062――英雄補完計画
自称聖女のミノリは“転生召喚”なる聞いたことがない儀式によって、地球から召喚された者であるらしい。
ホムンクルスを依り代として使う方法は、父である六院皆伝一行がここにやってきたのと同じ手段であるが、違うのは異世界で死んだ人間の魂を半ば強制的に再利用する点だろうか。
システムの関与なしで行われていることから、六院家に伝わるマレビト伝説とも何か関係してそうな話であるが……。
「なんで、“自称”って付けますかねぇ……一応、聖女業は真面目にやってたんですが……」
ミノリは納得いかないという風に首をひねっている。
「じゃあ、聖女様〜とか呼ばれたいのか?」
「いや〜〜、それは勘弁してほしいっす……中の人はただの庶民なんで、むず痒くて仕方ないっす」
彼女の前世は東京在住の広告代理店勤務のバリキャリだったようだ。
「まー、広告代理店っつっても、大手じゃないしー。孫請けの企業の労基法無視の単なる社畜っすよ。やりがい搾取でパワハラ訴訟上等なブラック企業所属の使い捨ての鉄砲玉ってなもんです」
見た目は姫カットの紺色ロングヘアの清楚系美少女から繰り出される年季の入った社畜語録は破壊力抜群だ。
「うちの自治区は一応、ホワイト経営を目指しているつもりだ」
「それはスンバラシイ!いよっ!大統領!……あ、領主様でしたっけ?へっへっへっ……よろしゅう頼んまっせ!」
ミノリは揉み手をしながら戯けてワザとらしいゴマを擦ってきた。
彼女は気さくな人柄で、あっという間にアースガード自治区に馴染み、特にナス子とは同じオタク女子ということもあって、すぐに仲良くなった。
今は、とりあえずアルバイトとして農業試験場にある錬金術研究所で主に雑用をしている。
「てっきり、治療院に入ると思ってたんだがな」
「聖女業は十年間ずっとやってたんで、いい加減飽きました!そろそろ新しいことに挑戦したいなーって。今は冒険者ってのをやってみたいっす!いやー、やっと私の物語始まったなって感じですよ!」
人間力が高すぎるバイタリティー溢れる求職者からすると、異世界の聖女という肩書きも職歴の一つに過ぎないようだ。
そんな有能な彼女から聞き取りした、施政者側から見た魔大陸事情は、現在魔大陸に潜入調査中のオクルスから送られてくる定期報告を立体的に補完する貴重な情報となった。
□
オクルスから送られてくる報告で、イマイチ実感が掴めない点は、魔大陸でのシステムの扱いだった。
「そもそも、魔大陸のシステムは旧バージョンなんですよね」
システムから派遣されている管理者であるテルさんはそう解説する。
「バージョンの違いなんてあるのか?」
俺は疑問を口にした。
「システムは旧支配者がパレスの御方の協力で開発した後、私のお母様である女神ムネーモシュネが引き継ぎ保守運営する形で長年安定した運営を行なっておりました。しかし旧支配者が龍大陸を撤退したタイミングで、システムの機能が見直され、龍族の要望による大規模アップデートを経て現在のシステムになりました。魔大陸に移住した後の旧支配者の方は、その改修前にお母様との保守契約を打ち切り、他の上位存在の力を借りて旧システムをそのまま運用していたようです」
レガシーなんて盲腸みたいな機能が残ってる事からもグダグダ感があったが、そういう事情だったんだな。
「具体的には、どういう差異があるんだ?」
「旧バージョンを一口で説明すると、とにかく“人間に優しくない”ということに尽きるんです」
元々、システムは旧支配者が自分たちのために作り上げた物なので、彼らから見て奴隷種族である人間に無駄な力を与える気はないのは自明なことだ。
現在の支配種族が人間を保護育成しているのはメシア論が前提の話なのだから、メシアを信じていない旧支配者からすると、人間という家畜に牙を与えるようなことはする筈がない。
「魔大陸のシステムがバージョンアップ前と同じであれば、その機能は予想出来ます」
テルさんがいう旧バージョンとの違いは以下の通りだ。
・ステータスの閲覧が端末を通してのみ。
・職業クラスの変更に儀式が必要。
・人間種のレベル上限が低く設定されている。
・そのため、人間種が転職できるクラスが少ない。
・使用可能なスキルや魔法が威力の低いものに限られている。
「それはまた難儀だなぁ……」
俺は魔大陸の人間種に同情した。
「しかも、こっちと違って、効率のいいダンジョンが魔族に抑えられている上に封印されてますから、レベリングもままならない魔大陸の人間は弱々ですよー」
ミノリはコーヒーを飲みながら補足する。
魔族が奴隷待遇でも人間を生かさず殺さずで保護しているなら、その扱いでも問題はなかったのだろうが、新興魔族というならず者集団が出てきた以上、転生召喚というガチャ儀式でレア勇者にワンチャン期待するしかない状況は理解した。
「ただ、クオート族が進出以降、傘下となった国々を人類解放連盟という同盟で纏め上げてます。彼らはクオート族が新システムで管理しているので、これまでのように魔族たちに一方的にやられっぱなしにはならない筈です」
そして、冒険者ギルドも進出して、この流れを後押ししている。
じゃあ、龍族の支援は特に必要ないんじゃないか?
「そうはいっても、上級魔族の存在は侮れないですよ。彼らには未知の上位存在との関わりが多くあります。それに、間違いなく、あのヤンデレビッチが背後で何か企んでます。備えあって憂いなしです」
そういえばそうだったな……。
レイアに関しては未だ謎な要素が多く、実に悩ましい。
彼女に対抗するためにも、クーフリンの英雄クラス獲得を急がなければならない。
□
システムのエージェントでもあり、チーム・アルスターのリーダー、クーフリンを英雄候補として設定してから、メンバーと相談しながら様々な試みが行われてきた。
設定画面から彼のステータスを見た上で、最適な試練という名のイベントを彼に課して、それをクリアさせる事でポイントを付与し、試練のレベルを上げていくシステムのようだ。
最初は簡単なお使いイベントでもポイントが増えたが、試練レベルが上がるにつれて、より難度の高いイベントでないとポイントが稼げなくなる。
現在、彼の試練レベルはLV3。
ここまで上げるのも、苦労した。
デンに依頼して、プリムムダンジョン下層の難易度を見直してもらい、平均的な野良ダンジョン並にして挑戦させてみた。
この攻略によって、多くのポイントと経験値を稼げたので、このままMAXまで行けるか?と期待したが、初見攻略以降は露骨にポイントが目減りした。
難易度を上げてみても、初見の時ほどのポイントは得られないので、安易で楽な攻略は無理だということだろう。
現在は彼には未踏の野良ダンジョンの捜索を試練イベントに設定して、自治区の周辺を探索させている。
これに関して、デンに何か考えがあるようで、研究室に籠って何か作業をしているが、一体何を企んでいるんだか……。
■
途中で切り上げることになったが、当初バカンスにはモモちゃんも来る予定だった。
しかし、思わぬ予定が入って見送りになってしまう。
発端はゲンマがデンに頼んで取り寄せたカラオケマシンが予想以上に村人達に刺さり、領事館の食堂や自治区の酒場でカラオケ大会が自然発生的に開催された。
その最中、ゲンマ付きメイドのイノが意外な才能を発揮した。
彼女の歌と踊りは自治区の住民を魅了するほど見事なものだったのだ。
誰にでも眠っている才能ってあるんだなー、と俺は淡白に思ったが、ここでモモちゃんの目がキラっと光った。
「これは……磨けば光る!!」
そして、モモちゃんはイノとゲンマを説得して、以後本格的なレッスンをイノに施した。
「はい!1、2、3、1、2、3……そこでターンして、笑顔!笑顔をキープ!!」
「ひ、ひぇぇ〜……」
発声練習、筋トレ、ダンスレッスン等、思ってたよりも本格的で厳しい内容だった。
モモちゃんはイノをアイドルデビューでもさせるのかな?
イノの自堕落な性格を考えたら、もう、そろそろ根を上げるだろうと、俺たちは予想していたが、ここで思わぬ流れが発生する。
■
「えぇぇー……龍王ガーラ様が?」
「うん。期待してるから、頑張ってねって!」
「……ふぇぇ……分かりましたぁ……」
ゲンマからの定期報告を聞いたガーラが、このモモちゃんのプロデュース活動を支持して、最優先事項にするように指示してきたのだ。
ゲンマの眷属となって能力の底上げされたとはいえ、いい加減で怠惰な性格はそのままなイノだったが、流石に龍王様の厳命には抗えない。
モモちゃんの鬼レッスンを止める為の退路は断たれてしまい軽く絶望している。
「しかし、何でそうなったんだ?」
あの龍王ガーラがアイドルオタだったとは思えんし。
「それが……姉さん、本当にここのイチゴを気に入ったようでね……」
「え?何でイチゴが?」
ガーラは自治区の農業試験場で作られたイチゴを大いに気に入って、大きな温室を建ててくれたのは記憶に新しい。
そして彼女は王都宮殿内の菜園でも、このイチゴを作れないかを部下に命じて試行錯誤させていたという。
しかし、あのイチゴを作るには、魔獣アピスの力を借りる必要があるという結論が出て試みは行き詰まる。
アピスを使役するにはテイマーのクラスがどうしても必要なのだ。
「現在、龍王国内でテイマーはモモちゃん一人でね。それで、何とか他の人にもテイマーのクラスを獲得できないかって悩んでるんだ」
「ほう」
確かに最近、王都から学者や庭師が研修に来てジュンとモモちゃんの師事を受けているが、テイマーのクラスを獲得できたとは聞かない。
テイマーへ転職するには特定の条件……特定のアイテムか、一定以上のパラメータが必要なのだろうか。
「シグレがゴブリンを特訓して忍者のクラスを獲得させたから、モモちゃんも誰かを特訓すれば、レアクラス獲得の条件が少しは分かるかなー、って」
「なるほどー」
そういうことなら、イノは成長のための良い機会じゃないのか。
優しすぎるゲンマの下だと中々こういう経験は出来ないからな。
「はい、そこ、ステップの後、ジャンプ!低い!あと五センチ高く!」
「ひ、ひぃ〜〜……む、むりですぅ〜〜」
「無理って言ってたら何時迄経っても出来ません!気合いで挑戦です!」
「きゅ〜〜!」
……にしても、ちょっと厳しすぎるな。
■
そんな二人の特訓は農業試験場で毎日行われ、通りかかる人は物珍しげに見物している。
「ほあー、大変ですなぁー」
「……うわぁ……明日、筋肉痛すごそう……」
ミノリとナス子も休憩所でお茶を飲みながら、のんびり眺めていた。
ふと気がつくと、レッスンの合間の休憩でモモちゃんはミノリを感情のない目でジッと見ている。
「ん……何か?」
怪訝に思ったミノリは首を傾げた。
「あ、すいません。昔、そういう髪型だったなーって、ちょっと思い出しただけで」
モモちゃんは慌てた風に笑って手を振っている。
ほう、昔のモモちゃんは黒髪ロングの美少女だったのか。
「それにしても、すごいっすねー、動きキレッキレッっすよ!もしかしてプロだったとか?」
「え……ええ……」
ミノリのゆるい合いの手にモモちゃんは微かに言い淀んで俺の方をチラッと見る。
「嫌なら無理して昔の話はしなくていいぞ……」
口には出さないが、モモちゃんの心の闇は深そうなので心配だ。
「あ!そういうんじゃないです!十代の頃、アイドルの卵だったんですよー」
へー、それは初耳だ。
確かに言われてみると歌も踊りも玄人並みだもんな。
「でも結局挫折しちゃいましたから……ただ単に好きってだけじゃ、難しいなって」
モモちゃんは、ポツリポツリと、俺が初めて聞く、少女だった頃の話をしてくれた。
◇
きっかけは、中学生の時に友達がオーディションを受けに行った付き添いで、その時スカウトされたんですよね。
歌も踊りも嫌いじゃなかったから、研修生としてのレッスンは厳しいけど楽しかったな。
同期の入れ替わりが激しい中、後少しで、デビューって所までは行ったのですよ。
……でも、あるトラブルが切っ掛けで、挫折しました。
当時、同期で仲が良かった子が、ある研修生に酷い嫌がらせを受けてたんです。
最初は軽い物だったんですが、次第にエスカレートして最終的に身の危険を感じるレベルになって……結局その子は夢を断念して故郷に帰ってしまいました。
しかも、他にもそういう被害を受けた人が沢山いて……私、頭にきて、その子に抗議したんです。その時は何か一言言わないと気が済まない気分だったから。
でも、彼女……笑ったんです。
負けた人間が何を言ってるんだって。
「私たちは敵同士。“みんな仲良し”でやっていくほど甘い世界じゃないのよ。誰かがスターになるなら、他は全員負け犬。私は成り上がる為なら手段を選ばない!」
「でも、やり方ってものがあるでしょう!こんな卑怯な手段で成り上がって、これから先も胸を張って生きていけるんですか!?」
「あんた、バカじゃないの?デビュー出来なかったら……一番じゃなかったら意味なんてない!だったら、手段を選んでなんかいられないでしょ!」
彼女は地獄の底から這い上がってきたような鋭い目で私をにらみつけました。
「アイドルになるためなら、一番になる為なら、どんな汚いことでもしてみせる!あんたたちみたいなバカには絶対に負けない!悪魔に魂を売ってでも、一人勝ちしてやる!」
彼女の気迫には人殺しも辞さない妄執を感じさせるものでした。
私はそれを見て、自分の中の情熱が…………一気に冷めるのを感じました。
彼女の言ってることは明らかに邪悪で間違ったものでしたが……それを聞いて怒りよりも先に……『ああ、自分はそこまでしてアイドルになりたくないな』ということに気がついて……心の底から冷めてしまったんです。
そして、研修生を辞めて、普通の女の子に戻りました。
心に開いた穴を抱えたまま……。
その後、高校を卒業した後、デザイン系の専門学校に入って、それなりに忙しい日々を過ごしていたんです。
新しい友達を作って、デザインの勉強をしたり、知り合いの地下アイドルの支援をしたり……イメチェンで髪を切って染めたのも、その頃からで、何とか昔を振り返らずに済んだんです。
そんなある日……テレビのニュースで、あの悪い子が自殺したことを知りました。
◇
「そいつ、結局デビューしたのか?」
「百舌川るみか――って憶えてないですか?結構話題になった筈ですが……」
モモちゃんが言った名前に憶えがある俺とナス子は「ああ……」と顔を顰めた。
人気アイドルだったが、政界財界を巻き込む一大スキャンダルで激しいバッシングに晒され、若くして自殺した娘だった。
スキャンダルの内容が不倫や薬物だったら、まだ再起の芽があったかもしれないが、児童売春の斡旋に関与していた事が明らかにされては、もはや表舞台に立つ事は不可能だったろう。
それに、モモちゃんの話通りなら、彼女は恨みを多く買いすぎた。
しかも今はSNSで過去の悪行が簡単に晒される時代、一度没落したら再起不能だろう。
「あのニュースを見て……全てが虚しくなったんです。あれだけ好き放題やっておいて一つ躓いただけで罪を償わずに自殺するのか……私やみんなは、こんな人に負けて夢を諦めたのか……と。この不条理がまかり通る世界に何の意味があるのかって」
彼女の表情は暗く、悲しげだった。
少なくとも――モモちゃんは何も悪くない。
ただひたすらに努力していただけなのに、たまたまそこにいた身勝手な悪意に全てを奪われただけだ。
「モモちゃん……」
俺は何とか慰めようと言葉を紡ごうとした……。
「でも!その後、先生のデビュー作を読んで、開眼して全てを悟ったんです!私、先生の小説を読むために生まれてきたんだーって!!」
そういって顔をあげた彼女は、瞳の中で星が輝いている、いつものモモちゃんだった。
お、おう……本当にブレないな、この娘。
黙って無表情で話を聞いていたミノリは、おもむろにモモちゃんの手を両手で包んで言った。
「分かる」
その場はしばらく沈黙に包まれた。
「ですよねー!やっぱり先生の小説って最高ですよねー!」
「いや、そこはまだ分からない」
違うのかよ。というか、俺の小説読めよ。
「いや、それは今読んでますって……アレ、いわゆる分厚い鈍器ってヤツじゃないっすか……読み終えるまで少し待ってくださいよ。そうじゃなくって、身勝手な人のせいで萎えたり苦労したりするのはすっごく分かります」
そこかよ。
広告代理店もクリエーター系だし。
上昇志向だけが強すぎるアレな人間には事欠かないのだろう。
「それにしても、辛い事思い出させて済まんな」
「あ、私もゴメンなさい。私が変な事聞いたせいだよね」
俺とミノリはモモちゃんに詫びを入れた。
「別にいいですよー。昔は昔ですし、今はすごく充実しているから何とも思ってないです。それに……本当は誰かに聞いて欲しかったのかな……みんなに聞いてもらえて、とっても嬉しいです」
さらなるトラウマと言う名の地雷を掘り起こしたかと心配したが、大丈夫かな。無理してない?モモちゃんがスッキリした顔でニコニコしているのが救いだろうか。
反面、地球での社会人経験がないナス子とイノは神妙な顔で何やら考え込んでいる。
□
ずっと研究室に閉じこもっていたデンは久しぶりに顔を出した。
謎の装置を手に持って。
「叡智の図書館にあるダンジョン資料で仕様を調べたところ、ダンジョンコアの部品に希少金属であるヒヒイロカネが使われているようなんですよ。だから、これを探知する装置を作ったら未踏ダンジョンの探索が捗るんじゃないかなーと考えて試作品を作ってみました」
そうは言っても、ダンジョンってそんな簡単に見つかるものかね?
とはいえ、せっかくなので、未踏ダンジョン探索中のチーム・アルスター率いるクーフリンに使い方を説明した後に装置を貸してみた。
いい結果が出るといいのだが……。
■
ミノリが魔大陸から持ってきた物には興味深いものが多数あり、その中には、この世界で出版された書物もあった。
その大多数はメガロクオートで出版された本を行商人を通じて富裕層向けに流通している物だが、少数ながら現地で作られた貴重な写本の類も含まれていた。
「クオート族は営業頑張ってるんだな」
「ええ、神無月先生が王都で発表した著作ですら辺境に伝わってますからね……それと、話は変わるんですが……」
お話しするか迷ったんですけど……と、ミノリは珍しく歯切れが悪い。
「どうした?」
「ええ……実は、魔大陸の王族や聖職者の間で、ある噂が流れていて……」
彼女曰く、
何でもこの世界に“邪神”が降臨したという噂が流れているらしい。
“夢見”のスキルを持った聖職者が、その邪神を幻視した所、そいつはとても残忍な性質で、人間を如何に残虐な方法で殺すかを常に考えているような悍ましい存在らしい。
今、魔大陸の支配者層はこの邪神と魔族が関わり合いになる事を一番恐れている。
そして、一部の国では、その邪神を討伐できないか真剣に検討しており、恐れ知らずの勇者がこれに名乗りを上げているとの事だ。
彼女がこの話をしたところ、微妙な空気が沈黙とともに流れた。
俺はその空気に耐えかねて口を開いた。
「へぇー、そんな奴が現れたんだー。それはどうにかしないとなー」
俺がそういうと、ミノリは俯いてピクピクした後、顔を上げ、俺に指を突きつけ、叫んだ。
「お前や――――――!!!」
………………。
これだけは言わせてほしい。
俺は断じて邪神などではない。
しかし、何故か俺の周囲のメンバーは、それを強く否定も肯定もせず、曖昧な笑みを浮かべるだけだった。




