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ミステリ作家の異世界日記――小説を書こう、異世界で  作者: 黒井影絵
第10章 勇者バトルロイヤル

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074――乱戦!バトルロイヤル(4)

 俺は荒野でスクリーンを見上げるプレイヤー達を見渡す。

 ダンジョン入りした時点では訳も分からず右往左往していた彼らも一角の戦士の顔をしている。


「これが最後のステージだ。持てる力の全てを尽くし悔いのない戦いをして欲しい。では、レギュレーションの説明をする」


 泣いても笑ってもこれが最終ステージだ。

 覚悟を決めてもらわないと困る。

 何故ならば――これまでとは比較にならないくらい過酷な戦いになる予定だからだ。


「基本的な内容は第一ステージと同様のモノだ。君たちは生き残りを賭けて戦ってもらう、ただし……」


 俺は一拍置いた。


「フレンドリーファイヤ――同士討ちの設定は有効になっている。たとえ同じチームメイト同士であっても殺生は可能だ」


 プレイヤー達は目を見開き、息を飲んだ。


「それと、ポイントだが……今までは、生き残った者に一律で点を与えていたが、このステージでは死亡したプレイヤーの持ち点の半分を倒したプレイヤーに、もう半分は没収して、その合計を終了時に生存していたプレイヤーの頭数で割って配布する」


 この情報は彼らの内面に大きな波紋を起こし、その反応は様々だった。

 冷や汗をかきながら抜け目なく辺りを見渡す者、青い顔で震えている者、必死に皮算用しつつ今後の身の振り方を考えている者……特にトップランクに位置しているチームリーダーの心情は決して穏やかでは無いだろう、日頃の行いが悪ければ尚の事……この最終ステージでこれまでの振る舞いの是非が問われる事になるのだ。


 絶望で愕然とするリーダーがいる一方で、人間領域の戦士達のまとめ役的存在のハンスと魔大陸チームのリーダーの一人である勇者カケル、それと魔族リーダーの一人プルフラスは互いに目配せして頷きあっている……どうやら、彼らの中で何らかの合意が無言で成されたようだ。


「3……2……1……最終ステージ、スタート!!」



 このステージは第一ステージに似ているが建物が多く、時刻は夜のようで空に月が浮かんでいる。


 開始早々、行われたのは……オチュード傭兵団狩り、だった。

 文字通りの集中砲火だ。


『くそぉぉぉ!!貴様らぁ!!!!』

『ちくしょぉぉぉぉ!!憶えてなさい!!』

『ひぃぃぃぃ――!!私は!無関係だー!!!』


 如何に叩き上げの傭兵とはいえ、先ほどアイコンタクトを交わした三方以外のプレイヤー達も加わっての集中攻撃に耐えられる筈がない。

 オチュード、エミリ、ナナヒの三人は配下の大半を置き去りにして逃亡し、取り残された者たちは激昂する。


『アイツ、俺たちを切り捨てやがったぁ!!!』

『許さんぞ!!絶対に!!許さんからな!!!』

『止めろ!止めてくれぇ!!俺はただ命令に従っただけなんだぁぁ!!!』


 魔族の魔術(マギア)によって投げ込まれた業火の中で無名のならず者の怨嗟の叫びが響き渡る。

 この遺恨はゲームが終わった後にも尾を引き、良くも悪くも、その後の生き様に爪痕を残す事だろう。


 

『所詮、協定などと生ぬるい甘い約束、意味の無い縛りを入れたのが、間違いだったのです』


 中央から離れた場所で、三人娘は三角形の陣形で向かい合って対峙していた。


『決着をつけましょう』

 クックロココは冷ややかな表情で剣を構える。

『同感……恋愛と友情は両立しない……そんな事は分かりきった事。最初からこうすれば良かった……』

 クーデルラも帽子を被り直し、詠唱を開始する。

『……バンお兄ちゃん……待ってって……すぐ迎えに行くから……』

 ヤン・デルシアは下を向いてブツブツ呟いている。


 少女の友情は過酷な現実を前に霧散したようだ。

 高得点所持プレイヤーである彼女達の周囲には漁夫の利を狙った男達が殺害の機会を待ちつつ身を隠している。


『【闘波解放・聖剣破斬】!!』

 クックロココは剣術スキルを使うと、彼女を中心に光る波動が周囲に広がる。

『《 アル・オービチェ 》』

 クーデルラは咄嗟に結界を貼って攻撃を防ぐが、隠蔽していたプレイヤーはまともにダメージを食らい、吹っ飛んでいった。

『げぇぇーー!!』

 この一撃だけで近づきすぎていた数人のプレイヤーが退場に追い込まれた。


『《 ウル・グラ 》!!』

 クーデルラも強めの氷魔法で応戦する。

 刃のような氷の塊複数がクックロココに襲い掛かるが、彼女は剣の一振りで跳ね返す。

 跳ね返された氷は四方に着弾し、そこで待機していたプレイヤー達は大ダメージを受けた上に氷漬けになって身動き出来なくなった。

 この二人の応戦を目の当たりにした、他のプレイヤー達は危険を悟ってゆっくりと後ずさりして撤退を始める。


『【闘波解放・聖剣連弾】!!』

『《 ウル・イグニス 》!!』


 しかし、続く二人の応戦はさらに熾烈で、周囲への無差別攻撃でさらに多くの命を刈り取った。

 クックロココの聖属性攻撃は氷漬けの戦士を容赦なく打ち砕き、クーデルラの高出力爆破魔法は隠蔽中の火事場泥棒を問答無用で吹き飛ばす。


『私に泣かされる前に、降参なさい!クーデルラさん!』

『冗談……そっちこそ、尻尾を巻いて逃げれば……?』


『お兄ちゃん……』

 死屍累々の中、火花を散らして睨み合う二人を尻目にヤン・デルシアはずっとブツブツ呟いている。



 カイセット情報によると、ランキング上位を維持している勇者カケルはトバチリンド公国出身の転生勇者らしい。

 同じく異世界から転生してきたサムライのアキラと共に、数多くの冒険をしてきた正統派の勇者だという。

 その深い絆で結ばれていた筈の二人も、今、睨み合っている。


『考えることは同じようだな……』

 カケルはニヤリと笑った。

『そのようでござるな……もっとも、こんな機会でないと、全力で戦うことは出来ないであろう』

『ああ……夢のようだ……どっちが上か――全力勝負だ!!』

『かかってこい――!!』

 二人は目を見開いた満面の笑顔で、お互いに斬りかかった。



 一方、同じ勇者でも、ザマイ・マサラ王国から来た勇者ハルトは逃げ惑っている。

 彼は人望が無い方のリーダーだったらしく、襲い掛かる仲間からの攻撃を必死に回避(かわ)している。


 そういうリーダーは彼だけではなく、二つある魔族チームの一つ、セアルも仲間割れによって態勢を崩していた。

 反面、もう一人の魔族リーダー、プルフラスは平常通り、冷静にチームを率いて中央を目指している。


「恐らく、セアルは新興魔族側でプルフラスは旧体制……それもマインド派でしょう」

 カイセットはそう解説したが……この程度の褒賞で崩れる忠誠心ってヤバく無いか?

 勇者にしても魔族にしても。


「この程度って……龍王国の価値基準は分かりませんが、魔大陸では、どれか一つでも国が買える程の価値はありますよ……支配体制が盤石な旧体制側はともかく、貧しい国のならず者もどきにとって裏切りの理由には十分すぎます」

 彼は呆れ気味に言っているが……どうやら動機付けのエサが少し過剰だったようだ。

 まぁ、初めての試みなのだから、仕方ない。

 足りないよりかは全然マシだろう。



 一方、三人娘達の死闘は佳境に入っていた。

 クックロココとクーデルラの二人は肩で息をして、周囲は爆撃でもされたように荒れ果てている。


『ま……まぁ、お、思っていたよりはやりますね……』

『……しぶとい』

『でも、MPはそろそろ底をついたのではなくって?降参するなら今のうちですのよ?』

『そっちこそ、HPが限界の筈……やせ我慢しすぎ……』

 二人が睨み合っている、その時――


『っ!!うっ!!』

『……いたっ!!』


 二人は不意に、首筋を抑えて跪いた。

『体が――!!』

『動かない……』

 ずっと、その場で立ち尽くしていた、ヤン・デルシアの姿が砂の像のように崩れ、その反対側の茂みから、吹き矢を構えた彼女が現れた。


『バンお兄ちゃんは私のモノ!!誰にも渡さないんだからぁ――!!!』

 彼女の瞳は妖しい輝きを放ち、その手にはナイフが握られていた。

『バンお兄ちゃんをお家に連れ帰って、沢山お薬飲ませて、地下室にずっと閉まっておくんだからぁ……ずーと、ずぅーっと二人だけで幸せに暮らすんだもん……邪魔者は絶対許さないんだからぁ!!』


 彼女は完全に常軌を逸してカラカラと笑っている。

 ……どうしてこうなった?


 メリバはちょっとなぁ……自分で書くのはいいけど、実際に見たいとも体験したいとも思えんなー。

「先生の作品、メリバとか生ぬるい物じゃないですよね?世界観もろとも人と舞台装置がぶっ壊れるのばっかりだったかと……」

 テルさんのツッコミを俺は右から左に聞き流した。


『だから!死んでよぉー!!姫様ー!、クーデルラちゃん!…………あれ?』

 猛毒によって蹲ったまま生き絶えると思われた二人は腕を組んで仁王立ちをしていた。

『へっ……何で?……効かない……の?』

 彼女は怯えて後ずさった。

『あなたとの付き合い、何年越しだと思ってるんですか?その裏表のある性格くらい把握してます!』

『……この程度の事、想定の範囲内……すでに耐性付与で対策済み……!』

 殺気で荒みきった顔の美少女二人に詰められたヤン・デルシアは怯えた小動物のようにブルブル震え、逃げようとして後ずさり、尻餅を付く。

『ご……ごめんなさぁーい!』

 彼女は手を合わせて謝るが、二人は無言で構えた。

『もう……許しません!』

『同じく……』

 ヤン・デルシアはアワアワ言いながら涙目で蹲っている。

 元友人である二人は同時に攻撃を放つ――が、それは彼女の背後に潜んでいた者を切り裂いた。

『ぐわぁーーー!!』

『……えっ……??』

『決着をつける前に、掃除が必要なようです』

『そうね……回復薬出して、さっき拾ったやつ。あなた一人じゃあいつら対処出来ないでしょ?』

 クーデルラはヤン・デルシアに催促する。

 彼女はため息を吐いた。

『あーあ……もう、上手くいかないなぁ……はい……』

 クーデルラは渡された瓶を眺めて内容を確認した後、二人は回復薬を飲み干した。

『ここで負けて帰るよりはマシ、でしょ……』

 三人の仲違いは共通の敵の前に一時休戦したようだ。



 例の勇者リツは今までと同様に中庸の立場を維持している。

 彼が何を考えているのか、いまだに謎だ。

 しかし、彼が部下を経由してアサシンのカイエンなる人物と接触している事は気になる要素だ。


 油断するのは禁物だろう。


「やっぱり、ジロー君にちょっかい出すつもりかなー?」

 あり得る話ではある。

 冒険者ギルド幹部からの魔大陸情報に基づいて推察するに、真の勇者であるジローの存在を疎ましく思っても不思議では無い。


「警戒はしておくべきだな……ところで、デン、現在のプレイヤーの生存者はどれくらいだ?」

「二百人を切りました。想定より減少のスピードが速いです」

 開始時に多く存在したチームも、褒賞に目が眩まずに結束を維持しているのは少数だった。


 特に魔大陸出身のチームは酷い有様だ。


 マトモに機能しているのはプルフラスとリツのチームくらいだ。

 大半はこの機会に過去からの因縁を晴らそうと好き勝手に乱戦している。


 高得点を保持しているオチュードはこの第三ステージで完全に狩られる側に回った。

 敵チームのみならず、逃亡の際に捨て石にして生き残った配下からも逃げ回っている。

 数の暴力で息の根を止められるのも時間の問題だ。


 正統派勇者と思われたカケルも盟友アキラとの無制限決闘の誘惑には勝てなかったようだ。

 配下達もその意を汲んで、二人の決闘を見守るように取り囲み、他のプレイヤーからの干渉からガードしている。


 三人娘は周辺の掃除をした後、再び決闘を再開して、大技を連発してはフィールドの地形を変形させまくっている。


 ザマイ・マサラ王国の勇者ハルトは、複数のチームメイトからの刃を受けて絶命した。

 その後、トドメを刺したチームメイトが次の標的となり、殺戮の連鎖が巻き起こって、収拾がつかなくなった。


「中々良いデータが取得できました……でも、自然な成り行きを“最後”まで見届けられないのは少し残念ですね」

 デンは惜しむように言うが……これは最初から決まっていた事だ。


「まぁ、冒険者ギルドも、新ダンジョンに興味を持っているから、このイベントがこれっきりって事はないだろう……さて、と」


 俺はスクリーンの中の乱戦と、画面上部にポップアップされた情報を見る。


「いよいよ……始まるか?」

 デンは頷いて、時間を確認する。

「ええ……既に移動を開始してます……」

 デンの意向を伝えてギリギリまで待って貰ったが、もう限界だろう。



 同士討ちを含む殺し合いによって、プレイヤーの数はついに百人程度になり、生存をかけた終盤戦はさらに熾烈な戦いへと発展する。


 勇者カケルとサムライ・アキラの決闘は僅差でカケルに軍配が上がった。


『全力は尽くした……悔いはない……お前……必ず優勝しろよ……』

 アキラはそう言い残して退場した。

 カケルは暫し勝利の余韻に浸ったが、すぐに配下に指令を出す。

『よし!中央を目指すぞ!!』

 彼は高揚した表情のまま、新たな戦いの場に向かおうとした。


 ……が、


 彼らの前に、今まで姿を見せなかったプレイヤーが、立ちはだかる。

 長身で質素なフード付きマントを被った、そのプレイヤーは今まで視界の隅にも映らなかった。


 カケルは今まで全く察知しなかった強者の気配を発している敵の出現に一瞬怯む。


『貴様……誰だ!?』

 彼の問いかけに、謎のプレイヤーはマントを脱いだ。


 現れたのは、鍛え上げられた金髪の美丈夫、


 一目見ただけで強者とわかる圧倒的オーラを放つ、


 世界最強をも狙える男、


 ――英雄候補クーフリンだ。


『――ひっ……』

 カケルは龍王国に入ってすぐに国外追放された為に、龍大陸の真の強者に遭遇したのはこれが初めてだった。

 そして、いきなり、何の前情報も無しに、このイベントの終盤で最強クラスの存在に対峙してしまう。

 カケルも魔大陸では一流の戦士ではあるがために、その実力差を即座に認識し……絶望した。


『う、うわぁ……うわぁああああ!!』

 配下は完全にパニック状態となり、錯乱して無謀にもクーフリンに斬りかかる。

 しかし、クーフリンはその攻撃を最低限の動きで回避し、軽い仕草で手を払う――それだけで、哀れな攻撃者は態勢を崩し、勢いのまま十メートルは吹っ飛んで壁に激突し、そのまま退場した。


 クーフリンはゆっくりと腰の剣を抜き、静かに構えた。

 一連の動作に全く殺気は感じ取れない。


 彼らはそのままの姿勢で睨み合った。

 数十秒が経過した後――


『そちらから来ないなら……こっちから行くぞ』


 クーフリンは呟き、姿が掻き消える。


 そのようにして、超人兵器による……命の刈り取り――蹂躙が始まった。



 クーフリンの英雄になる為のポイント稼ぎにおける試行錯誤の過程で、同一のダンジョンでも内容のランダム性によっては初見攻略と看做されるのでは?とデンは考察した。


 最初は叡智の試練と同様のローグタイプのダンジョンを構想していたが、その前段階の試作として、このバトルロイヤル型のダンジョンのプロトタイプを作成した所、システムと冒険者ギルドの関心を引き、本格的に構築する事になった。


 冒険者に実戦に限りなく近い戦闘経験積ませたい冒険者ギルドにとって、このダンジョンは喉から手が出る程欲しかったモノのようで、既に中立地帯のギルド所有地の地下に、このダンジョンを設置する契約を結んだようだ。


 死刑囚を使ったαテストの結果、デンの考察は当たっていたようで、自由意志を持った多数の人間が参加しているバトロワダンジョンは、ランダム性の閾値を超え、さらに参加した人数と強さに比例して多くの英雄ポイントが稼げる事が判明した。


 クーフリンは、密かに各ステージのフィールドに隠した認識阻害のアイテムを身につけ潜伏し、最終ステージで全ての敵――自分以外のプレイヤーを単独で駆逐して、最後の一人となる――それが俺が与えた試練、このイベントにおけるクーフリンの使命(ミッション)だ。


 一応、彼がこの試練を達成可能かどうか、事前にクロード先輩に意見を聞いた所……


「十分可能だろ」

 あっさり、言った。

 俺は相手にする人数が多すぎないか、と懸念を示したが、

「正直俺でも、アイツとはガチの殺し合いはしたくねぇ」

「えっ?……でも先輩はトーナメントで全勝してたのでは?」

 先輩は顔を顰めた。

「ルールのある競技という枠の中での戦いなら勝てるが、アイツは殺しのプロ、熟練者だ。それも恐ろしく鍛え上げられた一種の怪物だ。本気で手段を選ばずに殺しに来られたら、こっちも全力で迎え打たなければ、訳も分からず劣勢に追い込まれる……魔大陸のひよっこ程度じゃ、束になっても相手にならんよ」


 スクリーンの中のクーフリンは次々にプレイヤーを狩り続けている。


 オチュードは自分が裏切った配下からの攻撃で弱っていた為か、大した抵抗も出来ずに袈裟斬りで真っ二つに裂かれた。

 エミリは何とか手に入れたらしい拳銃を泣け叫びながら撃つも一発も当たらず、首を切られて退場。

 ナナヒは腰が抜けたのか這いずり回っている所を自動小銃で銃殺された。


 三人娘は遠距離からの狙撃で頭を撃ち抜かれる。

 対物理の結界は貼っていたが、エンチャントを付与した弾丸には効果がなかった。


 魔族チームはあらかじめ爆発物をセットした建物に誘い込まれ、投げ込まれた手榴弾によって大爆破に巻き込まれ全滅した。

 如何に強靭な魔族でも未知の攻撃には対処できなかったようだ。


 人間領域の戦士たちは予想外の強敵の出現に狂喜乱舞した。

 もっとも、その実力は子供と大人程の差があり、超人クーフリンの敵ではない。


 ある程度のお膳立てを運営特権で施したとはいえ、あっけないものだ。


 次々にプレイヤー達が退場する中、最後に残ったのは、今まで目立たないように行動していた勇者リツのチームだ。


 彼に雇われていたと思われるアサシンのカイエンは背後からの不意打ちを試みるが、あっさり見切られ、カウンター攻撃によって退場する。


『……そうか』


 次々に配下が退場する中、リツは呆然とした表情で呟く。


『僕たちは……生贄だったのか……』


 リツは全てを悟ったのか、正解に辿り着いたようだ。


 彼はフィールドに残された最後のプレイヤーとして、精一杯の抵抗を試みる。


 しかし、彼の剣技は、常に命のやり取りを通した実戦で研磨されたクーフリンには到底及ばず、リツの胴体は、その剣ごと真っ二つとなった。


 ここにゲームの勝者は決定した。


 ――優勝はクーフリン。


 それは、ゲームを開始する前から定められていた運命だった。


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