第6話:モフモフな騎乗特訓をしました。
――夜が明け、朝食を摂りながらレティシア師匠と買い出しについて話していた。
沿岸都市アクアロンデまでの移動手段で魔法によるものもあるにはあるが、今回はそれを使う事はできないと言う話になった。
「わっちだけなら問題ないのじゃがのぉ、お主は”一度目的地に行った事がある”と言う条件を満たせておらぬから一緒に飛べないのじゃ」
たしかに俺が満たせていない……
となると、俺としては魔法以外で真っ先に馬車が浮かぶのだが
「それでは馬とかに乗って行くのでしょうか?」
「お主は何を言っておるのじゃ! 聖獣に乗るなど何が起こるかわかったものじゃないのじゃ」
詳しく聞くと、このアールヴヘイムでは馬と猪が聖獣とされている為、食べるなどもってのほか、とても大切に扱わなくてはならないのだそうだ。
「馬には乗れないがもっと可愛いのがこの麓付近に生息してるのじゃ、あのモッフモッフでフサフサがもう可愛くて堪らないのじゃ♪」
そこで、今回足としてお世話になるのは、カピバラを倍以上に大きくして、タンポポのようにフワフワのモフモフな毛に覆われた生き物!
その名は”タラクサカム・テリコミス”だ。
成獣で体長は230センチメートル、体重は520kgから570kg程になるらしく、俺の知ってるカピバラは水草の繁茂した湿地帯に棲んでいるイメージだが、タラクサカム・テリコミス(タンポポのテリコミス属)は森林などに棲み、果実や木の葉を食べているそうだ。
しかしながら、すんなり問題が解決した訳ではなかった。
「タラクサカム・テリコミスは名前が長いからタラテリと呼ぶのじゃ、タラテリは大きくて荷車を引かせるのが難しいからそれぞれに乗るのじゃ」
「師匠、俺、動物に乗った事ないです……」
「乗れるまで特訓なのじゃ、魔法の特訓もなのじゃ、それ、まずはタラテリをゲットしに行くのじゃ!」
こうして樹の麓の森でタラテリを捕まえ、俺は魔法の特訓の他にタラテリの騎乗特訓も追加されたのだった。
◇◆◇◆
――タラクサカム・テリコミスの騎乗には最初苦戦していたが、異世界転移補正か元々の才能か三日程でどうにか乗りこなせるようになった。
「タラテリのフワフワのモフモフ気持ちいいですね」
最初に師匠に聞いていた通りタンポポの綿帽子のような外見だった。
「あんなに振り落とされてたのに上手くなったのじゃ、これで”沿岸都市アクアロンデ”に行けるのじゃ」
「キュルルルゥゥゥ」
師匠もモフモフに癒されながら少し褒めてもらえた。
タラクサカム・テリコミスも喉を鳴らして師匠に同意している。
「このモフモフに触って居られるなら落されませんよ! そう言えば師匠、”沿岸都市アクアロンデ”までってどのくらい離れているのですか?」
「う~ん、人の脚で半日ぐらい(?)海に向かって歩いたところにあるのじゃ」
俺の知ってる一般的な人間の徒歩が時速5キロぐらいだから、エルフの徒歩は少し早いとして時速7キロぐらい想定だとここから84キロ程度離れた所にあるのかな?
「まぁタラテリならもっと早く着けるはずだから安心するのじゃ」
こうしてモフモフな特訓は無事に終えるに至ったのだった。




