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第19話:セラティアと出会いました。

――ミズドガルド行きの船の中


「あれはきっとお伽噺に出てきたヴァルキューレだ……」

「”死体を選ぶ者”ってアレか? それはお伽噺だし迷信だろう……」

「だが光焔槍に白鳥の羽衣を纏った戦場で生きる者と死ぬ者を定める女性って……正にそうじゃないかよ」


 船底貨物室に居た男達があの惨状で見た天使について話していた。

俺はてっきり天使だと思ってしまったが、この世界ではヴァルキューレと呼ばれお伽噺に出てくるようだ。

 詳しく聞きたいところではあるが、俺はまだ意識が朦朧として体が怠い。


 俺はむこうの世界での苦しい経験とのデジャブを感じつつ、ヴァルキューレの襲来で師匠やリリーナ、シャルさんや子供達とはぐれたまま船に乗せられてしまった。


 横では埃まみれになった薄水色のクロークのフードを深くかぶり、隙間から雑に染められムラだらけの髪と尖った耳が時折見える少女が微動だにせず座っている。

怪我はしていないようだが、あの惨状でショックを受けているのだろう……少し震えているように見える。


 他には光焔槍と言うのか、槍に突き刺されながらも生き延びたが女性がいる。

俺は見ていないのだが、それは凄い血だらけで運び込まれた後ここに寝かされ、しばらくすると傷が見る見るうちに塞がっていったそうだ。

傷は治っても乗船してから未だ目を覚ましていないので、どう言った女性なのかは解っていない。


 船底は空気が重く押し潰されそうだ。

窓の無いここでは時間の流れが遅く感じられる……


◇◆◇◆


――船に揺られ幾日かが過ぎた。


 どうにか船は港に着いたようだ。

同船していた何人かがミズドガルドは此岸の地とも呼ばれているとか、モーベ砂漠を越えて地のエルフが住むレルギオンと言う都市を目指すかとか、聞いたことのない地名が耳に入ってきた。


 前に師匠からミズドガルドには地のエルフ、森のエルフ、風のエルフが居る。

と言う事は聞いた事がある。

たしか地は上位エルフで、森は人間嫌い、風は……忘れてしまったな


 そんな事を考えていると、横で微動だにしなかった薄水色のクロークが動いた。

身長は俺よりは低いが師匠とは同じぐらいかな?

ひと言声を掛けたいが良い言葉が思い浮かばない……


「あなたからは色々な光が見えるわ、精霊に好かれているのね」


 俺が尻込みしていたら逆に声を掛けられてしまった。

アクアマリンのような青色の瞳でジッと俺を覗き込んでくる。


「そっそうかな……?」

「ウチはセラティアよ、

あなたずっとウチの隣に居たのに一言も声掛けてこなかったわね」

「俺は華房将生(はなぶさまさき)だ」

「ふ~ん……」


 これが俺とセラティアの出会いだった。

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