13話 魔法属性の話
ミアちゃんとはランチを終え、教室へ戻る途中、私たちは話の花を咲かせていた。その一つに自分は何の魔法属性かというものがあった。
ジェシー様の知識によれば、この国の魔法では属性というものが存在する。言ったら得意な魔法属性だ。基本属性は火・水・木・土・金の五つ。五行占いをベースにしているのだろう。私、占いはそこそこ詳しい。電車の中で朝の占いが流れるとチェックしていたし、webで無料占いなんて溢れているのでよく暇潰しにやっていた。
話を戻そう。五つの属性に風(空間)と闇と光が入る。なので計八属性がある。
それぞれ、じゃんけんの法則同様、相性の良し悪しや強さはある。火は水に弱い(物理)と同じだ。
金だけイメージがつかないと思うので補足すると、剣をイメージをするといい。火に打たれ鉱物から作られた剣は武器になるので、木を切れる。だから、木属性には強いが、形を変えられてしまう火には弱いのだ。
風と闇と光は、特殊属性。ちなみにジェシー様は風だ。そして、ミアちゃんはというと……
「私の属性ですか? 闇です」
光を期待していたが可愛い笑顔で言われたことに言葉を失った。闇属性といえばエグい攻撃魔法とか、禁術とかに使われるものだ。
「闇なんて、ミア様に似合わないわ……あ、気分を悪くされたらごめんなさい」
「いえ……闇属性なんて今は使われない魔法ですもの」
ジェシー様の知識によれば、この国は平和だ。魔法があるファンタジー世界だが、魔物とかいない。魔王も勇者も聖女もいない。魔法があるだけの西洋風世界。この国の昔話にはいるので、太古の昔とかにもしかしたらいたのかもしれないが、今はいない。なので、闇属性の魔法はあまり使い道がないのだ。
「せめて光とかならよかったのですけどね……」
困ったように笑うミアちゃんをぎゅっと抱きしめてよしよししたくなる。
「でも、闇は貴重で特別な属性ですわ。使い方を間違えると諸刃の剣になります。ミア様のように心の綺麗な方が持たれてよかったです。悪いようには使われないでしょうから」
励ましたつもりだった。ミアちゃんが気にしているように感じたからだ。ミアちゃんはブルースカイの瞳を大きく開いてぽろっと大粒の涙を流した。
(えええっ!? なんで泣いてるの!?)
オロオロした。右往左往した。動揺して、なんて声をかけていいか分からず口を金魚みたいにパクパクさせた。
「すみません……」
涙を拭いながら、ミアちゃんは、はにかむ。
「闇なんて……不要な属性と言われてきましたので、ジェシカ様の言葉が身に沁みて……お恥ずかしいですわ」
「そんな……」
もしかしたら、ミアちゃんは闇属性ということで不条理な目に合ってきたのかもしれない。私も黒歴史があるから、その理不尽さがよく分かる。
(どこのどいつだ! ミアちゃんをイジメたやつは! 許すまじ)
私は可愛いミアちゃんの手をとってしっかりと握った。
「大丈夫ですわ。わたくしは、何があってもミア様の味方です。ミア様の側におります」
うっかり告白風になってしまったが、そのくらいの意気込みはあった。だから、よしとしよう。
ミアちゃんは目元を赤くして、はにかむようにまた笑ってくれた。
ミアちゃんと熱い友情を交わした後、私たちは教室へ戻っていった。
◇◇◇
授業を聞きながら、時間は過ぎていって今日の授業は終わった。私は終わった終わったとさっさと帰ろうとした。今日のアフタヌーンティーは何かな? 食べ過ぎるとおデブになるが楽しみだなと浮かれていた。
さっさと帰る準備をして、ごきげんようとクラスメイトに挨拶をして、席を立った時だった。
立ち塞がるイケメンの壁。それに眉を吊り上げた。
「婚約者殿、どこへ行く? 放課後まで自由を許した覚えはないぞ」
忘れていた……生徒会とやらに入れられたのだった。正直、ダルい……
「わたくしはいつでも自由の身ですわ。生徒会のお話を了承してはいません。お話だけなら聞きに行ってもいいですけど」
ツンと澄まして言うと「なら、聞いてもらおうか」と右手を取られた。指と指の間に絡めるように角ばった大きな指が入ってきた。慣れない体温に体を震わせ、身を引こうとしたが、逆に強い力で引かれた。
「……一人で歩けますわ」
「自由な婚約者殿には、鎖が必要だ。捕らえておかないと、またどこかへ行くからな」
「心が自由という意味ですわ。話は聞きます。だから、離して」
「嫌だね。せっかく君に触れているんだ。好機を逃すほど愚かじゃない」
(ぐぬぬぬ。いつかその口からギャフンと言わせてやる! ゲフンでもいい! ぐうの音も出なくさせたい!)
新たな目標を胸に私はイケメンと共に教室を出た。
廊下ではやはり黄色い声のBGMが鳴り出している。イケメンは、それらを意に介さず堂々と手を繋いで歩いていた。私はいつもながら慣れない。ひぇっとなる。
(わざと見せつけるように歩いて……私、そのうち刺されるかも……)
イケメンへの熱狂ぶりからして、「キィィ! わたくしのアルフレッド様とイチャついて! ぶっ殺す」とかありそうだ。うわー。やめてほしい。乙女なゲームがZ指定のホラーサバイバルになる。
あぁ、でも。乙女ゲームならば、そういうルートもありなのかな? ヒロインはヒーローと結ばれ、当て馬役の悪役令嬢は同級生に刺されて死亡。私から見ると最悪な結末だが、乙女ゲーム的には”ざまぁ”となるだけだ。しんどい。
(やっぱり、スマホがほしいな……イケメンの名前もジェシー様の名前も分かったから、この世界の乙女ゲームも調べられるし、攻略サイトを見て破滅フラグを回避できるのに……)
しかし、現実は無情なもので、手元にいつも側にいた愛しい彼はいないのだ。一度無くしてしまい、泣いて、二度と離さないと誓った。夢も慰めも彼に教えもらった。思い出もたっぷり詰まっている。ブラウザーの履歴という名の思い出がたっぷりと……
だが、いつまでも未練がましく彼を思っていてはいけない。彼の思い出を胸に前を向かないと。できることは自分でしよう。
私は護身術を覚えることを決意した。
◇◇◇
生徒会室と書かれた部屋の前に立った。イケメンはドアノブに触れずにドア開く。
開いたドアの先には三人の男子生徒か先にいた。一人はエドワード様だ。他の二人は知らない。知らない一人の男子生徒が呆れ返った目で見て、話しかけてきた。
「うわっと、びっくりした……おい、アル。せめてノックくらいしろよな」
そう言った男子生徒は、座っていた机からぴょんっと下りて近づいてくる。
髪色は鮮やかなオレンジ色。気が強そうな金色の瞳はやんちゃボーイな感じがした。ジェシー様とそう背丈が変わらない小柄さである。あ、ちなみにジェシー様は165.4cmだ。
「ははっ。この子がお前の婚約者様か?」
オレンジボーイが挑発するような目をイケメンに向けると、イケメンは繋がれた手を外し、ジェシー様の腰に手を回した。
「そうだ、セナ。手……出すなよ?」
「出さねぇよ。お前と喧嘩したら、勝てないし、殺される。俺は長生きしたいんだよ」
不敵な笑みをお互いに交わしている。どうやら知れた仲らしい。そんな分析をして、ボーッとしていると、オレンジボーイがこっちを向いた。
「俺はセナ・クリュース。生徒会長をしてる。これから宜しくな、ジェシカ」
その言葉に驚いた。生徒会長なら一歳年上だ。まさかの年上設定。この乙女ゲームは、びっくり要素が多すぎだ。
そして、名前を呼ぶ気安さ。ジェシー様の知り合いだろうか? 知識チートで脳内検索をするが、彼に関する情報はなかった。
これは、あれか? 友達の友達は、みな友達というやつだろうか?




