第8話:裏路地にある一軒の商店に行きました。
――俺と師匠は中天に差し掛かった頃に沿岸都市アクアロンデへ到着した。
床はブラウンとホワイトの煉瓦でヘリンボーン模様に敷き詰められ、少し光沢のある白煉瓦積みで建てられた美しい町並みは、元の世界のクロアチアにあるスプリトを彷彿とさせる。
「師匠、まずどうしましょうか?」
「そうじゃのぉ、まずは顔馴染みの商店で果実など売る物を売って、それからタラテリを預けて買い物に行くか、先に宿を決めてしまうかなのじゃ」
「先に宿を決めて置いた方がよいんじゃないですか? 荷物を持ちながら探すのは面倒なのではと思います」
「そうするのじゃ! でも宿を探す前にお茶を予定に入れるのじゃ♪」
「少し疲れたので休憩ができるのは有り難いです」
街中ではタラクサカム・テリコミスから降りて、足を師匠の顔馴染みの商店に向け歩き出す。
街は午後の活気に包まれつつも、師匠の言っていたセイレーンなのだろうか?
美しい歌声が街に優しく響いていて、穏やかな陽気と共に気持ち良い。
よくすれ違うエルフは髪の色が青系で海のエルフだと思われ、男性エルフも女性エルフも服装は紺や青色を基調に、元いた世界の海軍服のセーラー服のような上着に、七分丈パンツが海っぽさをより演出している。
時折違う種族ともすれ違いワクワクした気持ちだ。
ついつい目をキョロキョロさせて見てしまい田舎者っぽいかもしれない……
「ここなのじゃ、ここなのじゃ」
そうこうしてると、少し中心から離れ裏路地にある一軒の扉の前。
この建物が目的地の商店のようだ。
タラクサカム・テリコミスは師匠が躾けたので逃げる事もなく大人しいが、裏路地は狭く道を塞いでしまうので少し手前の広い部分に居るように命じ、フワフワに包まれ中からゴソゴソと荷物を降ろす。
結構な量があるので運ぶ場所を確認し、商店に運び入れたが三往復してしまった。
「やぁレティ。久しぶりじゃないの、元気そうで何よりよ」
「シャルも元気そうなのじゃ」
店主と思われる人物とはかなり仲が良いようだ
商店と聞いたが品物が並んでいる様子はないので買い取り専門なのだろうか?
「今回はこれを買い取ればよいのね、それにそちらの人は誰よ?」
「こやつは最近わっちの弟子にしたのじゃ」
「華房将生です。宜しくお願いします」
「また珍しい響きの名前ね、訳ありっぽい匂いがプンプンするじゃないの」
「シャルには話して大丈夫かの、こやつは空虚な裂け目『ギンヌンガガプ』を通って飛ばされて来たようなのじゃ」
「それは、違う理の世界から来たって事よね?」
「まぁそうなるのじゃ……」
「これ以上の詮索はよしましょ、何よりレティが楽しそうだしね」
「改めまして、わたしはシャルフェル。レティや仲のよい友人からはシャルって呼ばれているわ」
「今後とも宜しくお願いします。」
シャルと呼ばれる人物は、ピンクパープルの髪の間から猫耳が出ていて猫耳種のフェリセラだった。
かなり小柄で言葉遣いは男っぽいが、師匠程ではないが胸もあるようで可愛らしい。
「それじゃ買い取りしちゃうわね、世界樹の側に実り、ウルズの泉の恩恵も受けた『白金の林檎』
1つ銀貨10枚で2個なので銀貨20枚。
ウルズの泉の水で育った『聖女のワサビ』
1本銀貨1枚と銅貨20枚で10本なので銀貨12枚。
治癒ポーティオが、金貨1枚x10で金貨10枚
媚薬ポーティオが、銀貨1枚x20で銀貨20枚
解毒ポーティオが、銅貨10枚x20で銀貨2枚
下位体力回復ポーティオが、銅貨30枚x100で銀貨30枚
上位体力回復ポーティオが、銀貨3枚x10で銀貨30枚
しめて合計すると金貨11枚と銀貨14枚になったけど大丈夫かしら?」
「問題ないのじゃ、それでお願いするのじゃ」
「了解。そう言えば娘がレティに会いたがってたのよ、今夜予定がないならウチに泊っていきなさいよ」
「まだ宿は見つけておらんのじゃが……」
師匠が俺に視線を送ってきた。
「特に何もないですしいいんじゃないですか」
「弟子もこう言ってるから問題ないのじゃ!」
「よかったわ、じゃあ用事が済んだらまた来てちょうだい」
「美味しい物期待してるのじゃ♪」
ここがどういった商店かよく分からないままではあるが、無事に品物を売る事はできた。
金貨1枚=銀貨100枚=銅貨10,000枚
金貨1枚=30万円
銀貨1枚=3000円
銅貨1枚=30円