大陸で龍族の財宝を奪おうとする恐れ知らずな愚か者は存在せず、彼は大好きなキラキラした財宝達に囲まれて平和な日々を過ごしていた。


 だから宮廷にいる誰もが、姉である龍王ガーラですら、この呑気な赤龍を人畜無害な少し大きめの置物と考えていた。


 ガーラが大好きなイチゴを宝物庫に収納した事は、それが彼女にとって如何に大事な物であるかを示している。

 だが、彼女の誤算はそこが“龍の”宝物庫であった事だ。


 ・・――◇――・・


 必死に怒りを堪えて震えるガーラの前で、いつも通りに澄ました顔で巨体を横たえる赤龍サブルム。

『……だから、ごめんって言ってるじゃん』

 彼の口調は悪びれもせず、ガーラは苛立ちを募らせる。

「全て食べ尽くす事はなかったのではないか?」

 彼女は凄まじい努力で怒りを理性で押さえつけている。

 その精神力は流石で、メシア十二使徒の一人に相応しいモノだ。


『魔石の再生はお腹が空くんだよ』

 サブルムは億劫そうに言い返す。

 彼は怠惰ではあるが、少し負けず嫌いでもある。

 しかし、負けず嫌いならガーラも負けてはいない。むしろ勝っている。

「魔石の再生は余剰次元の真空エネルギーをスキルで変換しているだけで、本体やアバターが摂取した栄養は無関係だが?」

 サブルムはガーラの理路整然とした指摘に返答せずに黙り込んだまま数十秒が経過した。


『……気持ちの問題だよ』

 彼はボソリと呟く。

『頑張ってスキルを使ったら、その分甘い物が食べたくなるってもんでしょ……』

「はぁぁああぁぁぁぁ――!!!」

 ガーラは我慢の限界に到達した。

「私は!なぜ!全部っ!!全てを!食べたのだっ!と、言っている!!!」

 瞳を真っ赤に燃やした龍王ガーラの怒号にサブルムの側仕えたちは平伏したまま青い顔で震えている。

 しかし、当の本人であるサブルムは涼しい顔で嘯いた。


『……また作ればいいじゃん』


 この言い草で彼女は完全にブチ切れた。


「あああああ!!もう!!言われんでも、大量に生産するわ!!国民全員に行き渡るくらい量産したるわ!!でも、お前にだけは一個も分けてやらんからなっっっ!!バーカ!バーカ!!」

 普段の威厳ある龍王像をかなぐり捨てた涙目の彼女は大股で宝物庫を立ち去った。


 辺りは静寂を取り戻し、サブルムはボソッと呟く。

『大人気ないなぁ……』


 こうして、ガーラはイチゴの大量生産を決意して、その遠望の足がかりとしてテイマー育成に望みをかけた……彼女がバンと出会ったのはその矢先の事だったのだ。


 ・・――◆◇◆――・・


 俺は龍王ガーラへの差し入れに何のお菓子を作ろうか考えながら食堂に向かった。

 領事館食堂の厨房に入ると、カウンターで食事をしていたバンに声をかけられる。

「どうしたんですか、神無月先生?」

「ああ、ガーラ様に差し入れするお菓子を作ろうかなと思ったんだ」

 俺がカウンター越しにそういうと、彼はハッとした顔をした後、思いつめた様子で言った。

「あの……先生、僕も何か……ガーラ様の為に何か作れないでしょうか……?」

「料理の経験はあるのか?」

「いえ……自炊は全くした事がないです……でも、どうしてもガーラ様へ日頃の感謝の念をお届けしたいんです!」

 俺の隣では早速料理人のソースが生き生きした様子で道具を棚から取り出して並べている。

「ソースさん、何かいいアイデアはありますか?」

「そうですね……小さな焼き菓子などはどうでしょうか?保存が効いて、政務の合間に片手で食べられる物なら、きっと喜ばれるでしょう」

 ふむふむ。だったらクッキーなんか良いんじゃないかな。

「そっか。じゃあ、少し難易度が高いけど、アイスボックスクッキーでも作ってみるか。それでバン君が俺とソースの手伝いをして、その後自分だけで作ってみるってのはどうだ?」

「はいっ!頑張ります!!」

 バンは戦うのが苦手だが、自分なりに今何が出来るか真摯に考えて行動している。

 彼の龍王ガーラへの忠誠心は揺るぎないようだ。


 ・・――◆◇◆――・・


 さて、龍王ガーラが埋もれる程のイチゴを夢見ている頃、バンが初めてのお菓子作りに苦戦している頃。

 エルス共和国では、ナナヒ一行が列強諸国を自由に行動するための研修を受けていた。

 研修期間の講習会の合間に、カイセットは独自に情報収集して、今後の計画を立てる。

 彼の見立てでは、列強諸国は庶民が住む分には居心地はいいが、王侯貴族やそれに匹敵するような存在に成り上がるのは非常に困難な環境と見做した。

 その理由は、種族格差とメシア論の二つの壁だ。

 この世界の種族の壁は元々高いが、支配種族の強さは魔族の比ではない。

 メシア論と基本憲章がなかったら、この大陸の人間は今でも奴隷種族以下の扱いであってもおかしくなかったろう。

 それでも、この列強諸国のシステムは魔大陸のそれよりも高度な為、人間のポテンシャル自体は魔大陸の者より遥かに上だ。

 もっとも、人間を庇護する支配種族の存在あるので、ことさらに強さを求める人間は少数派にすぎない。


 ナナヒは研修に専念している。

 カイセットの予想とは裏腹に、ナナヒは優秀な成績で研修をこなしている。

 担当官の話では、彼は列強諸国のエリート階層の登竜門である官僚試験に合格する程度には優秀とのことだ。


 オッズはいつも通りぼんやりしているが、大陸を跨いで空気感が変わったせいか、その目には少し輝きが出てきた。


 エミリはこの地の有力者にさりげなく秋波を送っているが、全く相手にされていない。

 彼女の見た目は美しいが、それ以上の美貌を持つエルス族には劣っている。

 しかもエルス族は傲慢な気質であり、基本的に他種族を見下している。

 ましてや彼女はホムンクルスである。

 エルス族でも人間でもないエミリの存在はこの国では異物でしかなかった。

 彼女は徹底的に袖にされ続けて苛立ちを募らせている。


 研修期間は恙無く終了して、一行は晴れて転移門を通じて龍王国へ移動した。


 ・・――◇――・・


 一行はエモートから龍王国スパピアへ。そして、スパピアから王都に転移する。


 王都の華やかさは帝都をも上回り、世界随一の大都市の威光に一行は目を奪われる。


 彼らは真っ先に宮殿を訪れ、その場で門前払いを喰らい追い返された。


 魔大陸からの使者が殺到した上に、彼らが龍王に無礼を重ねた結果、魔大陸からの使者は一律で接見禁止となっている、門番に聞いてカイセットは頭を抱えた。


「転移先があの場所でさえなければ、馬鹿どもに先んじられたのに……」

 しかし、聖女救出が大義名分である以上、転移先を変更する訳にはいかなかったので致し方ない事だろう。

 彼は仕方なく、情報収集と根回しに専念することになった。


 カイセットは何とか宮廷に接触しようとするが、この龍大陸に一切のコネがない為に、そのガードは固く苦戦していた。

 また、ナナヒも彼なりに聖女を探しているようだが、慣れない土地での慣れない聞き取り調査に四苦八苦している。


 彼らの行動は行き詰まりつつあった。


 ・・――◇――・・


「八方塞がりか……」

 カイセットは屋台で買ってきた串揚げを摘みながら溜息を吐く。

 この王都の物価は高い上に、情報屋には足元を見られ大金を吹っ掛けられ続けている。

 彼は大都市特有の手痛い洗礼にすっかり辟易していた。


 今後の振る舞いを考え直すべきかと思案していると、安宿の扉が勢いよく開いた。

「朗報だ!カイセット殿!」

 ナナヒが和かに笑っているのを見て、カイセットは警戒心で顔が強張った。

「どうかしたのか?」

「我々は手がかりを得たぞ。先ほど、公園で吟遊詩人が聖女の物語を吟じていたのだ。魔剣の王子と聖剣の聖女の物語を。彼らに詳しい話を聞くと、何と、アースガードなる場所にその王子と聖女が実際に住まっているらしい。同じ聖女であり信心深いミノリ様の事だ、きっと彼の地へ巡礼しているに違いない!我々もそこに向かうぞ!」


 カイセットはこいつは何を言ってるんだ、と一瞬呆れたが、アースガードと聞いて閃いた。

 彼は、先日街中で入手した“ふりーぺーぱー”なる無料の紙を手に取る。

 そこに書かれている記事には――龍王国の辺境に“祝福された地”と呼ばれるアースガード自治区が誕生して、巨大ダンジョンを中心に発展を遂げている。その地は龍王ガーラ様の弟である友人龍ゲンマ様と彼の友人である魔剣の王子ことエンダー・ル・フィンの二人が領主として優れた叡智の数々を用いて治めている――とある。

「王弟である彼に直接会い……何とか交渉して……龍王への伝手を作る……不可能ではないな……」

 現状、オッズがダンジョンや日雇い労働で日銭を稼いでくれているとはいえ、手持ちの路銀は目減りしており、これ以上王都に留まり続ける事は賢明ではないと感じていた所だった。

「ここで燻っているよりかは遥かにマシか……」


 彼は情報屋に依頼して、アースガード自治区に関する情報を集めた。


 ・・――◆◇◆――・・


 一方その頃、メガロクオートで研修を終えたリツ一行はクオート族の先導で中立地帯に赴き、ダンジョンでレベリングをしていた。


 リツはこの中立地帯のダンジョンを大いに気に入る。


 ここは、彼が心に思い描いていた理想の高効率のダンジョンだ。

 難易度は高いが、支配種族であるクオート族と彼らが使役するゴレムが居れば何とかなるレベルだ。

 何より、クリアするのに長期戦を見越した食料調達や野営等の前準備が特に必要なく、敵の殲滅に専念すれば良い所が特に気に入ったようだ。

 彼は夢中になってダンジョンに潜入して経験値を稼ぎ続ける。


 だが、そんな楽しい時は長続きしなかった。


 ・・――◇――・・


「ダンジョン使用権?」

「はい。このダンジョンは列強諸国が共同統治している人気のダンジョンで、その利用には各国に割り振られた数を上限として年毎に定められております。我が国の今月割り当てられた使用権は、そろそろ尽きようとしております」


 ミュラの言葉にリツは悲しげな表情を見せた。

 この素晴らしいダンジョンをこれ以上利用できないとは……と。


「このダンジョンの使用権を多く持っているのはどのような方なのですか?」

 リツは何とかその者に交渉出来ないかと思い、聞いてみた。

「最も多くの使用権を持っているのは龍王国で、次点がエルス共和国、冒険者ギルド、地底帝国……と続いております。ただ使用権に余裕を持たれている方となると……赤龍族のゲンマ様くらいでしょうか?」


 ――友人龍ゲンマ。


 その名前は研修の講義中に何度か聞いている。

 彼のこれまでの諸行は神話や伝説の類のように聞こえ、リツは現実味を感じていなかったが、ここに来てその存在が彼の目の前に立ちふさがった。


「その方は今どこに居られるのでしょうか?」

 目標を見定めた彼は穏やかな微笑みを浮かべて尋ねた。


 ・・――◆◇◆――・・


 私の目線は再び宮殿の龍王ガーラとエラトに戻る。


「ゲンマ様からの報告によると、バン殿の育成は極めて順調との事で……良かったですね。アピスやグノムのテイムと使役も問題なく行なっているようです」

「うむ!流石は私のテイマーだ!!」

「それと……アースガードのカンナヅキ先生から、お菓子の差し入れが届いておりまして……」

「何!早く出さぬか!ええい!お茶の準備を!早く!!」

 彼女は待機していたメイド達に命じ、彼女らは慌ただしく動いた。

「落ち着いてください、ガーラ様……本日はクッキーが届けられております」

 クリスタルの盆に盛られて出されたのは、白とピンクのチェック模様の四角いクッキーで、ホワイトチョコとイチゴが練り込まれた生地が使われている。

 ガーラは一枚摘んで口に入れる。

「おお、見た目も美しいし、濃厚で、甘酸っぱくて、サクサクして美味しいのだ!」

「レシピも届けられているので、後で宮廷料理人にも作らせましょう……それと、一緒にバン殿からも差し入れが来ております」

「何!?バン殿も、お菓子を?!」

「はい、こちらになります」

 エラトが差し出したもう一つの盆には、中央にイチゴの絵柄が入った丸いクッキーが盛られていた。

 ヘタの部分等の緑は抹茶を練りこんだ生地を使い、イチゴの種の部分には黒ごまを載せている。

「イチゴのクッキー!!これをバン殿が作ったのか!」

「ええ、伝言も添えられてまして……『沢山のイチゴを心待ちにしていると聞き、ガーラ様の事を思いながら作りました。今はこれしか出来ないけど、一日も早く一人前のテイマーになって、本物の美味しいイチゴをお届けしたい』との事です」

「くぅ〜〜〜〜」

 頬を赤らめたガーラは胸に手を当てて体をくの字に折った。

「……私のテイマーが可愛すぎる……」

「良かったですね。正直、寵愛が一方的で重すぎるのではないかと心配でしたが……何故か釣り合ってるようで何よりです。不可解な宇宙の神秘って感じです」

「うむ!相思相愛なのだ!」


 ご満悦な表情で無邪気にクッキーを頬張る龍王ガーラにエラトは少し引き気味だ。


 バンは今後も成長をしていき、長年に渡って龍王の心の支えとなり、彼女の一番のお気に入りの眷属として歴史に名を残すことになるのだ。


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